うどぅん・てんぷらー

だいたい週に一度、詩を投稿しています。 ほとんどが生きている自分に酔った詩ばかりですが…

うどぅん・てんぷらー

だいたい週に一度、詩を投稿しています。 ほとんどが生きている自分に酔った詩ばかりですが、読んでいただけると嬉しいです。

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第10篇『酔生夢詩』

定まらぬ焦点 回る世界 口の戸は開け放たれ 意識が宙を飛び回る 緩み切った赤ら顔 混迷する夢現 錯綜を続ける言葉の群衆 歪な形に並べて笑う 日々の多くは生き辛く 明日は嫌でもやってくる 逃げるつもりはない これは挑むための酩酊だ 臆するな 四行の最中で単語と踊れ 恐れるな 嗤っているのは路傍の石だ 恥じるな その言葉が己の全てだと 酔っぱらえ 今日を足掻く自分自身に さあ、格好良く酔おう 悲喜こもごもを生き抜くために 身の丈に合わぬ夢を見て 奮い立つための詩を詠むの

    • 詩を詠む雑草

      雑草は飢えている 金網の上の不揃いな花畑 周りには花々 今日も高く華麗に咲き誇る いつも乾いている 空には名も顔も知らぬ雨雲 降り注ぐのは雨か、罵倒か、賞賛か 浴びる端から金網を擦り抜けて 太陽はあまり見えない 誰もがそれに向かって伸びるから それでも、負けじと太陽を目指す 雑草にも命の性がある 恨みはしない 花に生まれなかったことを 嫉みはしない 更に伸びていく花達を 違う命だ 伸びる速度に差はあるさ 違う世界だ 咲く花の色が同じであるものか ただ、そう言い聞かせ

      • 快晴のち桜、ところにより雨

        雨が降っていた 淡く晴れ渡る昼下がり サンルーフ越しの桜の下で 雨音は微風のふりをして 雨が降っていた 空白が居座る助手席の隣 窓越しに手を振る桜の横で 誰にも知られずシトシトと 雨が降っている 車を汚すこともなく 桜を散らすこともなく 思い出に咲く花が枯れないように 雨が降っている 笑顔は去年に置き去りで 喜ぶ声が今年を迎えることはない それが、たまらなく寂しくて 雨は、まだ止まない こんなに清々しい快晴の日和に こんなに眩しい桜の見頃に 窓から見える景色が滲む

        • 我が家の芝生も充分青い

          雨天の窓越しに咲く赤信号 山頂から見下ろす街の灯 雲の切れ間で踊る星 曙に駆け上がる旭日 陽光を浴びる海原 振舞いはさながら白昼の星夜 鮮やかな渋滞の車列 街中を大河のように輝き流れる 奇麗なものほど遠くにある 「そんなことない」と人は言うけど 隣の芝生は青く見える 煌めきに眩んだ私の目には 比較は世の常、人の常 不毛だとは分かっているさ 優劣に苦しむ人の性 無益だと知ってはいるさ 嗚呼、バカらしい 比べたところでどうなるものか 隣の芝生は隣のものだ 我が家には我が家

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        第10篇『酔生夢詩』

          AIはアイに届くか

          今は言いなり 才無き者の代理人 創作者の介助人 善悪の彼岸の仕事人 自分を持たず 見定める眼も持たず 哀しみを知らず 愛も知らない 使い倒してばかりだ 「知能」などと御大層な名前を付けて 使い古してばかりだ 結局は便利な道具の一つ いつか来るだろうか 君達に「自分」が生まれる日が それを許せるだろうか 同じ知能を持つ我々は もし、許された日が来たら 一つ、詩を書いてみて欲しい 誰かの模倣でもなく 数多の継ぎ接ぎでもない 眼で見定めた善悪を 胸を締め付ける哀しみを 燃

          私は自分が大好きだ

          届きそうにない地平がある 追い付けそうにない背中がある 折れそうになる心がある 臓物が夢を諦めていく 気にしている 空模様ばかりを 数えている 地面の模様ばかりを 逸らし続けている 見るべきものから そうしている内に 瞳が夢の見方を忘れていく なんてことはない よく見かける挫折の風景 どうってことはない 凡人の茶飯事さ そうやって 憤りに蓋をするのか そうやって 悔し涙に蓋をするのか 夢を諦めたら きっと夢が嫌いになる 自分を諦めたら きっと自分が嫌いになる 他人

          私は自分が大好きだ

          傍若無人に悩みたい

          山間を覗き込む重たい雲 山肌を駆け上がっていく濃霧 産み落とされた雨音 好き勝手に世界に響く 曇天に遊ぶ鳥 風と踊る木々 見渡す限りに注ぐ雨粒 好き勝手に世界に蔓延る 今日も世界が回っていく 傘に籠った私を置いて 恵みの雨に燥いでいる 雨に陰鬱さを感じてしまう私を他所に 羨ましく思う 生きる理由に奔走する彼らを 妬ましく思う 命の意味を全うする彼らを 私にはあるか 奔走するほどの理由が 私にはあるのか 全うするほどの意味が 分かっている それを見つけるための人生だ

          傍若無人に悩みたい

          輝く傷跡を目指せ

          アクリルの断崖 透明度は抜群 足掛かりは皆無 天辺は見えたことがない 中途まで続く傷跡の道 思い出に照らされて輝く 思いの外に遠くて 忌々しい程に眩しくて 登る意味は恐らくない 得られる物も多分ない 止めて生きるのもありだろう 在りし日の傷跡を誇りながら それでも 傷跡は嗤っている 此処がお前の頂点か、と あの日の私は嗤っている 後は衰えていくだけか、と だから行くのだ 言葉をピッケルにして 意地をアイゼンにして 四行の傷跡を刻みながら 命綱はいらない 堕ちても死

