見出し画像

『ビジネスに活かすインスピレーションの技法 感覚を研ぎすます9つの方法』第一章・無料全文公開

発売日目前、特別企画!!
書籍『ビジネスに活かすインスピレーションの技法 感覚を研ぎすます9つの方法』より、第一章「なぜ今、インスピレーションが必要なのか」を全文公開しちゃいます!

時代に応じた最新版ビジネスパーソン像とは

■生産性の高いビジネスパーソン

「あなたにとって仕事ができる理想のビジネスパーソンは、どんな人ですか?」と質問されたとき、どのようなイメージ像をもつでしょうか。社会人歴や業界、業種によって理想のイメージ像は違うかとは思いますが、その中のひとつに「生産性の高い人」があるはずです。
 
仕事の優先順位の設定が上手で無駄がない人、仕事をこなすスピードが速い人、必ず定時で仕事を終えられる人といった時間単位の達成度が高い人です。特に新入社員として仕事をはじめたばかりの人にとっては、わかりやすく仕事のできる人だとイメージしやすい理想像かもしれません。
 
私も、社会人として最初に抱いた理想像が「生産性の高い人」です。私は新入社員で大手居酒屋チェーン店を展開するワタミフードサービス株式会社に入社し、居酒屋の店舗で勤務をしていました。オーダー受注から調理、提供までスピードが速いことが顧客満足につながる職種です。そのため作業スピードが速い人が、そのまま仕事のできる人というイメージにつながっていきました。
 
しかし、その後転職をし、業界と業種を変えてはたらくうちに、生産性の高さだけでは通用しないことを実感します。それは、生産性の高い人になるためのプロセスと環境変化によるものでした。
 
生産性が高い人になるためにはまず、その業界でのルールや仕組みを熟知する必要があります。その後、PDCAサイクルを何度も回し技術の習熟度をあげ、発揮できるパフォーマンスを最大限にするため、繰り返し作業を行ないます。そこで求められるものは、真面目な性格で、実直や勤勉さというものでしょう。
 
ただ、このビジネスパーソンが活躍できるフィールドというのは、既存のマーケットにおいて、また変わらない職場環境においてです。新しいフィールドで、新しい顧客を探し、新しいサービスを開発していく環境になると、求められるスキルが変わってきます。
答えがある中でいかに生産性をあげるか、という「勤勉さ」が基礎スキルとなる環境と、現代社会のように答えがない前提の中で動かなければならない場合、単なる「勤勉さ」はともすると「惰性」になるかもしれません。

■知的で戦略的なビジネスパーソン

他にも、理想のビジネスパーソン像と聞かれると、「知的で戦略的な人」をイメージするのではないでしょうか。情報収集は欠かさず、業界の動きやテクノロジーの知識が豊富で、マネジメントや経営戦略を学ぶ人。そういう人はどことなく知性がにじみ出ていて、できるビジネスパーソンを想起させるものです。
 
私は7年間居酒屋ではたらき、その後は人材領域の仕事に就きました。大学生の就職支援の仕事です。ここでは、学生や人事担当者、大学の就職担当者への架電業務、担当企業と大学キャリアセンターへの営業訪問、就活イベントの企画・運営、販促告知物の作成など、小さい会社のためいろいろな業務を担っていました。
居酒屋勤務から業界も職種も変わったので、最初は仕事を覚えるのに苦労しました。仕事をするうえで発揮すべきスキルが、まるで違うのです。店舗内で顧客を待つビジネスモデルと、自ら顧客を獲得しに外に出るビジネスモデルでは、根本的な考え方が違いました。
しみじみと知識や知見が足りないことを感じたため、営業に必要な勉強に取り組むことに。いろいろな本を読み、セミナーに行って勉強し、ロジカルシンキングやマーケティング戦略、フレームワークやロジックツリーなどを学びつつ仕事に取り組みました。
 
同時に私は、社内の若手社員の育成も担当していたため、私が学んだ経験から一緒に自己研鑽することを提案しました。ただ、能力開発も含めて新しい企画案を作ろうと提案しても、若手社員は積極的にのってこないという現状があったのです。「どうせ現場がいっても社長は変わらない」や「数字や根拠を求められると説明ができない」など。他にも「ルールに従って成果を出すことは頑張れるが、0から何かを作るのは苦手である」や「そもそも新しい商品やサービスを考えようという雰囲気が職場にはない」などなど。
 
よくよく話を聞いていくと、みな知的で戦略的なビジネスパーソンに憧れはあるものの、自分がそうなるために努力することは別であるようでした。それは「勉強が得意ではない」という理由もあれば、「お金を費やしてまで学ぼうとは思わない」「会社の経営層が戦略や戦術を考えればいい」といった意見も。当時の会社の風土や制度からして、その考え方はわからないでもない部分が多く、これ以上深く関わることはできませんでした。

