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バルアトルケものがたりⅢ

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「バルアトルケものがたり」は読み聞かせられるように、と思って書いています。
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#ファンタジー

18*ルミナ島のドラゴン

18*ルミナ島のドラゴン

バルアトルケものがたりⅢ

スカイは話し始めました。

「ご存じのように、ドラゴンは北にあるルミナ島と言うところに住んでいます。ルミナ島は古くから世界の始まりの場所といわれ、わたしたちはルミナ島を護っているのです。

ルミナ島は真ん中に火山が高くそびえていて、火山の周り、裾野には木々が生い茂っています。火山の地熱のおかげで世界中の木々が生えています。火山口付近は特に神聖な場所と言われていて、季節ご

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17*洞穴の中では(6)

17*洞穴の中では(6)

バルアトルケものがたり*17

ザーッ ザーッ ザーッドラゴンは動き向きを変えました。おかあさんドラゴンの鼻先には小さなドラゴンが乗っています。小さなドラゴンはおかあさんから飛び立って、3人のところまで降りてきました。

「ありがとう。薬がきいたみたい。喉のつかえがとれて楽になったって。」

小さなドラゴンは、言いました。

「きみのおかあさん、お腹すいていると思うから、今食べ物を出すね。」

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16*洞穴の中では(5)

16*洞穴の中では(5)

バルアトルケものがたりⅢ*16

アリィは薬箱を右手の手のひらにのせました。そして左手をおおきなドラゴンにかざして言いました。

「リスクルオナ リスクルオナ」

薬箱の色が光を発しながら変わり始め、紫色になり光が消えました。アリィは薬箱を開けました。中には、薄い紙の包みが入っていました。包みは透けていて、なかに粉の薬がはいっているのがわかります。

「これを飲めばいいんだけど・・・きみのおかあさ

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15*洞穴の中では(4)

15*洞穴の中では(4)

バルアトルケものがたりⅢ*15

セオナルドはスプーンをもち、小さなドラゴンがお腹いっぱい食べて元気になる様子をイメージしてからスプーンに向かっていいました。

「ウトガリア ウトガリア ナンミセアワシ」

スプーンがピカッと金色にひかり、先から煙がでてきました。煙からいい匂いがしてきます。煙はうずをまき、スプーンの先で少しずつ大きくなり、サッカーボールくらいの綿飴になりました。綿飴が大きくなるの

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14*洞穴の中では(3)

14*洞穴の中では(3)

バルアトルケものがたりⅢ*14

セオナルドとアリィは洞穴のいりぐちが見える、少し離れたところで待っていました。ピリルが洞穴に入って行ってから少したちました。

「入り口まで歩いて行ってみない?」

しびれをきらしたのか、アリィが言いました。

「そうだね。ピリルもでてこないし、物音も聞えないし。」

セオナルドは賛成し足元に置いていた荷物をひろいあげ、入り口に向かって歩き出しました。洞穴の入り口

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13*洞穴の中では(2)

13*洞穴の中では(2)

バルアトルケものがたりⅢ*13

その洞穴までは、すぐにたどり着くことができました。洞穴の入り口が見えたところで3人は立ち止りました。

「いきなり3人で行って驚かせたらいけないと思う。僕が様子を見にいってくるよ。」

ピリルは言い、洞穴へむかって歩いていきました。

洞穴の中は薄暗く、中の様子はわかりません。ピリルはわざと足音を立てて歩いてから立ち止りました。

「誰かいるの?僕はユニコーンのピ

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12*洞穴の中では

12*洞穴の中では

バルアトルケものがたりⅢ*12

苦しい・・・ 

お腹が圧迫されたような重みがあり、のどが渇いてしかたがありません。それなのに水を飲むとぐるぐると変な音がして、気分がわるくなってくるのです。のどと胸のさかいめになにか引っかかっているような気がして、指を突っ込もうとしても届かず、いらいらします。

