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一人勝手に回顧シリーズ#小津安二郎編(8)#東京の女/姉・弟の愛

【映画のプロット】
良一と姉ちか子との二人暮らし。
良一は、恋人の春江と会うかも知れないと、ちか子に告げる。
ちか子は、良一に、小遣いを上げる。

ちか子の職場に、警官が訪ねてくる。人事課長が呼ばれ、勤務状況などを聞く。
なかなかの精勤ぶり。入社4年半。退勤後は、千駄ヶ谷だかの大学教授の家で、翻訳を手伝っているらしい。
良一は、春江(田中絹代)と、映画を観る。E.ルビッチほかのオムニバス映画。春江は、プログラムをなくしたと言う。良一は、自分のプログラムを渡す。
"帰ったら、兄に話してあげようと、思って"。
映画では、太った男が、階段を上がり、社長室などを次々と通り抜ける。
春江が帰宅すると、入れ替わりに兄が出て行こうとしている。兄は、"ちか子さんに伝えなければいけないことがある"と、言う。
"ちか子が、退勤後、酒場で働いているという噂が立っている"と、言う。
"それだけじゃなく"、兄は、春江に、何やら耳打ちする。
春江は、"それは、私の口からにさせて"と言い、兄も了承する。
春江は、良一の家に行き、ちか子がまだ帰宅していないことを、確認する。
良一は、姉に代わって聞こうかと言うが、春江は、何も言わない。"じゃあいいよ"と、良一は、不貞腐れる。
春江が、"お姉さんが、思っているようなひとじゃなかったら、どうする"と尋ねる。
春江は、良一に、耳打ちする。
"それだけじゃなく"、"いやらしい酒場女に堕ちている"と言う。
良一は、激昂し、"僕らの平穏を破る者の言うことを聞きたくない"、"帰ってくれたまえ"。
春江は、泣き出し、壁に向かって立ち、すすり泣く。
良一は、考えごとをしている。おばさんに、姉さんから電話だと呼ばれる。
姉が、わたし、また遅くなると、言う。
良一は、電話を切る。
ちか子は、男と車に乗り込む。
ちか子が、帰ると、良一がまだ、起きている。
"姉さんに聞きたいことがあるんだ"と、良一が言う。"どうして、酒場に出入りしてるんだい"。良一は、姉さんは、馬鹿だと、ののしる。そして、姉を平手でぶつ。姉が手を置いた上から、またぶつ。
"良ちゃんは、わたしがやっていることなど、気にせず、勉強に集中して"と、ちか子は、言う。
良一は、"どこに行くか、分かるもんか"と、言い残して、家を飛び出す。
ちか子は、ぶたれた頬を、鏡に写し、さする。
良一は、帰らない。
春江の兄は、身支度を整え、春江に"くよくよ考えない方がいいよ"と、声を掛ける。
ちか子が、春江を訪ねて来る。
"良一は、来ていない?昨日の晩、帰ってこなかった"と、尋ねる。
立ち去ろうとするちか子を、"耳に入れておきたいことがある"と、引き止める。
ちか子は、座敷に上がり、春江が、"兄から聞いた噂を、良一に伝えた"と、言う。"良ちゃんに余計な心配させちゃって"。 
ちか子は、"どうせ、いつかは良一が知るところ"と言う。
春江は、"わたし、良ちゃんが可哀想だと思うんです"と言う。
春江は、電話に呼ばれる。
春江は、兄から、"良ちゃんが、自殺したんだ"と、告げられる。
家に戻り、春江は、やっと、"良ちゃんが、自殺"と言って、ちか子の膝に泣き崩れる。
良一の遺体が安置され、ちか子は、新聞記者の取材に答える。
"何か、心当たりは?"
"これといって、ありません"。
一人の記者が、春江の良一との関係を問うが、春江は、何も答えない。
記者が帰り、ちか子は、"良ちゃんは、ねえさんのことわかってくれなかったのね。""こんなことで死ぬなんて"と言う。
"良ちゃんの弱虫“。
記者が二人、笑いながら歩く。
【感想】
姉と弟は、二人で暮らす。親の影が見えない。哀しい別離が、あったのかも。
弟の純粋な姉への思慕は、酒場で働くなんて、受け付けない。清らかな姉のイメージを崩されるからだ。酒場で働くには、良一が勉強に、専念できるように、カネが入用だったのかも知れない。良一の盲目的な愛は、その確認をする暇を与えなかった。

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