13*洞穴の中では(2)
バルアトルケものがたりⅢ*13
その洞穴までは、すぐにたどり着くことができました。洞穴の入り口が見えたところで3人は立ち止りました。
「いきなり3人で行って驚かせたらいけないと思う。僕が様子を見にいってくるよ。」
ピリルは言い、洞穴へむかって歩いていきました。
洞穴の中は薄暗く、中の様子はわかりません。ピリルはわざと足音を立てて歩いてから立ち止りました。
「誰かいるの?僕はユニコーンのピリルです。」
小さな声で言ってみましたが、何も聞えません。今度は少し大きな声で言いました。
「僕はユニコーンのピリルです!誰かいますか?」
ピリルは少し洞穴の中へ踏み込みました。中はとても奥まっているようです。こんどこそ、聞こえるようにピリルは大きな声をだしました。
「誰かいますか?僕はユニコーンのピリルです!」
・
・
「ピリルです!」
・
「ピリルです」
ピリルの声がこだましながら洞穴の中へ吸い込まれていきました。
パタパタパタパタ・・・・・
しばらくたって、小さな羽音が聞こえてきました。そして姿を現したのは小さなピンク色のドラゴンでした。
ドラゴンはサッカーボールくらいの大きさで、とても痩せています。
「何があったの?僕は君の姿を朝の瞑想の時間に見たんだ。心配ないから教えて。」
ドラゴンは何も答えずに、手まねきをして元来た方へ飛んでいきました。
ピリルがついていくと、大きな岩のようなものが奥に見えてきました。
朝の時間にみえたのとおんなじだ。
ピリルが思った瞬間、その大きな岩が動きました。小さなドラゴンはそのそばに降りてピリルを見上げています。
大きな岩にみえたのは、大きなドラゴンでした。痩せて背骨がごつごつしてひとめで病気だとわかりました。動いたので生きているのはわかりますが、ピリルの気配にも気付いていないようです。
「この大きなドラゴンはきみのおかあさん?ぼくはエルフィの男の子と女の子と一緒に来ているんだ。彼らもここに呼んでいいかな?」
ピリルの問いかけに、ドラゴンはうなずいて、まるくなりました。
「君も具合が悪そうだね。待っててね。すぐ戻ってくるから。」
ピリルは言い、外に向かって走って行きました。
早く、助けてあげなくちゃ!!
早く!
早く!
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