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一人勝手に回顧シリーズ#小津安二郎編(7)#東京の合唱/不景気に明るく

【映画のプロット】
▶︎遅刻常習
校庭に、学生たちは、整列させられる。
教官が、だらしない姿勢を、個別に正すが、あっちを立てれば、こっちが立たず。学生たちに、緊張感はない。
遅刻常習者が、遅れて、やって来る。
全員、上着を取れと指示されるが、遅刻常習は、上着を脱がずに、整列している。
教官に、みとがめられ、上着を脱ぐが、アンダーシャツを着ていない。遅刻常習は、その場に、立っておくよう、命じられる。
学生たちは、行進する。立たされた遅刻常習は、不貞腐れて、遊具のそばにしゃがみ、タバコを🚬吸う。
そんな岡嶋も、今や、保険会社の内勤社員。今日も、出社の身繕いをする。
紙風船が飛んでくる。娘美代子(高峰秀子)が、遊んでいる。息子も現れ、父親に、自転車をねだる。
外を、子どもたちが、自転車で🚲駆け抜ける。岡嶋は、"母さんに、買ってもらっていいか、聞いといで"と、言う。
息子が、戻って来る。"今日は、ボーナスの日だから、お土産に買ってきてもらえと言われた"と、言う。
それを聞いた美代子も、何か欲しいと、言う。
息子は、美代子に、風船を買ってもらってるじゃないかと、抗議する。二人は、ケンカを始め、息子は、美代子を泣かす。
タンスの上に乗った紙風船を、取ろうとして、息子は、レコード2枚を落とす。岡嶋が、レコードを元に戻し、紙風船を取ろうとするが、レコードは、落ちて、割れる。
会社では、ボーナスが、社員一人一人に、社長から手渡しされる。
岡嶋は、中身を数えようとするが、人の目がある。トイレにも、同じ考えの者が集まる。岡嶋は、デスクで、ボーナスの使い途を紙に書く。
社長は、ボーナスが噂の1か月から1、2割増しになって、皆喜んでいるようだと、秘書に話す。
ふと、岡嶋は、向かいの老社員山田が、暗い顔をしているのに、気づく。
山田は、"今日でお別れしなければならない"と、言う。
"保険に加入させた知り合いが、車に轢かれて死んだ。その前には、チフスで、加入したての知り合いが死んだ"と言う。
岡嶋は、それでクビなら、談判すべきだと、言う。
岡嶋は、フロアの同僚にも声を掛ける。
同僚に、焚き付けられて、岡嶋は、社長室に入る。
岡嶋は、社長に、山田がなぜクビになったのか、尋ねる。
社長は、"老朽淘汰だ"と、言う。
岡嶋は、"加入した被保険者が短期間に死んだせいではないか"と、食い下がる。
二人は、激論を交わし、互いに小突き合う。
秘書はおろおろし、外では、同僚が聞き耳を立てる。
岡嶋は、即刻解雇を宣言される。
社長室を出た岡嶋は、山田に、僕も今日限りで、会社とお別れすることになった、と報告する。
岡嶋は、荷物をまとめ、山田をお茶に誘う。
▶︎新しい生活
息子は、スイカをしゃぶりながら、自転車に乗る🚲子どもたちを、通せんぼする。スイカをかじらせる代わりに、その子の自転車🚲にまたがる。自転車を奪われた子は、慌てて取り返し、グリップをハンカチでふく。
息子は、"今日、お父さんがもっと立派な自転車🚲を買ってくれる"と、言う。
岡嶋は、キックボードをぶら下げて、帰って来る。息子にキックボード🛴を渡すが、息子は放り出す。
岡嶋は、何度も息子をなだめるが、息子は、キックボード🛴を受け取らず、岡嶋から離れて、泣きじゃくる。
岡嶋は、家に帰る。美代子が、末の子をお守りしている。
息子も帰り、下駄を空に、蹴り上げる。そして、障子に穴を開ける。
息子は、父親に"ウソ吐き"と、言う。
岡嶋は、息子の足を取り、キックボード🛴の上に乗せようとするが、息子は激しく抵抗する。
岡嶋は、息子を抱き抱え、尻を叩く。息子は、泣く。
母親が、市場から帰り、母親は、"子どもに、ウソを吐くのは、いけない"と、子どもの肩を持つ。
岡嶋は、解雇の辞令を、妻に差し出す。
妻は、暗い顔になり、息子に、キックボード🛴で我慢しいと、声を掛ける。
岡嶋は、折れて、"買ってやろうよ、可哀想だ"と、言う。
美代子と息子は、辞令を紙飛行機にして、無邪気に遊ぶ。 
東京の街。岡嶋は、サンドイッチマンをしている山田に、出くわす。
