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詩「11月」



冷え込んだ早朝。
新聞を取りに出た母が帰ってきて、
「もう葉っぱに霜が降りてたよ」
と言ったので、
「これから冬になるんだね」
と私は当たり前のように答えた。
それから時間を置いて、片方が
「晴れたら霜は消えちゃうかな」
とつぶやく。
寒さのなかでみえる景色が妙に儚いのは
私たちの心の鏡を見たせいか。
年中生い茂る草にも、それは降りたか。
ふわふわした綿毛を脱いだなら、今度はきらきらと輝かせ、鮮やかに枯れてゆくだろう。
惜しみない生命力を全身で伝えながら。
私は冷たい風を大きく吸い込み、吐いた白い息の行方を見守った。

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