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『やりたいことがわからない人でも 「やる気」がでる仕事術 モチベーションが上がる3つのアプローチ』第1章・無料全文公開

6月26日発売の書籍『やりたいことがわからない人でも 「やる気」がでる仕事術 モチベーションが上がる3つのアプローチ』から、第1章「やりたいことがなくても、モチベーションアップは可能!」を全文公開!

やりたいことがわからなかった自分

 私は長い間、自分のやりたいことがわからず、実はずっと悩んでいました。

鉄道会社で9年勤務したものの、鉄道事業に対する思い入れがもともとあったわけではありませんでした。

小学校のとき、「将来なりたい仕事は?」と質問され、「ありません」と答えたら、「そんなんじゃダメだ!」と先生に怒られたこともあったほどです。

「自分のモチベーションが続かないのは、本当にやりたいことではないからだ」と理由付けていました。本当にやりたいことであれば、どんな困難があっても負けずに取り組めるはずだと考えていたのです。プロアスリートのように。いまやっている仕事は、自分が本当にやりたい仕事ではないからモチベーションが続かないんだと思っていました。

目標やビジョンがなくて、ずっと苦しんできたのです。「なんの制約もなく、叶えられるとしたら、どうなりたいですか」と繰り返し質問されても、「別にそこまでなりたいものはないです」と答えていました。

あるキャリアイベントに参加して、「私、本当に重症なんです。自分がやりたいこととかわからなくて。そもそも小さいころから夢とかもなくて。本当に困ってます。行き詰まってます」と話したこともあります。

「自分は、どうしたらいいのだろうか?」と思い悩む日々が続きました。

「本当にやりたいことってなんだろう?」と、ずっと自分探しをしていました。それを見つけるために、結構お金も時間もかけて、セミナーやコンサルティングを受けたこともありました。その道のプロから週1回、1年のコーチングセッションを受けたときも、「ここまで難しい人はいないですね」といわれたほどです。

現在に至るまで、「自分がやりたいこと」は見つかっていない状態です。そのため「やりたいことがわからない」というビジネスパーソンの皆さまの気持ちは100パーセント共感できます。

「自分が夢中になって、心底満たされるような、そんな仕事があるんじゃないか」と心のなかでは思っていました。そういう仕事に出合えれば、自分の悩みやモチベーションの問題は一気に解決するのではないかと考えていたのです。

いまの自分はそういう仕事に巡りあえていないから、目の前にあることをやらずに先送りしてしまうのだとも考えていました。やるべきことがあったとしても、YouTubeを見たりマンガを読んだりしてしまいがちでした。自分が情熱を傾ける仕事ではないからそうなってしまうと思っていたのです。

「自分はすごいことを成し遂げる非凡な人間だ」と自己イメージにとらわれていて、地味な仕事にコツコツ取り組み、着実に積み上げることができていませんでした。

私は「永遠の少年」状態になっていたのです。自分にとっての青い鳥を探し求めていました。

たしかに、熱意をもって取り組める仕事があるに越したことはありません。自分の情熱を傾けられる「やりたいこと」をもっている人がうらやましい、という気持ちもあります。「私はこれが天職です。毎日楽しく仕事しています」といえる人は、本当に最高に素晴らしいと思います。しかしながら、そういう仕事に出合える人ばかりではないと思います。仮にそういう仕事が見つかったとしても、それで食べていけるかどうかは別問題です。

青い鳥のような「理想の仕事」を見つけようとして苦しみ続けるよりも、もっと楽になる方法があると思うのです。ですが、そこにこだわりすぎて仕事が停滞して足踏みしている状態になるのもよくありません。

仮にやりたいことができたとしても、そこでの人間関係がよくないとか、まったく成果が上がらないとしたら、どうでしょう。自分が大切にしていることに対する基本的欲求が満たされていなかったら、それはつらいことだと思うのですよね。

大切なのは、まず自分の心のコップの水を満たすことではないでしょうか。自分の欲求が充足すれば、それがモチベーションのベースになります。

こう考えてみてはどうでしょう? たまたま縁があった仕事に情熱を傾けることで、まずスキルアップするのです。そうして最終的に自分が満たされることが大切なのではないかと、私は思います。

やりたいことがなくてもOK

私の研修を受講するのは、大企業の社員の方が多いです。それなりの大学を卒業した優秀な人たちが大企業に就職するためには、ご本人も努力はしたでしょう。私もお金に困ることなく大学に行けて、ある程度大きな会社に入れたのも、家族の支えがあってこそだと思っています。努力できる環境にあったのは恵まれているのだと気づくことも大切です。

「大きな企業の歯車のような感じで、いまの仕事が楽しいとは思えない」という人もいるかもしれません。ですが、大企業であれば知名度と信頼がありますから、会社の名刺でいろいろなことができるのです。このことに気づかないと、もったいないと思うのですよね。

近年はワークライフバランスを大切にする傾向が強まっています。それ自体はまったく問題ないし、私も大切だと思います。仕事は生活の糧として割り切って、仕事での喜びや楽しみを見いだのはやめ、プライベートをより充実させようとする人もいます。しかし、それはちょっともったいない気がするんですよね。

働く喜びがないのに、家族やプライベートだけ充実しているのは、あり得ないのではないかと私は思います。仕事でストレスがあると、家族にもしわ寄せが出てしまうからです。プライベートも充実していて、仕事も楽しいほうがいいと思いませんか?