岡嶋は、山田を誘い、ベンチで語り合う。
"なまじ、大学を出たもので、いまだに風来坊だ"と、岡嶋は、言う。
人々が、一斉に駆け出し、一方向に向かう。山田が、熊が🐻檻から逃げ出したと、言う。岡嶋は、"熊が🐻檻から出ようが、僕の人生に関わりがない"と、動じない。
子どもらが、小川で、魚を追う。遅れてやって来た岡嶋の息子は、岸から、魚のいる🐟方向を指図する。
岡嶋が通りかかり、息子に声を掛ける。息子は、岡嶋のハットで、見事に魚🐟をすくう。
息子が、"美代ちゃんが、クズまんじゅうに当たった、医師は、疫痢になるかも知れない"と言ったと、言う。
二人は、家に急ぐ。
美代子は、額に氷のうを乗せて、休んでいる。
岡嶋は、"なぜ、クズまんじゅうを食べさせたのか"と、聞く。
妻は、古新聞を売ったお金が入ったので、子どもには、好きな物を食べさせようと、思ったと言う。
"お医者は、入院させた方がいいと、言うのだけれど"
"金なら、どうにでもなる。"
岡嶋は、息子に車屋を呼びに行かせる。
病室に、一家が詰める。電灯に、蛾が舞う。
美代子を診察した医師は、"この分なら、心配ない"と、言う。
岡嶋は、息子をおぶって家に帰るが、妻に、"ここの払いは大丈夫?"と聞く。
美代子と末の子を抱いた妻は、人力車に乗って、帰る。
岡嶋は、子どもたちと、輪になって、手遊びをする。
妻が、タンスの中が空っぽなのに気付く。
岡嶋は、遊びの手を止めず、"その代わり、美代子がこんなに元気になった"と、言う。
息子が、母親を遊びの輪に入れる。
職にあぶれた人々が、職業紹介所の前の歩道に腰を下ろす。
岡嶋は、紹介所に入り、肩を落として、出て来る。
偶然、学校の🏫先生と遭う。先生は、3、4年前に、学校を辞め、12か月前に洋食屋を開業したと、言う。
先生は、岡嶋に、店を手伝ってくれないかと、申し出る。
先生は、経営する"カロリー軒"に、連れていく。店は、女給を置かず、妻と二人で経営されている。
岡嶋は、カレーライスを味見する。
先生は、棚から、ほこりをかぶったビラを取り出す。明日、二人でビラを撒こうと、言う。
岡嶋は、それより、昔の同窓に、宣伝してもらうのが、いいと言う。
先生は、それもいいが、二人でビラ撒きをしようと、言う。
翌日。先生は、のぼりを担ぎ、ビラを撒く。岡嶋は、のぼりを担いで、続く。岡嶋の家族が、電車から、"パパだ"と叫ぶ。妻は、"あんなのが、ぱぱじゃありません"と、言う。先生は、ビラが撒きにくいと言って、のぼり2本を、岡嶋に担がせる。
妻は、カツオ節を削る。美代子が薬を飲む。息子が、美代子を小突いて、薬を取り上げる。美代子は、泣き、息子は、庭に逃げる。
岡嶋が、帰って来る。妻は、なぜかよそよそしい。
どこか出掛けたのかと、尋ねると、"昔の学窓のお父さんに心当たりがあったので、仕事の口を頼みに行ったと、言う。"あったのかい?"
妻は、首を横に振る。
妻は、あなたを見たと、言う。"私は、あんなことまでしてと、頼みましたか?"
岡嶋は、"あれは、昔の先生で、仕事をもらうまでの手伝いとして、やっている"と、打ち明ける。岡嶋は、"俺も、昔の溌剌さがなくなった"と、ひとりごちる。
妻は、"それなら、明日、私もその店に行ってみるわ"と、言う。
妻は、飯を皿に盛る。
"カロリー軒"に、岡嶋の同窓が集結し、店は、開店休業。
先生が、挨拶に立つ。
先生に手紙が届く。
先生は、岡嶋を呼び、手紙を渡す。栃木の女学校の英語の先生の口があった。
岡嶋の妻は、"いつか東京に、帰ってこれるでしょう"と、言う。
同窓は、寮歌を合唱する。
妻も、宴席に呼ばれる。
遅刻常習が、遅れてやって来る。
岡嶋と先生は、少しうつむき、こみ上げるものがあるが、気を取り直して、寮歌を歌う。
【感想】
曲がったことが嫌いな岡嶋は、会社と対立して、クビを宣告される。
地獄を見る岡嶋だが、妻の批判にも耐え、"先生"を信じて、新たな職を得る。
その報を受けるタイミングが、絶妙だ。同窓が集う、祝いの席。
"東京のコーラス"の意味を、観るものは、最後に知る。

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