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【読書】花村萬月「ハイドロサルファイト・コンク」

 こちらで備忘録を兼ねて、読んだ本について記しておこうとおもいます。
 今回は花村萬月のエッセイ小説「ハイドロサルファイト・コンク」です。

 本作のタイトル、ハイドロサルファイト・コンクとは、著者が若かりしころに勤めていた西陣の反物工場で使われていた漂白剤の名称です。

 こちらは骨髄異形成症候群を発症した著者の闘病を描いた作品です。
 骨髄移植を受け、退院するもその後に、間質性肺炎を患い、膀胱炎前立腺炎尿道炎の三つを併発。さらにはステロイドの副作用で背骨を圧迫骨折してしまうという壮絶な闘病を経て描かれたエッセイで、どれか一個でもキツイ症状だというのにこれだけのダメージの中で長編を描ききるのは敬意しかありません。

 2017年、沖縄でのシュノーケル参加(水死体倶楽部という集まり)で足と膝を故障してから、どんどんと体調を崩していく様子が生々しく描かれており、読んでいて「痛い」です。
 
 本作の骨子は闘病についてですが、著者の過去なども明瞭に語られていて、興味が尽きません。過去作品でも何度か自身の体験をもとに語られているものがいくつかありますが、今回も「そこまで書いてだいじょうぶなのか?」と思うぐらい、違法薬物のメリット(!)とデメリットなどが記されておりスリリングです。前述の病状(暫定の診断も)が出てからも、酩酊をこえた宇宙の真理との邂逅を求めてベニテングダケを摂取し、結果ひどいめに遭うというロックスピリッツも健在です。

 いっぽう病院の待ち時間にSwitchのゼルダBOWでヒマをつぶす、などのチャーミングな側面もあり、楽しめます。六十三さいになっても、あらゆることに興味が尽きない貪欲さにクリエイティビティを強く感じました

 壮絶な闘病生活を淡々と語りつつ、著者のルーツにあるエピソードが随所にはさまれており、長編作ながらも、ぐいぐいと一気に読めます。

 エッセイものですと、下記も面白かったのでぜひ。

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