いわれたことをただこなすだけだと、楽しく仕事できないですよね。仕事を充実させるためには、やはり主体性が大事だと思うのです。

キャリアの考え方には2つのタイプがあります。

1つは、ビジョン型です。「どの山に登ろうか」と未来のビジョンや高い目標を描くことで、モチベーションが上がるタイプです。

もう1つは、価値観型です。自分が大切にしたい価値観や自分軸を尊重することで、モチベーションが上がるタイプになります。

たとえやりたいことが自分でわからないとしても、何を大切にして仕事をしたいか、何に喜びを感じるかは、人それぞれあるでしょう。それを価値観と定義するとしたら、価値観を明確にすることは大切だと思うのです。「価値観から考えるのが大事だよ」と伝えたいですね。

やりたいことがなくても、モチベーションをもって仕事することはできるのです。そのためには、自分の価値観を明確にすることが大切です。

やりたいことがなかった著名人の事例

キャリアについて考えるとき、やりたい仕事とか、就きたいポジションについて考えることが多いでしょう。「やりたいこと」がなかなかわからない気持ちは、よくわかります。いま活躍している人たちも、最初からやりたい仕事や叶えたい夢、目標があったわけではないのです。

ここで秋元康さんの事例を紹介します。

〝高校2年生のときに、たまたま聞いていたラジオ番組に、これなら僕にも書けそうだと思い台本を送ったのがきっかけで、放送作家の仕事をするようになりました。その後、ザ・ベストテンの番組を構成しているときに、洋楽の訳詞などを頼まれていたのですが、日本放送の方に勧められて、作詞の仕事をするようになりました。その後映画を撮ったり、大学で教えたり、いろいろやっていますが、どれも「なりたい」と思って目指したわけではなくて、アルバイトがそのまま、すっと仕事になって今に至りました。僕の場合、人との出会いで歩んできたような気がします。良い意味で流されてきた。自分の人生の流れに忠実だったと思います。〟

『夢さがし―こうして私は自分と出会った』(芸文社刊)より

なんと、あの秋元康さんも「なりたい」と思って目指したのではないと知り、なんだか励まされる気がします。秋元さんはアルバイトからそのまま流れに忠実に生きてきたのですね。

次に、糸井重里さんの事例も紹介します。

著書『はたらきたい。』(東京糸井重里事務所)には、糸井さんが「大切にしてきたもの」についてまとめられています。この本が出版されたあと、ある雑誌のインタビューを読み、糸井さん自身は本当にやりたいことがそれほどなかったと知り、親近感をもったのを覚えています。

糸井さんは、「誰かの役に立ちたい」とか「誰かがこうしたら喜んでくれるだろうな」との思いが仕事の原動力になっていたそうです。どこからか要請があって、それに応えるものがあれば、仕事として成立します。誰かが最初にキックしたボールを受け取り、自分の責任でドリブルして、相手にしっかり返すプロセスのなかで新しいものが生み出されていくのです。受け身のなかから価値を生み出すことを大切にしている姿勢が感じられます。自分が本当にやりたいことやオリジナリティー、主体性といったものに縛られすぎないほうがいいとの考え方が印象的でした。

あの糸井さんも本当にやりたいことというのはなかったのですね。

おふたり人とも最初から目指す山が明確な山登りタイプではなく、変化する状況に臨機応変に対応する波乗りタイプです。人や仕事との出会いという変化に対応しながら、現在のキャリアを築いているわけです。

人生の節目と節目の間には、偶然の出会いや予期せぬ出来事があります。これをチャンスとして受け止めるために、あえて状況に「流されるまま」でいい、といった考え方もあるでしょう。神戸大学名誉教授の金井壽宏さんが提唱する「キャリアドリフトの理論」に沿った事例といえます。

「やりたいことがわからない」とお悩みの価値観型の方には、ぜひ知っておいていただきたい理論です。

偶然からチャンスをつかみ、人生に生かす

「計画された偶発性(プランドハプンスタンス)理論」について紹介します。これはスタンフォード大学のジョン・D・クランボルツ博士が提唱するキャリア理論です。

この理論では、キャリアの8割は偶然の出来事で決まることを前提としています。自ら計画して起こした行動から、自分を成功へと導く偶然のチャンスをつかみ、それをその後の人生に生かすキャリアづくりを提唱している理論です。

秋元康さんにとっては人との出会いが、糸井重里さんにとっては仕事の要請があったことが「計画された偶発性」だったといえます。チャンスをつかみながらやりとりを続けた結果、現在の活躍につながっているわけです。

計画された偶然性理論を効果的に実践するうえで重要とされている5つの姿勢があります。

1 好奇心

自分の専門分野やそもそも関心があることだけに閉じこもらず、自分の知らない分野にまで視野を広げ、さまざまなことに関心をもちましょう。これは新たな分野で知識を学び続けることでもあります。

2 持続性

いろいろなことに首を突っ込むのはいいのですが、すぐに投げ出してしまうと何も残りません。どのような仕事であれ、なんらかの手応えを感じ、向き不向きを判断できるようになるためには、相応の努力、粘りが必要です。最初はうまくいかなくても、めげずに続けてみましょう。一足飛びに結果を出そうとするのではなく、足元をかためながらじっくり取り組むのです。

3 楽観性

たとえば意に沿わぬ異動や転職をネガティブな出来事として悲観的に受け止めるのではなく、自分の知らない世界に飛び込むチャンスだと楽観的に捉えましょう。「人間万事塞翁が馬」とことわざにもあるように、どのような出来事も本人が楽観的に受け止めれば、すべては自分のキャリアや人生にとってプラスに転じることができるのです。

4 柔軟性

必要のないこだわりを捨て、環境の変化にフレキシブルに対応できるよう準備しましょう。「なんでも来い」の気持ちがあれば、軽やかに人生やキャリアを歩んでいけます。

5 リスク・テイキング

予期せぬ出来事、つまり偶発性を求める行動は、世界へ冒険を求めるようなものです。人生、何が起こるかわかりません。さまざまなリスクが潜んでいます。痛い目、つらい目に遭うときもあるでしょう。いばらの道に迷いこむこともあります。しかしながら、そのとき美しい花が咲いているかもしれません。積極的にリスクを取りにいきましょう。


