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【 Great Journey in South America 】(地獄と快感編)ボリビア6000m級の山は地獄だった

山行3日目

深夜0時起床。
の予定がガイド寝坊して0時半ごろ起床。

寒さと高度の高さに苦しめられ、1時間薄目で寝た。
朝飯と言えるのか分からないが、
栄養補給のために甘いパンとコーヒーを無理やりかきこんで、エネルギーにする。

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そして、深夜1時、真っ暗の中山行開始。
天候は猛吹雪で、大荒れ。
最悪のコンディションだった。

予定では5時間で頂上に着く。

ガイド、友人、私の順番でロープを繋ぐ。

暗闇・吹雪・極寒の中、標高5000m超の中をひたすら登る。
想像できるだろうか。こんな条件下の中で歩くことはまずない。
人間は、このような時に限ってマイナスなことを考えてしまう。

標高の高さで息は整わず、身体は鉛の様に重く、また夜中なので頭や身体はまだ完全に起きていない。
もちろん吹雪、極寒なので、体力は奪われるだけだ。

そして、何より暗闇という環境が私たちの精神を破壊する。
人間が生きる上でどれだけ環境というものが大事かを自然の中で思い知る。
本当に吹雪と暗闇という環境は死の世界、まさに地獄なのだ。

しかも、昨日人がここで死んでいる。
絶対登頂できるなんていう保証はもちろんない。
なんなら死ぬ可能性だってあるのだ。

自然には逆らえない、自然は操れない、自然の大きさを全身で感じた瞬間だった。

まさにこの写真の時がその瞬間だ。標高5600m時点の私。

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30分に一回ペースで休憩を取りながら、ひたすら頂上を目指す。
休憩中もゆっくりしていられない。
-10度以下、吹雪の中立っていたくない。温かい飲み物も持っておらず、水を飲んでも身体は冷える一方だ。

後ろを振り返ると、何組か続いていた。
この中で何組が登頂できるのか…

だんだん周りは明るくなってきた。
午前5時ごろを回り、そろそろ日が昇っても良い時間だ。
しかし、天気は回復せず依然として吹雪だ。

雪と風が痛い。
バラクラバという目出し帽をつけているが、ウールなので、息が水蒸気となり、凍る。
そして、空気中の酸素も薄いので、バラクラバの上からだとうまく呼吸のペースが整わない。
途中、何度もバラクラバを噛みちぎって捨ててやろうかと思った。

天気は全く良くならず、精神的にも疲労が溜まる。

雪が地面に付き過ぎて、崩れる心配があるので、道を何度も変える。

ガイドは何も言わずひたすら進んでいく。

「クソ、天気さえ良ければ全然楽なのに…」
本当にそう思った。
実際、天気が良ければ地獄ではなかったであろう。
楽しく登っていたであろう。

スタートから5時間が経過した。

感覚的にはそろそろだ。
尾根に入った。

私は冬山の経験があるので、なんとなく今、この辺だなとわかった。

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おねだ。右側が斜面。

尾根に入れば、頂上はもうすぐだ。
一歩ずつ、確実に登る。

ここで私はGo Proを取り出し、なんとか撮影をした。まさに極限の中。
エクストリーム登山をしている。

そして、スタートから約5時間半。

ついに、標高6088mワイナポトシ山登頂!

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本当に感動した。

天気は最悪で何にも景色は見えなかったけれど、そんなのどうでもよかった。
本当にどうでもよかった。

ここまで来れたことへの感動が大きかった。

友人と握手を交わし「ありがとう!」

この瞬間は本当に泣けた。

私たちは正直言って、景色が見たいがために登っているとかそういう理由ではない。もちろん見れることに越したことはないけれど。。。

一番大切にしているのは、
限界突破した究極の挑戦をすること!

