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親子でボードゲームをつくってみた

 自分が小学生のころ、よくゲームを作って遊んでいた。戦国国盗りゲームとか、スコットランドヤードのようなアナログ鬼ごっこなどの類で、ルールを作ること、ボードやカードでアイテムを作ることなど手作りで楽しんでいた。当時はパソコンなどまだ普及しておらず、その後、小学校高学年の頃、夏休みに大学の理工学部でBASIC講座のようなものではじめて当時のPC-9801に触れ、それまでアナログで作っていたゲームを、プログラムを書いてコンピュータで作ることに夢中になっていたことを思い出す。「マイコンBASICマガジン」の コードをコピーしては自分なりに改造してプログラムを動かすことにワクワクしていた時代だ。

 それから30年ほどの時が経ち、いまやそんな自分にも子供が生まれ、その長男も小学生になった。いよいよ2年生が始まる、というタイミングで新型コロナ感染防止の緊急事態宣言、そしてステイホームが始まった。自分はプログラミングには関心を持っていたけれど、結局進んだ道はとてもアナログな世界で、今でもあの自分が小学生の頃ワクワクしていた探求心、モノづくりの心をたまに思い出す。自宅で長男と過ごす時間が増え、ふと「ゲームを作ろう」と思いつき、長男とのちょっとしたプロジェクトが始まった。

 ちょうど今年2020年から「プログラミング学習」が小学校でも必修化となったこともあり、街中でプログラミングを教える教室のような場が増えた。何回か長男にも体験講座を受けさせたが、どうも父である私自身が直接教えたい、という想いが強く、結局教室に通わせるタイミングを逸してしまった。ただ、教材とも言えるものは色々買った。「レゴWeDo2,0」や「ロボットタートルズ」などだ。あとは、WEB上での秀逸なプログラミング学習のコンテンツ(たとえば「Hour of Code」など)も色々と試してみた。ただ、どうしても自分が小学生の頃、必死に友達たちと国盗り合戦のルールを話していた瞬間、夢中でBASICのコードを書いていた瞬間のワクワク感を伝えることができなかった。やはり、プログラミング学習の本質は、「与えられることではなく、自分で作る」ことだと、どこかで感じていたのだ。

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 そこで、せっかくボードゲームを作るのであれば、「プログラミング学習」の基礎が身につくアイデアが良いだろう、ということで何冊か小学生用のプログラミング入門的な書籍や、scratchなどを触っている中で、「順次」、「反復」、「分岐」という思考プロセスを盛り込もうという話になり、「カードで指示を出してコマを動かすドロケーのようなゲーム」というアイデアに至った。思想としては、「ロボットタートルズ」に似たアイデアだが、そこにゲーム性を盛り込むというアレンジが加わった形だ。さっそく、工作用の厚紙を買ってきて、長男との一大プロジェクトが始まった。

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 ハニカム構造のマスを並べて、3種類の「移動カード」でキャラクターを移動させる、途中ワナをしかけたり、乗り物に乗ったりして、警官が泥棒を追いかける、といった基本的なアイデアは、わりとすぐ形になった。イラストの出来栄えはさておき、「自分でゲームを作る」という原体験に長男はいたく興奮して、いろいろなアイデアが出てきた。「ブロックで邪魔するのはどうか」、「もっと早く逃げる飛び道具みたいなものはできないか」「繰り返し、みたいなアイデアはどうか」などなどである。

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 何回か遊んではカードを作る、ということを繰り返しているうちに、「宝箱」という概念が現れ、結果的にはドロケーではなく、「たくさんの宝箱をいかに早く集めるか」というゲームの形になり、宝箱にワナが隠れている、といったトラップがあったほうが楽しい、と気づき、さらには世界観として「探検隊」というイメージが出来上がっていった。

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 「アイデアを形にする楽しさ」を実感した我々は、この体験自体を製品として世の中に送り出せないか、ということを考え始めた。まずは試作を作ってみよう、ということで、色々なボードゲーム用ツールの印刷業者さんに問い合わせをはじめ、気づいたら試作初号版の色校正がやってきた。

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 「印刷」という工程が長男にとっては目新しく、ポケモンカードを必死に集めて友達と交換していた彼にとって、「カード」がこのような形で作られるということにも驚いたようだ。何より、自分が考えたカードのアイデアを「紙」の形で触れることに感動していた。そして、初号版が届いた。

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 その名も「グラミン探検隊」。プロ"グラミン"グ的思考を学べるボードゲーム、に由来するこのネーミングも、長男と考えたアイデア。(NHKではじまった「テキシコー」の影響もある気がするが、それはさておき。) 考えた「宝箱」や「ワナ」のチップ類、移動カード、ボード、色々なアイデアが「モノ」になって届き、さっそくお試しプレーをしてみた。

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 なかなか面白い上、やりながらまた新しいアイデアが出る。「これだとワナが多すぎる」、「宝箱が少ないとすぐ終わってしまう」、「同じマスに来たときに「強奪」イベントみたいのがあったらもっと面白いんじゃないか」、などなどだ。色々と話しながら、ルールを練り直して、内容物も考え、いよいよ「製品にしよう!」というタイミングで、ふと思った。私自身が小学生のころゲーム作りに熱狂した経験、長男と共有したこの貴重なステイホームでの時間、これを多くの親子の方々にも体験してほしい。だったら、このゲーム作りにもっと多くの方々に参加してもらう仕組みはできないかだろうか、と。

 そこで、この父子の体験をシェアし、もっと楽しい、意外なアイデアを集めるべく、その第一弾として「グラミン探検隊 ベーシック版」をリリースすることにした。


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