好奇心、持続性、楽観性、柔軟性、リスク・テイキング、といった5つの視点はモチベーションを上げるヒントになります。

このなかで私がとくに大切だと感じているのは「持続性」です。与えられた環境のなかで仕事を続けていれば、少しずつ成果を出すことがあります。それを積み重ねていくうちに熟練されていくのではないでしょうか。

ここで、「フランクル心理学」の考えのポイントもお伝えします。

「どんなときも、人生には意味がある。なすべきこと、満たすべき意味が与えられている。この人生のどこかに、あなたを必要とする『誰か』がいる。そして、その『何か』や『誰か』は、あなたに発見されるのを待っている。私たちは常に『何か』や『誰か』に必要とされ、『待たれている』存在なのだ」

人生にはどのようなときにも意味があると考えると、安藤優子さんの言葉に深みを感じます。

〝私は現在の仕事を天職とは思ったことはありません。人にはそれぞれの能力があると思います。計算が速かったり、写生が上手だったりと、誰でも1つは与えられている。その能力を育て続けることができるか、ということです。やり続ける、継続することがとても大切なことだと思います。手を抜くことだってあっても良いと思いますが、『今日』という日は、もう二度とないわけですよね。だからこそ真剣にそのとき何をやるのかを選びとって欲しいと思います。そのときの自分の全てを隅々まで生きることが、大事なことだと思うんです。〟

『夢さがし―こうして私は自分と出会った』(芸文社刊)より

安藤さんも天職と思う仕事には出合えていないのですね。「今日」という日にできることをコツコツ継続することが大切なのだと実感します。

そもそもモチベーションとは何か?

 「モチベーション」という言葉は日常生活で使われていますよね。

「きょうはどうもモチベーション湧かないわー」

「みんなのおかげで大変なプロジェクトだったけど、高いモチベーションを維持できた」

「筋トレをはじめたんだけど、どうも最近モチベーション下がり気味なんだよね」といった具合です。

仕事だけでなく、プライベートでもその言葉を耳にするようになりました。若い人は「モチベ」と省略することも多いです。

モチベーションは心理学で「動機付け」と訳されています。動機付けとは、「行動を開始し、方向付け、持続させる心理的なプロセス」です。一般的には「やる気」の意味で使われています。皆さまがほしいのは、「仕事に対するやる気を、いかに維持して、高めていくか。下がったときにうまくコントロールしていくためには、どうすればいいか」ですよね。本書でも「やる気」という意味でモチベーションを扱っています。

ここで注意したいのは、テンションとモチベーションを混同しないことです。テンションは一時的な気分や気持ちの抑揚感のことで、中長期的な原動力であるモチベーションとは異なるとビジネス書などでは書かれています。

私はやりませんが、研修やセミナーで「私はできる!」と大声で連呼したり、受講者どうしでハグをしあったりすることで、テンションを上げていくことがあります。著名なビジネス系ユーチューバーの方は、歯みがきをしながら笑顔をつくっていました。こういったこともテンションを上げる方法のひとつになるでしょう。

ただ、何がテンションで、何がモチベーションなのかは、明確に区別しにくいところもあります。本書では、「気分がよくなる」の意味あいでモチベーションという言葉を用いるときは、「テンション」と「モチベーション」をとくに区別していません。モチベーションのベースと行動意欲は区別しています。

私が行う研修では、体感ワークをやってモチベーションのグラフを書いてもらうことがあります。

そのとき、褒められてモチベーションが上がった経験がないかを聞いてみると、「褒められてテンション上がりました」という受講生が結構います。

気分のよさとか高揚感の意味あいでモチベーションを捉えているのです。

気持ちが前向きになるとか、自分の状態がいいと自覚できる状態ですよね。それは一時的な高揚感なのかもしれないし、同時に、仕事に対して中長期的な原動力につながることもあるでしょう。

しかしながら、高揚感があったとしても目の前の仕事に対して意欲的になれるかどうかは別問題です。

パソコンで文字入力するのが得意な人が「ちょっとごめん、この手書きのメモをテキスト入力して、メールで送ってくれる?」と上司にいわれたとしたら、意欲的にこなせるかもしれません。ですが、ブラインドタッチができない人なら、頼まれると億劫になりますよね。

なかには、まわりの人に話しかけづらくて孤独を感じてモチベーションが下がる人もいます。ですが、不慣れな職場で孤独を感じていても、目の前の仕事に意欲がないわけではないケースもあるわけです。一方で、まわりの人と良好な人間関係が築けていたとしても、「作業するのがかったるい」と思うこともあります。

モチベーションとは何か、ひとことで説明するのは難しいとつくづく思います。

世の中で成功者といわれている人や、好きな仕事をやっている人でも、高いモチベーションを維持し続けている人はいないでしょう。

どんなにモチベーションが高く見える人も、ずっとその状態が続くわけではありません。浮き沈みは必ずあるはずです。人間ですから体調も影響しますし、アップダウンがあります。

自分を鼓舞するように大きな声で「俺はできる!」と連呼したり、無理やり笑顔をつくったりした経験がある方もいるかもしれません。このように自分を無理やり駆り立てるのはしんどいのではないかと、私は思うのです。

ここ2~3年は採用面接もオンライン中心で、配属先が決まってもリモートワークというケースも増えています。対面で人と会う機会は増えてきたものの、リモートワークは定着してきたと実感しています。

リモートワークによって、人と会えないことがさみしくてモチベーションが下がる人もいるでしょう。私は自由を大切にしているので、リモートワークは大歓迎です。同じリモートワークという環境でも、どう感じるかは人それぞれです。

