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春の雨夜

眠りに落ちる時に雨の音が聞こえるのが好きだ。
それも、ザーザーではなく、シトシトと、雨音だけでなく、雨粒が屋根や、バケツ・ペットボトルと言ったプラスチック類にあたったり、時には雨がパタパタと屋根からまとまってすべり落ちる音が良い。

夜に降る雨はなんだか艶めかしい。源氏物語にある「雨夜の品定め」の場面、若き光源氏や頭中将たちが関わりを持った女性についてあれやこれや語るシーンだが、この場面に雨が降る夜を選んだ紫式部は、やはり艶めかしさを感じていたのだろうか。

昨日はなんだかとても疲れてしまった。
日中にいくつかのあまり気分の良くないことが起き、夜は夜でトラブルが起きた。
夕食後の自由時間にトラブル対応に時間を割き、noteを書き、本放送から1時間遅れて大河ドラマを観て、毎日のルーティンとしているフランス語の音読を済ませ、スキンケアをしながら最近気になっているフレグランスブランドの動画を含む情報を閲覧して床につく頃には、心の中でずっと疲れたを繰り返していた。


就寝前に雨が降り出していたことは気づいていたが、灯りを消して、家の中から生活音が消えた頃、雨の音がはっきりと耳の中に入ってきた。
その音を心地よく聴きながら、例によって私は私と対話してみる。

なぜ疲れたの?

いくつかのことが重なり、それらは自分のせいではないのに、思っていることを心の中に閉まっておかねばならなかったんだ。

そっか。人間関係を、生活を維持するために、言いたいことを心の中に収めたんだね、偉かったよ、頑張ったね私。

私からはそんなねぎらいの言葉が聞こえた。

植物には水が必要だが、消毒されたきれいな水道水よりも自然の雨水の方が良いそうだ。植物に必要な、あるいは生態系に必要な成分が含まれているのだろう。そういえば雨にあたった時、水道水にはない柔らかさを感じる。涙を含む、人が分泌する成分に近いような気がする。艶めかしさを感じるのはそのせいかもしれない。
一定ではない雨音のリズムが、心を潤してくれる。
しっかりと窓は閉まっているのに、雨の匂いがするような気がする。

疲れたね。早く寝なさい。

春の雨夜はそう言って、優しく温かい手で私の瞼を閉じた。


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