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【読書】はらだみずき「海が見える家」

 こちらで備忘録を兼ねて、読んだ本について記しておこうとおもいます。
 今回ははらだみずきのヒューマン小説「海が見える家」です。
 KindleUnlimitedで読み放題です。

 主人公の文哉(ふみや)は、新卒で入社したブラック企業ではたらくも一ヶ月でワイプアウト(辞職)してしまいます。しかし、辞めてはみたものの次のあてはまったくなく、さてどうしようかと思った矢先に、疎遠になっていた父親の訃報を突然受けます。電話の主は名乗らず、その正体不明の男にいわれるがまま、父が生前暮らしていたという千葉・南房総へと向かいます。と、いう感じで物語は始まります。

 文哉は数年ぶりに父の遺体と対面するのですが、その姿はたしかに父のものながらも、ずいぶんと印象が変わっていました。父の家や遺産などを整理していくうちに、形にない遺産にも触れるようになり、だんだんと知らなかった生前の父の姿を見出していきます

 ……劇中である登場人物のこんなセリフがありました。
大抵のことは、めんどうくさがらず調べればわかるし、根気よくやればできるもんだ」。そう、たいていのことは、めんどくさいから調べなかったり、結果が出るまで根気よくできないから、成せないことが多いんですよね。何事も。と、このような蒙を啓くような表現が散見されるのですが、まったく説教くさくなく、巧みに自然と差し込まれていて、とてもよい感じです。

 終盤サーフィンの描写が多く出てくるのですが、重要なキーワードが散りばめられている気がします。「波に乗る」「次の波を待て」など、文哉(読者もね)が海との対峙によって、人生における教訓を体得していく姿がとてもよいです。

 とても読みやすい文章と構成で、飽きさせずに房総の海の風景に浸れます。著者は「はらだみずき」さん、とのことで、女性にしては男性が描くような描写と文体と語彙だな……と思っていたら、男性でした。

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