希望どおりの配属ではなかったことで、モチベーションが下がった経験をしたことがある方もいらっしゃるでしょう。私も不本意な出向の経験があるので、その気持ちは理解できます。

東京未来大学が社会人3年目を対象に行ったモチベーション調査によると、月ごとにモチベーションが変化することが明らかになっています。

男女ともに1月と4月がピークで、その後はモチベーションが低下する傾向がありました。1月は年が変わること、4月は年度が変わることが高いモチベーションにつながる理由になっています。

8割以上が「上司の資質がモチベーションを左右する」と回答しており、やはり人間関係の影響の大きさを実感します。とくに女性社員は、上司からの「声がけ」がモチベーションアップにつながっている傾向があるようです。

オフィス環境については、男性は「社用デバイスの充実」が30.0パーセント、女性は「デスクチェアの座り心地がよい」が32.7パーセントとの回答が最多でした。仕事する環境も影響あることがわかります。

私のモチベーションの源

ここまで、環境がモチベーションに影響することについてお伝えしてきました。

私の場合、進路を選択する際にも家族やまわりの知人の影響があったと感じています。私が公務員を目指すようになったのも、もともとは家族のアドバイスがきっかけでした。

というのも、母の知人に都庁で働いている方がいたのです。

「都庁は転勤ないし、そこそこ給料もいい。あなた、都庁で仕事したらいいんじゃない」と母にいわれ、「そうかな」と思ったのです。結果、法学部に進学することにしました。

大学1年生のとき、当時つきあっていた彼女にふられました。彼女は上位の成績をとって海外留学したほどの優秀な学生でした。

彼女にふられたことが悔しくて、「いい仕事に就いて、見返してやる!」と考えました。これがモチベーションの源だったのです。これまで都庁希望でしたが、公務員のレベルを上げて官僚になろうと思うようになりました。

大学2年のときから予備校に通い、はやめに準備をスタート。大学3年になってから国家公務員受験サークルに入り、公務員試験対策の勉強も本格化しました。

そのころ同級生は就活をはじめていました。何が自分にあっているのか考えながら、さまざまな選択肢から職業を選ばなければなりません。

大変な思いをして就活している同級生に、「いや、俺は公務員試験受けるから」と話していました。「方向性を決めてしまうことは本当に楽だ」というのが正直な気持ちでした。

私は官僚を目指す明確な動機がないまま、勉強一辺倒の生活をしていました。図書館に通い、閉館まで勉強を続ける日々が続いたのです。

当時は郵政省に行きたいと考えていました。四大省庁は東大か京大で優秀な学生ではないと無理だけど、郵政省なら行けるかなと考えたのです。

親のコネを使って希望している省庁の人事課長補佐と面会したにもかかわらず、内定をとることはできませんでした。2次試験で不合格の結果が出たころには、民間企業の就活は終わっていました。私は親の負担も考えず、1年留年することにしたのです。

大学を卒業した友人たちは金融機関やマスコミに就職して、社会人1年目からバリバリ活躍していました。

プライドが高い私は、「負けたくない」と思っていました。「すごいっていわれたい」「虚栄心を満たしたい」との思いが私のモチベーションの原動力だったのです。官僚という仕事は、それを満たせる選択肢でした。

私は公務員試験をもう一度受けようかとも考えていました。しかし、大学のOBに会って話すうちに、公務員試験の再チャレンジはやめて就職活動しようと思うようになりました。

まわりの友人は都市銀行や商社、広告代理店などに就職したものの、圧倒的に営業職が多かったのです。プライドが高い私は、お客さまにペコペコする営業は嫌だと思っていました。証券会社で働く兄が、いつも大変な思いをしているのを見聞きしていたのも大きかったかもしれません。

自分が仕事できるとは考えていませんでした。父親を見て、仮に仕事ができたとしても、出世できるかどうかはまた別だと思っていました。だから幹部候補という扱いでステップアップできる企業がいいと考えたのです。

実は現役のときにJR東海を受け、結構いい線いっていた感触がありました。大学のOBで私を強く推してくださる方がいたのです。JR東海には東大や京大出身が多いですし、役所っぽいところがあります。虚栄心もプライドも満たせそうな感覚があったので第1志望にしました。

私は留年もしていますし、就活は苦戦しました。第1志望のJRに入れるかどうか不安で、親に泣きながら訴えたこともあります。最終的に内定がとれたのはJR東日本だけでした。

「自分のプライドをいかに満たすか」が私のモチベーションの源でした。大学受験も、公務員試験も、就活も、これを原動力にがんばってこれたのです。

理想と現実のギャップに悩む日々

私はかなりプライドが高い性格です。鉄道会社に入社したからには、将来は本社の組織で会社の経営戦略を練る仕事にかかわりたいと考えていました。しかし、理想と現実は大きくかけ離れていたのです。

入社してからは千葉支社の経理課で実習しました。同期で優秀な人は人事課で実習していたのです。経理で実習することになった自分は、評価されていないと感じました。

そのようななかでも、業務改善レポートにはすごくがんばって取り組みました。「駅の清掃委託業務」というテーマが与えられ、作業スケジュールと実態の乖離について駅に張りついて観察したのです。かなり力を入れて取り組んだにもかかわらず、レポートの提出日に目覚ましをかけずに寝てしまい、遅刻してしまった苦い思い出があります。

半年の実習を経て、西船橋駅に配属されました。まずは現場に配属され、駅員からスタートします。まわりは年上のオジサンばかり。トイレ掃除もしなくてはなりません。作業ダイヤがあり、それにしたがって仕事をしていくわけです。

