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コロナウイルス連作短編

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2021年12月の記事一覧

コロナウイルス連作短編その145「あなたをかぎとる」

 とはいえ、茂刈唐はグエン・フォン・デルモンテと家にかえる。雪がちらつく頃、ニューヨーク…

コロナウイルス連作短編その144「本当に優しい子」

 しかし午後8時、宵川真昼が家に帰ってくる。「ただいま」と言うと、くぐもった返事がリビン…

コロナウイルス連作短編その143「名前はひらがなで」

 この後、大学の授業が終わり、覚田英冴は家へと帰る。最寄り駅に着いたとき、しかし彼は思わ…

コロナウイルス連作短編その142「メリークリスマス」

 やはりぼくは朝10時半に起きる。母親が作ってくれたおにぎりを食べながら、Youtubeでウルト…

コロナウイルス連作短編その141「ドードー鳥がぜつめつしてから」

 そうして小学校の帰りみち、間中理巧はガードレールの横にしゃがんでいる女性をみかける。ペ…

コロナウイルス連作短編その140「宇宙みたいだなあ」

 なおも神坂沖はテーブルの上に置いてあるノートを見つめていると、家に娘である宮下カナリの…

コロナウイルス連作短編その139「愛すべき者を持たない」

明日を信じない/いやそれは 期待することと同じか (GLAY『HEAVY GAUGE』)  それから堤多嘉良は茹でたホウレン草とニンジン、えのきだけを、薄切り豚肉で巻いていく。しょうが焼き用の肉だ。ボリュームがありすぎるきらいがあるが、娘の三千子はこれが好きだった。手前からしっかり前に巻く。自身の手の皮膚が肉の冷たい粘りに侵されていくのを感じる。別にどうでもいい。フライパンにサラダ油を入れ熱した後、肉を置いていく。巻終わりの部分を置くのが重要だ。少し焼き固まってきたなら、菜

コロナウイルス連作短編その138「タイトルが思いつかない」

 そして田仲赤来は最近、アゴヒゲを生やし始めた。以前からその渋さには憧れがあったのだが、…

コロナウイルス連作短編その137「私たちの絶滅」

 だが櫻井雄洋は起床した瞬間、脳髄を万力で圧縮されるような苦痛を抱く。その理由はもちろん…

コロナウイルス連作短編その136「俺も人権侵したいわあ」

 その一方で濃沼直井は公民の授業で人権について学ぶ。日本国憲法では人権はだれもが生まれな…

コロナウイルス連作短編その135「資本主義は生きていく意思を失う」

 それでいて菅見萌は本屋で詩集を立ち読みする。パラパラと中身を確認する訳ではなく、内容全…