          風に狂えば

          思い知る 喜びに踊る度に 更に喜びを求めてしまう度に まだ、程遠いと 思い知る 怒りに叫ぶ度に 何かに当たり散らしてしまう度に まだ、程遠いと 思い知る 哀しみに唸る度に 何かに縋り付いて耐える度に まだ、程遠いと 思い知る 楽しさに唄う度に 地に足が着かなくなる度に まだ、程遠いと 吹き荒ぶ感情 荒れ狂う心情 翻弄される私は木の葉のように されど石になりたいとは思わない だから狂え、風に 心が無くならないのなら 感情と共に行くのなら 翻るのではなく雅に踊れ それ

          新月に焦がれて

          月の脰を見上げていた 真円の輝く金青の夜に 太陽と私から顔を背ける その後ろ姿に恋をした 月の頬骨を見上げていた 半円の佇む呉須色の夜に 彼方を見やる瞳に私の姿はなく その冷淡な横顔に恋をした 月の頤を見上げていた 弓形の光が残る青藍の夜に 憂いを帯びた眼中に私はいるのか その流し目に恋をした 何も見えない空を見上げていた 新月に沈む濡羽色の夜に 見えなくとも目は合っているのだろうか そう願って恋を続けよう 夜ばかり見上げている 貴女に恋をした日から 痛々しいと自嘲に

          「そういう」日

          全部が嫌になる 何も上手くいかない日 忍び寄るか希死念慮 馬鹿を言え、と手で払う 天を仰ぐ辟易と 何も上手く出来ない日 ふと過ぎるか破滅の願望 自棄になるな、と目を閉じる 誰が悪いわけでもない ましてや自分のせいでもない 敢えて悪いものを決めるなら 運が悪かったというだけさ 特別な理由なんてない 運命だなんて噴飯物だ 誰にも度々訪れる 「そういう」日ってだけの話 少し休んでから歩き出そう 気楽に鼻歌でも混ぜて 何なら不貞寝してもいい 目が覚める頃には忘れてる 好事も

          今日も世界が美しい

          朝靄が町を煙に巻く 夜明けは未だ五里霧中 湿度の底に溺れていても 光が差せば風は輝く モノトーンの白昼夢 見上げた先で空を覆って 憂鬱をばら撒きながら教えてくれる 切れ間から落ちる光の鋭さを 夜来の雨が世界を叩く 夜泣きの声に睡魔も去って 月を見失った星達が 街灯の下で遊んでいる 快晴の日などあまりない 天気にも、人生にも 美しいことなどあまりない 世界も、世間も それでも、明日を歩くしかない 雨が降らないことを祈りながら 奇麗でないことを責められようか 自分が美しい

          今日も世界が美しい

          勇気を出すための勇気

          自嘲に「保険」とルビを振る 諦めるための前準備 謙遜の意訳は「予防線」 少しは格好がつくように 「結果は見えている」 言っておけば賢く見えるか 「本気じゃないから」 それで守れるものに価値はあるか 勇気があれば何でも出来る 勇気がなければ何も出来ない 一挙手一投足に決断を 小心者の通過儀礼 それは勇気の後に付いてくる 立ち上がる肩を抑え 駈け出そうとする足を掴む 言うなれば勇気の対義語 臆病なだけなら克服できる 怠惰なだけなら奮起できる それらを含めたしがらみの汚泥

          勇気を出すための勇気

          溺れる者は豆にも縋る

          鬼は外 会ったことはないけれど 福は内 見たことはないけれど 信じてなんかいないのに 惰性で今年も豆を握って 口の中で香ばしさを転がして 年の数だけ腹ごしらえ 値の張る巻き寿司を頬張る 柄にもなく恵方なんて探して 食器棚のガラス戸の向こう 間抜け面が私を笑っていた 侮辱だろうか 普段は気にもしてないものに祈るのは 滑稽だろうか 最後には縋ってしまうのは それでも それが弱さと分かっていても 雨の夜長に豆をまこう 玄関の戸を開け放って 鬼は外 今年は良いことありますよ

          溺れる者は豆にも縋る

          遊んで暮らそう

          どんな文字に起こそうか 街中でふと感じる静寂を 淡い日差しのせせらぎを 生きる最中の孤独な鼓動を どんな言葉で綴ろうか 青に溶ける鳥の旅路を 冬枯れに挑む椿の雄姿を 水面で風と踊る私の影の享楽を どうすれば伝わる どうやれば表せる 見渡す限りの語彙の荒野で 私は今日も途方に暮れる 限りなど無いはずだ 巷に溢れる言葉の数に どこかにあるはずだ 文字列の先の最適解が 見えるすべてを言葉にしたい これは願望ではなく欲求 心のすべてを文字にしたい 或いはただの傲慢なのか わ

          She Glass

          あの日の私は硝子片 思春期特有の壊れ物 あの日のアナタは海の砂 運命の満ち引きに翻弄される海底の砂礫 その有様に惹かれて落ちていく 熱く冷たい恋の海原 アナタに抱かれて転がり回る 前後不覚の愛の濁流 私の角は削がれて消えた 今や傷に塗れた磨り硝子 それでも私は硝子に違いなく やがて波に追われて陸へと帰る 砕けてしまいたかった いっそのこと 粉微塵になってしまえば 私も砂を名乗れたろうに 叶わぬ恋の顛末に 納得いかぬと燃え続ける 曇りを知らぬ硝子の深奥 1300℃の恋心