どこの会社でも、現場の仕事は単純な定型的な仕事の繰り返しです。どうしても指示待ちの受け身の姿勢になってしまい、いわれたことを無難にこなす日々になりがちでしょう。

駅の窓口やホームの清掃、お客さまの案内などの仕事があります。自動券売機の釣銭を抜いてカウントし、新たな釣銭をストックする締切業務を夜中にする必要があり、これがつらかったんですよね。泊まりの勤務もありました。

イキイキ働いている人や、理想と思える先輩が存在しないなかで仕事しながら、「このままでいいのだろうか?」「公務員試験をもう一度受けようかな?」と思うようになりました。入社時のリクルーターやゼミの先生に会いに行っても、これといった答えは得られませんでした。

いまでもよく覚えている出来事があります。入社1年目の大晦日に勤務していたとき、休憩時間中に駅の地下室から電話をかけました。

電話したのは、ベストセラーになった『絶対内定』の著者・杉村太郎さんがつくった就職予備校「我究館」です。就活の際に友人もお世話になっていたのを思い出したのです。電話で相談してみると「じゃあ、一度おいで」といわれました。

年明けに我究館に行き、ワークを通じて自分の過去を振り返ったり、理想を考えたりしました。ワークにどれほど取り組んで考えても、自分が何をやりたいかの答えは出てこなくて悩ましかったです。

私にはすごい挫折経験も、失敗体験もありません。「自分は本当に大した経験してないな」と痛感し、「我究館でもダメだったか」とガッカリした気持ちになりました。

「どうしたら悔いのない人生が送れるのか」「なぜ自分は全力投球できないのか」

いまだに続いている悩みでもあります。

学生時代の友人たちは、マスコミや金融機関などの一流企業に就職して、入社1年目からバリバリ仕事していました。なかにはテレビ局でアナウンサーとして活躍している人もいたのです。こうした友人たちの仕事ぶりを尻目に、自分だけが取り残されているような気持ちになりました。

やりたいことはわからなくても、主体的な選択は可能

入社してから気づいたのですが、JR東日本では大卒でも幹部候補というわけではありません。昇格試験も高卒の社員と一緒に受けるのです。学歴によって優遇される組織ではなかったのです。

「このままじゃいけないな」と思い、業務改善をやっていこうと考えるようになりました。

みどりの窓口で仕事していたとき、「釣銭トレーがつかみにくい」と感じていました。

「これはお客さまもつかみにくいだろうな」と思い、東急ハンズで使いやすそうなデザインの釣銭トレーを見つけて買い替えたこともありました。

定期券や指定券の申込用紙が正しく書けていないケースもよくあります。これでは書き直すたびにお客さまをお待たせすることになりますし、駅員の負担もかかります。そこで、定期券や指定券の申込用紙の書き方の見本を記入する台に置く工夫もしました。

定期券の申し込みは年度の変わり目に集中します。駅員としても大変ですが、お客さまも行列待ちで時間がかかってしまいます。

当時はインターネットで申し込みができませんでしたが、自動継続定期発行機がありました。学割は対象外ですが、通勤定期なら発行できます。ただ、その機械の存在が知られておらず、お客さまは窓口に並ぶ状態が続いていました。

そこで、発泡スチロールを使って案内板をつくりました。奥まった位置にある機械は、通路からは見えにくいです。せり出すかたちの案内板によって自動継続定期発行機の存在に気づいてもらい、利用を促進したこともありました。

当時はポケット時刻表というのがあり、みんな手帳や財布に入れて電車の時刻を確認していました。ダイヤ改正時には「新しい時刻表がほしい」と窓口に来たお客さまに、その都度対応する必要があります。ほかのお客さまの対応中は、新しい時刻表がほしいお客さまをお待たせしてしまうことも多々ありました。

そこで、プラスチックのトレーを駅のガラス窓に取り付けたのです。「ポケット時刻表はこちらです」とセルフサービスで取れるようにしました。このようにして、お客さまや駅員の負担を減らすことができたのです。

入社2年目には、車内放送の改善を提案しました。当時、浅草橋駅の駅長とは仲がよく、というのも、私が勤務していた西船橋駅で副駅長だった方が浅草橋駅の駅長になっていたからです。

あるとき、浅草橋駅の駅長と話をする機会がありました。

「都営浅草線と浅草橋駅はどっちですか」と尋ねられることが結構多いとのことでした。私はこれを車内放送で改善できないかと考えたのです。

都営浅草線が進行方向から見てうしろ寄りにあるのならば、「次は浅草橋です。都営浅草線は、うしろ寄りの階段をご利用ください」と案内をしたほうがいいと考えました。そうして、これをテーマに業務改善レポートを書こうと思いついたのです。

車内放送を改善したことで、実際に迷うお客さまがどれくらい減るかを検証し、効果を確認しました。私は津田沼車掌区と習志野運輸区、新宿運輸区に乗務。それぞれの職場に出向き、改良した車内放送で2週間案内してもらうようにお願いしました。

その結果、迷うお客さまが7割くらい減少したのです。この業務改善を通じて、満員電車に乗っている千人くらいのお客さまに対して影響を与えられることに、やりがいを感じるようになりました。

こうした業務改善に一生懸命取り組むようになってから、次第に仕事が楽しくなっていきました。お客さまに喜んでもらえるようになるとうれしいですし、これがモチベーションにまたつながっていったのです。

やりたいことがわからなくても、どうやったら目の前の仕事を楽しくできるか、考え方を工夫することはできます。どうすればこの仕事をよりよくできるのか、といった業務改善など自分なりの付加価値をつけることはできると思うのです。

いまの仕事が嫌だとか、自分のやりたいことがわからないという方は、結構いらっしゃるかもしれません。私自身ずっとやりたいことが見いだせずにいました。いまも仕事しながら「本当にやりたい仕事かどうかはわからない」と感じています。

