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生きていく悲しみ

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生きるのって、悲しみを孕んでいるように思うんですね。 そりゃ嬉しいことの方が、僕は多いのだけれど、あまりに苦しい生き方をしている人が、なんと多いことか。 映画は、そんな世界を切り…
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2021年4月の記事一覧

一人勝手に回顧シリーズ#小津安二郎編(25)#宗方姉妹/姉妹の愛

一人勝手に回顧シリーズ#小津安二郎編(25)#宗方姉妹/姉妹の愛

【映画のプロット】
▶︎姉妹
京都。大学の時計台。キャンパスを行き交う学生。内田教授が、病理学の講義。
"...僕の友だちで、これは、学生時分、おんなじ寮にいて、いつも賄い生活の大将だった男なんだが、これが今、胃ガンで、刺激物はいかん、酒はいかんと言ったら、タバコだけよせと言うまいなと、こう言うんだね。それに、最近は、酒も飲み出した。これは、普通、考えると、とうに死んでいなければならん男だが、なか

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一人勝手に回顧シリーズ#小津安二郎編(24)#晩春/嫁ぐ日

【映画のプロット】
▶︎周吉と紀子
北鎌倉駅。山に、鳥が鳴く。
寺院で催される茶の席。和装の女性が、集う。
紀子は、まさに話し掛ける。
"おばさん、お早くて?"
"ううん、ほんの少し前。今日、お父様は?"
"うちで、お仕事。昨日までの原稿が、まだ出来なくて。"
"でも、ぷうちゃんが、縞のズボン穿いたら、おかしくない?"
"何だって、いいのよ。膝から下、切っちゃって。どう?"
"そりゃ、直るでしょう

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一人勝手に回顧シリーズ#小津安二郎編(23)#風の中の牝鷄(原題の表記は、"とり"の右側は、ふるとり)/何と言っても田中絹代

【映画のプロット】
▶︎時子の暮らし
東京の場末。酒井宅を、調査員が訪ねる。
"ごめんなさい。"
"酒井さんですな。皆さん、お変わりありませんな。雨宮時子さんは、お宅にいるんですな。"
"はっ。"
"間借りですね。"
"はっ。2階貸しとりますんで。"
"子どもさんと二人ですな。"
"はっ。"
"生活は?"
"ミシンの下請けをやっています。"
"ご主人は、まだですか?"
"はっ。"
"まだですな?

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一人勝手に回顧シリーズ#小津安二郎編(22)#長屋紳士録/戦火の後で

一人勝手に回顧シリーズ#小津安二郎編(22)#長屋紳士録/戦火の後で

【映画のプロット】
▶︎捨て子
長屋の夜。
"だがな、月を見な、時々は雲もかかるだろう。星ほどにもない人間だ。ふと、闇にもなろうじゃないか。さっきもさっき、今は今、優しいこと、嬉しいこと、可愛いことを聞くにつけ、後ろから、騙し討ちにするような、この身を砕かれるような気がして、翌夕のことと承知して、斬られてくな。死ぬより辛いことなんだ。お前に、そんなに責められては、おら、生きてる空あ、ない。だがな、

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一人勝手に回顧シリーズ#小津安二郎編(21)#父ありき/慈しむ親子

一人勝手に回顧シリーズ#小津安二郎編(21)#父ありき/慈しむ親子

【映画のプロット】
▶︎父一人、子一人
箱を背負った行商人の一行が、橋を渡る。住宅街。堀川の家。
"お父さん、靴炭、もうなあなった。"
"そうか、じゃあすぐ買って来よう。"
"あの靴も、もうダメやね。いくら磨いても、ちっとも光らんよ。"
"ありゃ、まだいい。まだまだ履ける。良平、忘れ物ないか?"
"いいか、忘れ物ないか。''
"新々産立読み方思考。"
"しもた。算盤忘れた。"
"ほら、見い。""

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一人勝手に回顧シリーズ#小津安二郎編(20)#戸田家の兄妹/親戚の仲

一人勝手に回顧シリーズ#小津安二郎編(20)#戸田家の兄妹/親戚の仲

【映画のプロット】
▶︎父の死
屋敷の塀、ランの鉢。庭に写真機と椅子を据え、記念撮影の準備。
三姉妹がおしゃべりする。
"お父様とお母様は、いくつ違いになるの?"
"8つよ。"
"お父様、69?"
"そうすると、お母様、辰かしら。"
"そうよ。三回り目。''
"お父様の還暦の祝いから、もう8年になるかしら。"
"そうね、あの時あんた、これくらい(手で高さを示す。)。私はまだ、女学校。"
"お姉さん

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一人勝手に回顧シリーズ#小津安二郎編(19)#淑女は何を忘れたか/東京の世相

【映画のプロット】
▶︎裕福な夫人
車が、屋敷の前に止まる。下りて来た千代子は、ドライバーに声を掛ける。
"行ってらっしゃい。カーブしちゃダメよ。"
"大丈夫だよ。"
"後30分経ったら、会社に電話かけてみるわよ。"
車は走り去る。
"まあ、藤雄ちゃん、こんちわ。"
近所の子どもに、声を掛ける。
"お母さん、来てらっしゃる?"
"うん。"
"なんだってそんなとこいるの?"
"母さんたちのお話聞い