のどを掻こうとした前足は地面を空しく掻き、お腹の苦しさを和らげようと尾を右に左に動かしてみてもいっこ

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11*ドラゴンの洞穴へ

11*ドラゴンの洞穴へ

バルアトルケものがたりⅢ*11

ピリルは我に返りました。ちょっと離れたところにセオナルドとアリィがすわっています。

「ピリル、大丈夫?」

ぽーっとしているピリルを心配してセオナルドが聞きました。ピリルはうなずいて、アリィに聞きました。

「ここらへんに洞窟ってあるのかなあ?思い当たる?」

アリィはスケッチブックから顔を上げて答えました。

「このビーチを曲がってもっと先にいくと岩場があって

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10*洞穴

10*洞穴

バルアトルケものがたりⅢ*10

そこは暗い大きな洞穴のようなところでした。天井はとても高く、まわりはごつごつとした岩で、足元は荒い砂で石と岩がころがっています。

ジャッ ジャッ ジャッ

地面をひっかくような、音が聞こえてきます。

ギィー ザーッ

何か重いものを動かしているような音も聞えます。

目を凝らすと、奥に何かとても大きなものがあるのがわかりました。

そのおおきなものの左の側にち

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9*朝の海辺

9*朝の海辺

バルアトルケものがたりⅢ*9

朝早く、3人は海辺に行きました。潮が満ちていたので波打ち際は昨日よりもずっと近くにあり、波は静かで、まるでまだ眠っているかのようでした。

ピリルはビーチの端の岩場に座り、セオナルドとアリィは少し離れて座りました。

潮風が気持ちよく、セオナルドは深く息を吸いました。胸いっぱいに潮の香りが満ちてなんともいえないあたたかな気持ちになるのです。

アリィが持ってきていた

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8*海辺で

8*海辺で

バルアトルケものがたりⅢ*8

3人は夕食代わりにセオナルドのおかあさんのサンドイッチを食べ、お茶を飲み、休みました。

季節は夏 まだまだ日はたかく、外を散策するには充分です。

アリィの家の裏庭から細い遊歩道が、ビーチにむかってのびています。3人はビーチへと歩いていきました。

初めて聞く波の音が耳にやさしく響いてきます。潮の香りも、ビーチの貝殻の感触も、すべてが新しい経験です。

ピリルは少

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7*アリィの家

7*アリィの家

バルアトルケものがたりⅢ*7

3人はセオナルドのおかあさんのサンドイッチを食べたあと、丘を3つ越え、ようやくアリィの住む村に着きました。

村は家同士が近く隣り合っていて通りも狭く、セオナルドの村とはだいぶ違います。エアリィの家は村のメイン通りのつきあたりにありました。

家の正面の庭には、ラベンダーなど色とりどりの花がたくさん咲いています。

「ちょっと待ってて。鍵をとってくる。」

アリィは

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6*絵を描く

6*絵を描く

バルアトルケものがたりⅢ*6

絵を描くこと

アリィにとって、それはすごく自然なことでした。おかあさんが使う絵筆がアリィにとっての遊び道具でした。おかあさんはアリィがどんなに手を汚しても、服を汚してもまったく気にとめません。

おとうさんがおかあさんのアトリエのとなりにアリィ専用の小さなアトリエを作ってくれたので、思う存分いつでも絵を描くことができました。

おかあさんはときどき、家で変身パーテ

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5*秘密のスプーン

5*秘密のスプーン

バルアトルケものがたりⅢ*5

アリィが住む海のそばの村は、セオナルドの家から歩いて半日ほどのところにあります。川や丘をいくつも越えるので、休みながら3人はすすみました。

セオナルドのおかあさんは、念のため、と言って2回分のサンドイッチを3人分とビスケットをたくさん持たせてくれました。セオナルドのバッグには、はいりきらなかったので、ピリルが背負ってくれました。

セオナルドのバッグには、小さなコ

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