それでも自分の考え方次第、行動次第で、楽しく仕事はできると思うのです。楽しくなってくると一生懸命に取り組みますから、結果的に成果も出しやすくなります。結果が出ればまた楽しくなり、好循環になります。

モチベーションが高まるよう、自分にとって都合のいい意味付けを見いだすことも可能です。これは自分でコントロールできますよね。よって、自分がやりたいかどうかは別として、自らコントロールできることを選択するのが大事だと思うのです。

自分の考え方や態度を自らコントロールしている感覚をもっているのが主体的だと私は考えています。これがうまくいくかどうかは別として、主体的に考える視点があれば、受け身的にやらされている感覚には少なくともならないはずです。

自分の人生の主導権は自分で握ることが大切だと、私は考えています。

環境に左右されるモチベーション

そうはいっても、仕事内容や環境によってモチベーションが左右されることもあります。

私は入社してから2年間は現場に配属され、車掌業務を経験しました。それから駅などの現場を管理・サポートする部署に配属される予定でした。デスクワークをしている先輩たちの仕事ぶりを見たときには、とても楽しそうとは思えなかったのです。

「自分には本当に鉄道の仕事があっているのかな」「何か違うな」と思い、関連事業に異動したいと考えるようになりました。

そして不動産鑑定士養成研修に参加したあと、不動産鑑定の仕事を担当することになりました。

不動産鑑定士試験に合格しても、すぐに不動産鑑定士にはなれません。まず2年くらい実務経験を積んでから不動産鑑定士補になります。さらに実務経験を積み、知識を深めてから不動産鑑定士になれるのです。覚えることが本当に多い仕事でした。

不動産の価格が決まるまでには、かなり時間がかかります。忙しい時期は終電帰りの日々が続きました。細かい作業や数字を扱う仕事が苦手だった私は、モチベーションが落ちてきたのです。

市場価値を高めたいと考え、関連事業に異動したいと思い、不動産鑑定士の資格を取得しました。しかし資格取得後、「こうなりたい」とイメージをもてなかったのです。

「なんか違うな」と思い、方向転換を考えるようになりました。

不平不満をいいながら生きる人生は、主体的ではないと思います。他人に強いられているのも主体的ではありません。「あいつのせいで」と思っている時点で、主導権を相手に渡してしまっていることになります。

自分の人生の主人公は、あくまでも自分です。自分の人生、キャリアの主人公が自分だ、という感覚があればモチベーションを生むことにつながります。逆に、被害者的な生き方をしている感覚があると下がってしまいます。

いまの仕事にモチベーションをもって取り組めていないのであれば、別の部署に異動する選択肢もあるのです。

上司から「お前は仕事を選り好みしている」といわれたこともあります。かといって、上司が私の人生の責任をとってくれるわけではありません。私は、自分の人生は自分で責任とって決めてきたと自負しています。

不動産鑑定の部署の隣には、新規事業の部署がありました。「隣の芝は青く見える」といいますが、私には新規事業の部署の仕事がとても楽しそうに見えたのです。電話の相手は大手商社やメーカーばかりで、華やかなイメージがありました。そうして新規事業の仕事に興味をもつようになったのです。

そのころ社内で若手中心のプロジェクトが立ち上がり、評価されると事業化する仕組みがありました。列車内の新規事業に提案するプロジェクトに参加しました。

当時は2階建てのグリーン車がありましたが、利用率が低かったのです。そこで、2階建てのグリーン車でクイックマッサージ事業をやるプロジェクトをチームで提案したところ、事業化されました。

こうした経験を経て、「新規事業っておもしろいな」「なんかやってみたいな」と思うようになったのです。社内ベンチャー制度を使い、新規事業の部署に異動することになりました。

無線LANのアンテナを駅構内に取り付ける実験サービスを担当したときは結構メディアに紹介され、私も取材を受けたことがあります。このころは新規事業の部署でいくつかのITビジネスを手掛け、同期の誰よりも楽しい仕事をしている、という自負心がありました。

そんな折に突然、グループ会社に出向の内示が出たのです。「なぜ自分が行かなくてはいけないんだ」と上司に詰め寄ったこともありました。

そうしてJR東日本のショッピングサイトの仕事をすることになったのです。

楽天やAmazonといったショッピングサイトがあるなかで、「こんなサイト、誰が利用するのか」と正直いって思っていました。出向してこの事業を担当することになったときは、不本意な気持ちでいっぱいでした。

大きな会社では異動もあります。新しい部署では、仕事内容も、メンバーも、ガラッと変わりますよね。これまでと違う部署に配属されることで、モチベーションが上がることもあれば、下がることもあります。やはり職場環境に左右される面は大きいです。

自分でコントロールできるモチベーションとは?

本書を読んでいるあなたは、いまなんとなくモチベーションが下がっている状態なのでしょうか。あるいは、モチベーションを高めて仕事に取り組みたいと考えているのかもしれませんね。本書を効果的に活用するために、以下について考えてみましょう。

どんなモチベーションを高めたいでしょうか?

たとえば、「苦手としている企画書づくり」「営業としての顧客訪問」「新たに任命されたプロジェクトリーダーとしての仕事」のほか、「仕事全般」でもかまいません。

モチベーションを高めることは、あくまでも手段です。その先に得たいことがなければ、単なるモチベーションの学習に終わってしまいます。

ビジネスのプロフェッショナルとして、モチベーションを高めることを通じて何を実現したいのか、まずは考えましょう。

私が実施するモチベーションをテーマにした研修では、受講者自身で、どのようなときにモチベーションが上がるか、下がるかを考えてきてもらうことがあります。

読者の皆さまも、2~3分でいいので少し考えてもらえますか?