極限の中で感動は生まれる。人は成長する。
だから、むしろ天気悪くてありがとうという感じだった。
ど変態だ。そう。ど変態のやることなのだ。

頂上はもう寒すぎるので、写真撮影をして、すぐに下山。

この時、私たちは下山が1番の地獄になるとは思ってなかった。

帰りは私が先頭。

疲労困憊の中、判断能力を研ぎ澄ませて道を選んでいく。
足をしっかりとりながら下山していく。

気付けば、登りで会った登山隊は誰もいない。
1組だけ死にそうになりながら登っている隊とすれ違ったが、それ以外は1組も見ない。

多分、皆途中で下山したのであろう。
無理もない。この環境は最悪のコンディションだ。

下山は2時間ぐらいだろうと思っていた。

しかし、昨夜からの雪で地面はふっかふかになっていて、足がズボズボはまる。

そして、思っていた以上に足が思うように扱えない。

多分、登りはアドレナリンで登頂でき、そこまで身体に負荷は感じなかったけれど、実際はかなりのダメージがきていた。
エネルギー不足も著しかった。

途中から最後までずっと足がズボズボはまり、抜きの繰り返しで、体力が奪われ、足もフラッフラだった。
横目にはクレパス(雪渓の深い割れ目。落ちれば死ぬ可能性もある)がたくさんあった。

友人はもう立つのも限界という感じだった。

気づけば約3時間歩いていた。
午前9時。
ついにハイキャンプに戻ってきた。

この時、立つのもやっとで、口を開いて話すことなんてできなかった。
生まれて初めて、疲れすぎて言葉が出なかった。話す行為すらきつかった。

ハイキャンプには、ホワン君がいた。
ホワン君はやはり、途中で引き返したそうだ。

着いたはいいが、またすぐにベースキャンプまで戻らなければいけない。

最後の力を絞って荷造りをし、スープとパスタを胃に入れた。
(不味すぎて飯に殺意が湧いた。味噌汁を人生で一番欲した。)

午前11時。
ハイキャンプを出発し、ベースキャンプに向かった。

この時はもうゾーンに入っていた。
ただ、足を動かすという作業だった。

約、1時間でベースキャンプに下山。

早く、街に帰って美味い飯が食いたい。
本音を言えば、日本の自分の家に帰って温泉入って、腹一杯日本の飯を食いたかった…

ベースキャンプには、この日山に入ってきた登山隊がいくつかいた。
みんな頑張ってくれ。


午後12時半ごろ。
車でラパス市内に向けて出発。
ねた。厳密にいうと、セダンの後部座席の真ん中に座らされて狭すぎてほとんど眠れなかった。

市内につき、エージェント事務所へ。
事務所に預けていた荷物を回収し、装備を返却。
兄ちゃん、登頂したぞ!Tシャツくれよ!

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約束通り用意していてくれた。

ガイドが最後に、お前らはタフだったよ!
と言ってきた。
当たり前だ。正直これぐらいの究極を用意してくれないと俺たちは満足しないぜ。
ちょっとやそっとではバタやしないぞ。

だから、本当に大満足な山だった。

今回の挑戦は細胞レベルで自分が強くなったと思う。

「最高なネタができたな!」

また、20kgの荷物を背負いラパスの街をふらふらになりながら歩きながら2人でそう話した。

どれだけ辛くても、きつくても、それを楽しめる俺たちは最高だと思う。

辛い、きついことの中には学びがたくさんある。
辛い時、きつい時こそ切り抜けようと人間は踏ん張る。
そのエナジーが一つ壁を越えさせる。
辛さを乗り越えた先にある新たな世界に踏み入れた時の快感は最高にアツイ。
そうやって、人間は経験値を上げていって、人間的なレベルを上げていくのであろう。

改めて、この挑戦を一緒にやってくれた友達に感謝。

2人で登頂できたこと、その過程、感動を共有できて最高の経験になった。

これで、ワイナポトシシリーズ完。

是非、みんなも機会があれば山に登ってほしい。山は素晴らしいぞ!

次回からは、パタゴニアシリーズに入るかな!また山です!キャンプ生活!

adiós!

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