見出し画像

快晴のち桜、ところにより雨

雨が降っていた
淡く晴れ渡る昼下がり
サンルーフ越しの桜の下で
雨音は微風のふりをして

雨が降っていた
空白が居座る助手席の隣
窓越しに手を振る桜の横で
誰にも知られずシトシトと

雨が降っている
車を汚すこともなく
桜を散らすこともなく
思い出に咲く花が枯れないように

雨が降っている
笑顔は去年に置き去りで
喜ぶ声が今年を迎えることはない
それが、たまらなく寂しくて

雨は、まだ止まない
こんなに清々しい快晴の日和に
こんなに眩しい桜の見頃に
窓から見える景色が滲む

雨は、まだ止まない
いつかは止んでしまうのだろう
暖かく優しい吹雪が止む頃に
春の終わりが来る頃に

雨が止んでも終わりはしない
花が散っても桜は死なない
葉を付けて夏に盛り
冬を越えて、また春に返り咲く

雨は降るに任せるさ
それも私が生きてる証だ
いくつもの雨を越えた先
私にも、また春は来るのだろう

だから春よ、また会おう
助手席は空白にしたままで
太陽と桜が咲き誇り
ところにより雨が降る、そんな日に



この度、cofumiさんの企画に参加させていただきました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?