さまざまな会社や業種、年次によって多少の差はありますが、よく出るものをピックアップしました。

●モチベーションが上がるとき

褒められるとき
感謝されるとき
仕事を任せられるとき
仕事が順調なとき
成長を感じられるとき
人間関係が良好なとき
新しいことを学べるとき

●モチベーションが下がるとき

成長が感じられないとき
ミスをしたとき
やらなければならない仕事がたくさんあるとき
作業内容が不明確な依頼のとき
トラブルが起こったとき
こちらからの依頼に対して嫌な顔をされたとき
チームでの仕事に偏りがあると感じたとき

あなたが考えたものと重なる部分があるのではないでしょうか。

出された内容は次の2つに分けられます。

①仕事に取り組む前や途中に感じるモチベーション
②仕事に取り組んだあと、もしくは、仕事に関係なく職場環境や対人関係において感じるモチベーション

①は、成長が期待できる、自分の知識が増える、まかされる、といったものが該当します。

②は、褒められたから、感謝された、職場の人間関係が良好、というものが該当します。

両者は明確に区分できるわけではありません。また、褒められればよりその仕事をがんばろうと思う、といったように、②を感じれば①に影響を与える関係でもあります。

モチベーションの上がり下がりは、さらに2つにも分けられます。

①自分で直接コントロールできるもの
②自分では直接コントロールできないもの

①は、スケジュールどおりに仕事が進められた、成長が感じられた、など自分次第でコントロールしやすいものです。

②は、評価される、仕事をまかされる、人間関係が良好、など自分がどんなに努力しても相手次第、環境次第だったりするものがあります。

自分がコントロールできないことにとらわれていれば、エネルギーや時間を浪費するばかりで、モチベーションが上がらないどころか、ストレスが貯まる一方でしょう。自分にとってコントロールできないことに依存せずに、コントロールできることに注力することがモチベーションにとっては大切といえます。

価値観とワークライフバランス

従来の研修では、「ありたい姿を描きましょう」「目標を具体的にしましょう」とよくいわれます。理想や目標、ビジョンやミッションは描けるに越したことはありません。それを具体化することで動機付けられる人もいるかもしれませんが、そうでない人のほうが多いかもしれません。

いまの世の中では若手社員だけでなく、転職しようかどうか悩む中堅社員、定年間近でセカンドキャリアを考える管理職からも「やりたいことがわからない」と声を聞くことは多いです。

昨今の若手社員は、あわない上司がいると「しょうがない」と考える傾向があります。上司に対して要望を伝えることをせず、あきらめている感じがします。

中堅社員の場合も、組織のなかでそこそこがんばってはいきたい、という気持ちはあるものの、「そんなにがむしゃらになりたくない」と考えているところがあるでしょう。なぜかというと、出世して偉くなってプライベートを犠牲にするほどまで疲弊するのはよくないと考えているからです。

子どもが生まれて育児にかかわったり、介護の問題に直面したりすると、ワークライフバランスを大切にする傾向はたしかに強まります。それ自体は問題ないですし、いいことでしょう。

そのようななかで、仕事は生活の糧として割り切っているビジネスパーソンが多い印象があります。仕事での喜びとか楽しみを見いだすのではなく、プライベートをより充実させよう、といった感じなのですよね。仕事もがんばるけどプライベートも充実させる、というのが本来のワークライフバランスだと思うのです。

個人的にはちょっともったいない感じがしています。

「やりたいことはわからない」という人は多いけど、何を大切に仕事していきたい、何に喜びを感じる、というのは人それぞれあるのではないでしょうか。

受け身でいるのではなく、何かチャレンジするとか、一歩踏み出すことは大事だと思うのです。いわれたことをただやるのではなく、自分の考えを組織のなかでかたちにしていくとか、自分から仕掛けていくことで、仕事っておもしろくなると思うんですよね。私が小さな業務改善からスタートして仕事が楽しくなったように。

ひとつのアプローチとして、自分の価値観を考える、ということがあります。やりたいことがわからなかったとしても、価値観はもっていてほしいと思います。

価値観とは、自分にとっての幸せとは何か、ということです。自分が充足する、充実感を味わうもとになるものは何で、それを満たす生き方が大事だと思います。価値観に沿った生き方をすることで、それが実現できるのではないでしょうか。

「やりたい仕事は何か」を考える機会があっても、自分の価値観について考え、言語化する機会はあまりないと思います。

私自身は、さまざまな学びのなかで、「家族も大切だけど、自由であることを大事にしている」と気づきました。自立や自己決定することを重視する価値観をもっていることに気づいたのです。そうして最終的には研修講師の仕事をするようになりました。

自由を大切にしている価値観をもっていると自覚していたら、官僚を目指したり、JRに就職したりはしないですよね。独立につながるような会社や業種を選んでいれば、イキイキ仕事ができたかもしれません。もっとはやくこのことを知りたかったと本当に思います。

そのため、私の研修では自分の価値観について知るワークを取り入れています。

これまで1万人以上の方を対象に、モチベーション研修を行い、心理学的な考え方をお伝えしてきました。おかげさまで8割以上の方に満足いただき、社員の皆さまのモチベーションアップにつながっているとのうれしいお声をいただいています。

私は、ビジョンではなく価値観を明確にすることによって充実した生き方ができるのではないかと、考えています。

モチベーションを考える3つのアプローチ

モチベーションはビジネスだけでなく、スポーツや勉強でも大切な要素です。それぞれに携わる人の興味関心も高いことから、いろいろな考え方が出まわっています。ただ、モチベーションは主観的な側面が強く、何をもってやる気が湧くかどうかは個人差があるのです。

