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コロナウイルス連作短編

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#短編小説

コロナウイルス連作短編その219「誰なんだよ」

「ご飯できたよ!」  王木美鈴がそう言ってから、娘の王木めぐが自身の部屋から出てきたのは…

コロナウイルス連作短編その218「素朴な疑問」

「“黒人”って言葉を使ってるとき、そいつ自分のことを“黄人”とか言ってないでしょ。日本人…

コロナウイルス連作短編その215「Uatași ua Cristian desu」

 そうして梅時クリスがボールをシュートしようとする瞬間,やはり現れるのは松崎セイドゥだっ…

コロナウイルス連作短編その213「きみはひとり」

改札で きみは彼の右手を握る その指は意外なまでにほそいんだけども 力はとにかくえげつなく…

コロナウイルス連作短編その214「彼女は男が好きだから」

 それから三島新後は母である三島安乃から新しくできた恋人を紹介されるのだが、それが男性で…

コロナウイルス連作短編その212「狐の嫁入り」

 晴れたのだが,雨は未だに降り続けている.  狐の嫁入りだな,政銅一木はこう思う.今年,8…

コロナウイルス連作短編その211「Solarisの由来」

 舞花あさぎはLINEで友人の芳山笹と話している。外からは豪雨の音が聞こえてくる、鼓膜を無数の針で突き刺され続けるような心地だ。少し高揚を覚える。  “昨日Bumbleで話してた男に”  笹がそう言う。Bumbleとは笹が登録しているマッチングアプリのことだ。あさぎも笹に薦められ、実は登録している。  “XGのCOCONAに似てるって言われたわ。どうよ?”  そう尋ねられるが、その“XGのCOCONA”とやらを彼女は知らない。最近の音楽には疎いのだ。熱心に追っているのは映画く

コロナウイルス連作短編その210「明日もまた生きていく」

 真南茶織は自宅のトイレに籠り、ただ壁を見つめている。  数年この部屋に住んでいるが、こ…

コロナウイルス連作短編その208「無償の愛」

 植木口津は居酒屋で会ったばかりの男に自分の考えを話し続けていた. 「僕の恋人が選挙行け…

コロナウイルス連作短編その207「桃色、黒色、黄色」

「今日もまっピンクの服着てんな!」  待ち合わせ場所にやってきた川田神牙公のド派手に過ぎ…

コロナウイルス連作短編その206「寛容 読み方:かんよう」

 犬束尾高は息子の竜興,そして彼の同性の恋人である青井幹生と出前の寿司を食している.尾高…

コロナウイルス連作短編その204「日本人離れしてる」

 箱柳彩果は駅で友人を待っていた.地上階の改札,その傍らに立ちながらSpotifyで音楽を聴い…

コロナウイルス連作短編その203「玉出紫朗は山崎一子という少女が好きだった」

 であるからしてあるときに、廊下ですれちがった男子生徒たちが「4組の長髪デブス、キモいよ…

コロナウイルス連作短編その201「よしよし、いい子いい子」

 映画サークルの飲み会の席,見木才田の視線は自然と水戸部彌生の方へと向いてしまう.長い黒髪が揺れるたび露になるのは,角張った輪郭だ.磐石なエラ呼吸をするために培われたとしか思えない逞しさがそこには宿っていると,才田には思える.そして髪先が愛撫を行うがごとく,繰り返し触れている肩もまた強靭なものだ.服の下に80年代風の肩パッドでも入れているのではないか?と妄想してしまうほどだ.  彌生を見掛けるたびにその肉体の男らしさに目が行って仕様がない.  飲みの帰り,友人の高昂と駅まで歩