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一人勝手に回顧シリーズ#小津安二郎編(18)一人息子/一旗上げよ

一人勝手に回顧シリーズ#小津安二郎編(18)一人息子/一旗上げよ

【映画のプロット】
▶︎母一人、子一人
人生の悲劇の第一幕は、親子になったことにはじまっている
               侏儒の言葉
1923年、信州。春繭を背負い、道を歩く、笠を被った女たちの一行。製糸工場で、繭から糸を紡ぐ女たち。
おつねは、臼を挽く。
息子の良助が話しかける。"母やん、組から4人、中学校に行くんだと。"
"ほだな。"
先生が、おらに、どうするか聞いたんだが。"
"で、おめ

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一人勝手に回顧シリーズ#小津安二郎編(16)#青春の夢いまいづこ/ブルジョワと庶民

一人勝手に回顧シリーズ#小津安二郎編(16)#青春の夢いまいづこ/ブルジョワと庶民

【映画のプロット】
▶︎学生生活
テニスの🎾試合。応援団の先導で、学生は、拍手を送る。
キャンパス。学生がたむろする中、斉木は、本を手放さない。教官の腕に触れ、教官は荷物を落とすが、気がつかない。
"有名な商科2年の勉強家ですよ。"
"できるんですか?"
"惜しむらくは、中学生の頭ですよ。"
斉木は、道に置かれた岡持にぶつかる。
お繁(田中絹代)が、岡持を取り、斉木に言う。"嫌な斉木さん、勉強ば

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一人勝手に回顧シリーズ#小津安二郎編(12)#浮草物語/旅回り一座の物語

一人勝手に回顧シリーズ#小津安二郎編(12)#浮草物語/旅回り一座の物語

【映画のプロット】
▶︎凱旋公演
中山道沿い、中央本線奈良井の駅。
宿屋の主人は、"なにかかかるのか?"と、駅員に尋ねる。
"芝居さ。市川喜八の一座だ。"
汽車が🚂駅に着き、一座が降りて来る。
"しばらくぶりですね、旦那。"
"またしばらく厄介になりますよ。"
"坊主、大きくなったな。"
"丸4年来てなかったからな。こいつも九つになった。"
"そら豆みたいな子だったけど、綺麗になったな。"主人

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一人勝手に回顧シリーズ#小津安二郎編(9)#非常線の女/和製ギャング映画

【映画のプロット】
▶︎タイピスト
オフィスのタイプ室。タイピストが、タイプを叩く。
重役は、社長はどうしたと、聞くが、"社長は、まだ来ていない"と返事がある。
重役は、時子を呼ぶ。
重役は、時子の左手のくすり指に、ルビーの指輪をはめる。
時子は、"妙な意味合いのものなら、いただけない"と言って、指輪を抜こうと💍するが、抜けない。
終業時間となり、社員は、次々と、オフィスを出る。
時子は、重役か

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一人勝手に回顧シリーズ#小津安二郎編(8)#東京の女/姉・弟の愛

一人勝手に回顧シリーズ#小津安二郎編(8)#東京の女/姉・弟の愛

【映画のプロット】
良一と姉ちか子との二人暮らし。
良一は、恋人の春江と会うかも知れないと、ちか子に告げる。
ちか子は、良一に、小遣いを上げる。

ちか子の職場に、警官が訪ねてくる。人事課長が呼ばれ、勤務状況などを聞く。
なかなかの精勤ぶり。入社4年半。退勤後は、千駄ヶ谷だかの大学教授の家で、翻訳を手伝っているらしい。
良一は、春江(田中絹代)と、映画を観る。E.ルビッチほかのオムニバス映画。春江

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一人勝手に回顧シリーズ#小津安二郎編(7)#東京の合唱/不景気に明るく

一人勝手に回顧シリーズ#小津安二郎編(7)#東京の合唱/不景気に明るく

【映画のプロット】
▶︎遅刻常習
校庭に、学生たちは、整列させられる。
教官が、だらしない姿勢を、個別に正すが、あっちを立てれば、こっちが立たず。学生たちに、緊張感はない。
遅刻常習者が、遅れて、やって来る。
全員、上着を取れと指示されるが、遅刻常習は、上着を脱がずに、整列している。
教官に、みとがめられ、上着を脱ぐが、アンダーシャツを着ていない。遅刻常習は、その場に、立っておくよう、命じられる。

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一人勝手に回顧シリーズ#小津安二郎編(6)#大人の見る繪本 生まれてはみたけれど/サラリーマンの苦労

一人勝手に回顧シリーズ#小津安二郎編(6)#大人の見る繪本 生まれてはみたけれど/サラリーマンの苦労

【映画のプロット】
▶︎引越し
家財道具を積んだトラック🛻が、ぬかるみに車輪を取られる。サラリーマンの吉井は、良一、啓二の兄弟に、トラックを押すよう命じる。吉井は、エンジンに負荷をかける。
ようやくトラック🛻は、ぬかるみを抜け出す。
吉井は、"岩崎さんのところに寄るので、お母さんにそう言うよう"、兄弟に言いつかる。
新居に着いた兄弟は、母親に、父親の伝言を伝える。
引っ越しを、吉井の部下が手伝

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