私の大学の友人の菊間千乃さんは、元フジテレビアナウンサーで現在弁護士として活動している、ものすごいキャリアをもっています。彼女は、無理だろうと思えるような高い目標をもつことで、俄然モチベーションが高まるタイプです。

一方で、私は高い目標はむしろ自分がつらくなるばかりで、ほどほどの目標を確実に達成していくことでモチベーションを維持して高めるタイプです。

本書では、モチベーションにおいて定評のある理論をベースに、私やほかの方の事例を紹介しています。モチベーションは個人差があり、主観的なものです。こうしたことを踏まえて、最終的にご自身のモチベーション理論をつくっていただきたいと考えています。

ここではモチベーションを高めるための3つのアプローチを紹介します。3つはいずれも私が実際に数多くの研修で受講者の方に紹介し、とても使い勝手のよいものとして評価を得たものです。

①モチベーションのベース:基本的欲求
②モチベーションの方程式:期待×価値理論
③モチベーションを高める考え方:主体性

①の基本的欲求は、心理学者グラッサーが提唱した「選択理論」という心理学の中心概念です。

欲求というと「マズローの欲求階層説」が有名ですが、それとは異なるものになります。

モチベーションを欲求で説明する方法は一般的ですが、そのなかでも私がオススメしたいのが基本的欲求です。

仕事に取り組んだあと、もしくは、職場環境や対人関係において感じるモチベーションになります。

また、個別具体的な仕事というよりは、仕事全般でモチベーションを感じたいときに必要なものです。第2章で触れていきます。

②の期待×価値理論は、心理学者アトキンソンが提唱した理論です。

「期待」とは、自分にはそれができそうだ、という見込みのことで、簡単にいうと自信になります。

「価値」とは、それに成功した結果や得るものの主観的価値です。

この方程式は個別具体的な仕事や役割を果たすうえで、仕事に取り組む前に必要なモチベーションです。第3章で触れていきます。

最後に主体性です。主体性は、自己啓発書として世界で一番売れた書籍であるフランクリン・コビー『7つの習慣』(FCEパブリッシング)の第一の習慣に位置付けられているものです。

モチベーションの理論というわけではありませんが、世の中でモチベーションが高く活躍しているビジネスパーソンがもっている考え方だと私は認識しています。仕事全般でモチベーションを感じたいときに必要な考え方です。第4章で触れていきます。

なお、第5章ではこれら以外にモチベーションを高めるうえで使い勝手のよい工夫についてまとめました。

私はこの本を通じて、モチベーションに関するさまざまな考え方を提示しています。いろいろな角度からモチベーションを見ることによって、別のものに気づくことがあるでしょう。そのなかからご自身の状況にあったセルフモチベーションアップ法を使っていただければと思います。

モチベーションにもいろいろな考え方があることを知り、あなたにあった方法を工夫することで楽な気持ちになっていただければ幸いです。

*   *   *

第1章はここまで!
続きを読みたい方は、各電子ストアにて6月27日より随時発売になります。ぜひお買い求めください。
下記リンクはAmazonストアでの商品ページになります。書籍の詳細と目次もこちらからご覧になれます。
書籍『やりたいことがわからない人でも 「やる気」がでる仕事術 モチベーションが上がる3つのアプローチ』

■ペーパーバック版(紙)

■Kindle版(電子書籍)

■書籍情報

やりたいことがわからない人でも、
仕事のモチベーションを高められる


これまで職場の同僚や、友人や家族から、次のようなことをいわれたことはないでしょうか。
「自分はできる!と 信じることが大事」
「誰でもアップダウンはあるよ」と。

「私はできる!」と研修やセミナーなどで連呼した経験がある方もいらっしゃるでしょう。

ですが、一時的にハイテンションになるだけで、研修が終わったらまたもとの状態に戻ってしまい、モチベーションが上がらない………ということはないでしょうか。

それもそのはず、一時的に気分が高揚することとモチベーションは区別して考える必要があるからです。

無理にポジティブになろうとして振る舞っても、反動で落ち込んでしまうことがあります。そうなると「やっぱり自分はダメだ」と思ってしまい、さらにモチベーションが下がる、という悪循環に陥ります。

本書にある「モチベーションを高めるアプローチ」は、「無理してポジティブになる」方向性とはまったく逆なのです。

やりたいことがわからない人でも、自分の欲求を満たすことで、モチベーションのベースをつくれます。

さらに、自分の人生は自分が主導権を握ると主体的な意識をもつことで、楽しさを感じられるようにもなるのです。

実は、ずっとやりたいことがわからず悩みつつけてきました私自身が、会社員時代に知りたかった知識やノウハウをギューッと濃縮した実用書です。

読者の皆さまが、自分の価値観にあった欲求の満たし方を知り、モチベーションを高めて仕事ができるようになっていただければ幸いです。

【目次】

第1章 やりたいことがなくても、モチベーションアップは可能!
第2章 基本的欲求とモチベーション
第3章 期待×価値理論とモチベーション
第4章 主体性とモチベーション
第5章 モチベーションを上げる習慣

■著者プロフィール

松島高弘

早稲田大学法学部卒業。東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)入社。社内ベンチャー優秀賞受賞により、ITビジネス担当に抜擢。自身の企画実現のチャンスを得るが、一人で抱え込み、挫折を味わう。「本当に自分のやりたいことは何だろうか」という悩みからコーチングと出合ったことがきっかけとなり、2007年に独立。自らの反省から「他者や環境が変わることを期待するのではなく、自らが変わるマインドと行動を組織にもたらす」ことを使命に、講師、コンサルタント、コーチ、カウンセラーとして活動開始。17年間に渡り1万人以上の若手社員を対象に、モチベーション研修にて登壇し、満足度90%以上。心理学、EQの知見から、職場での確実な行動変容に結びつけるアプローチに定評がある。

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