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代用プリンセス 2「代用白雪姫 2」(連載小説)


漏れていた声が静まると、ジャケットとネクタイを脱いだ、ワイシャツ姿の悠斗が寝室から出てきた。

呼びかける声に愛美が振り返ると、悠斗はすでに優しい顔をしていた。
ごめんなマナミ、お腹空いたろう。ご飯にしようか。すぐ作るから、もうちょっと待っててくれな。

「うん、大丈夫だよ」

パパに負けないくらいの笑顔でそう返した愛美は、お手伝いをしようとソファから立ち上がった。

一緒に夕食をとり風呂に入ったあと、肩甲骨あたりまで伸びた愛美の黒い髪を、悠斗はドライヤーで丁寧に乾かした。

以前に、何度か愛美は、髪を短くしたい。と訴えてみたことがあった。裕実からの攻撃と、パパの労力を考えてそう言った。

しかし悠斗は、女の子は長い方がいいじゃないか。それに、今切っちゃったら、大きくなってから長くしたいって思ったときに大変だろう。と愛美をなだめた。

寝るときも、愛美はパパと一緒だった。そして、今日みたいに裕実が泣いて暴れた日の夜は必ず、部屋の電気を消す前に悠斗は「白雪姫」の絵本を愛美に読み聞かせた。それを読み終えると、悠斗は物語の続きを話すように愛美に語りかけた。

マナミはね、ママにとって白雪姫なんだ。マナミのことが可愛くて可愛くてしょうがないんだよ。でもね、マナミがママよりあんまり可愛いもんだから、悔しくなっちゃったんだろうね。だから嫌ってなんかいない。ママはマナミのことが大好きなんだよ。

何度も白雪姫を読み、何度もその話を聞いていた愛美は、それを全て信じていたわけではないにしても、いくらは気持ちは楽になっていた。

だから私はママをあんなにかわいそうだと思ってたんだ。と、妙に納得もできていた。


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