■インスピレーションを活かすビジネスパーソン

その後、個人の能力開発を支援するキャリアコンサルタントの国家資格を取り、また家業である宗教家となった今では、私が思い描く理想のビジネスパーソン像は異なります。そもそも目指すビジネスパーソン像は、一人ひとり違うはずです。決められた理想の姿が一義的にあるのではなく、自らのタイプや強み、得意分野によって無数にあるべきです。
 
2030年に必要とされるスキルに関する論文、「スキルの未来」では上位10位に次のスキルが発表されました。上位から順番に、「戦略的学習力、心理学、指導力、社会的洞察力、社会学・人類学、教育学、協調性、独創性、発想の豊かさ、アクティブラーニング」です。単純な作業に関するスキルは必要なくなり、「学び」や「人間の感情」そして「創造性」に関するスキルが求められています。
こうしたスキルは学校で教わって学ぶというより、「生まれもった人間力」を、仕事を通して育てるものといえるでしょう。「生まれもった人間力」に目覚めるヒントが「インスピレーション」にあります。自分の頭にふっと浮かぶ言葉やイメージといったインスピレーション。今までのビジネス常識ではあまり重要視されていなかったものですが、時代の変化が早く、AIの進歩が著しい今の時代には必要不可欠なものになっていくのです。
 
それぞれの業界や職種で、会社の風土や特徴に応じて、自らのインスピレーションを活用しながら会社に貢献する働き方こそが、今の時代の理想のビジネスパーソンといえるでしょう。

不確実な人生には論理力よりインスピレーション

■論理的思考の限界

ビジネスをするうえで、「論理的思考」が必要であることは、誰も否定しないでしょう。さまざまな価値観をもつ人が集まって組織として活動していくためには、納得できる理由が必要です。顧客に商品の価値を説明する際には、論理的な思考を元にしたコミュニケーションがわかりやすいでしょう。
そして論理的であるか否かの判断は、その結論の根拠が明確なことです。さらに、数字や過去の成功事例などがあると根拠に説得力が高まります。そのため、論理的であることは、ビジネスをするうえで日常的に求められています。
 
しかし、今という現代社会は変化が著しく、先行きが不透明で将来の予測が困難です。「VUCA」の時代(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性、の4つの単語の頭文字を並べたもの)と称されるように、変動性は高く、不確実で複雑、かつ曖昧である社会情勢は、そのままビジネスにおいても同様でしょう。
 
そのような状況において、「論理的であること」に固執し続けることは意志決定が遅れるということであり、意志決定が遅れるということはビジネスチャンスを逸することに通じてしまいます。時流にのったニーズに対応できないことは、企業の存続に直結します。
売上が見通せるだけの数値的根拠が提示できず、過去の事例が通用しにくい現代においては、方法論としての論理的思考には限界がきてしまっているのです。

■データ至上主義は考える力を弱くする

近年、さまざまなビジネスにおいて、「データ」の果たす役割は大きくなっています。どの企業も個人情報を収集するために、さまざまな手段を講じていて、データを入手して分析が進むと、個々人のニーズや特性に応じた角度の高いリコメンドが可能となり、購買意欲を高めて売上の確保につながるのです。
 
データは利用のしかたで大きな力となる一方、データありきで方向性が決まっていく傾向も強くなっています。データありきになってしまうことの何が弊害かというと、「人間の考える力を弱くする」ことです。データや前例に頼りすぎると、自分の力でひらめこうとしなくなります。
考えることは、想像するということでもあります。商品を購入する顧客のおかれている立場を考慮し、秘めた願望を探り、喜びを感じるポイントを押さえることです。そうした人間が人間相手の感情を読み取って形にするサービスだからこそ、購入につながるのではないでしょうか。
 
『ビジネススキル・イノベーション 「時間×思考×直感」67のパワフルな技術』(プレジデント社)の著者、横田尚哉氏はこう語っています。
「データが充分でないときにこそ頼れるのは自分の感性です。感性を磨くためには、データがあろうとなかろうと、まず感性ありきで物事を判断することが大切です。あくまでもデータは感性を刺激し、修正する手段にすぎない。経営の上流にいくほど、データではなく自分の感性で判断する意識が求められます」と。
 
データにとらわれるのではなく、インスピレーションを元にデータを活用して、ビジネスを展開する気概を忘れてはいけません。

■シンプルなものが一番強い

 結局のところ、シンプルな思考による決断こそが一番強いのです。論理的に正しくあらねばならないという前提が頭の中にあると、どうしても難しく考えすぎてしまうもの。考えすぎてしまうと物事を不必要に複雑にしてしまう傾向があり、さらにそれをこじらせてしまうと、難しく考えることが価値のあることだと思い込んでしまいます。
 
「KISSの法則」をご存知でしょうか。「Keep it short and simple」の略で、「常に短くシンプルにしておけ」という意味です。人は本来シンプルなものを望んでいます。プレゼンテーションにおいても、長い文章を書き連ねるより、単純化して短い言葉でアイデアを伝えるほうが、アイデアの魅力を際立たせ、聴衆の記憶に深く残るといわれていることからもわかるでしょう。
また経営者の稲盛和夫氏は「バカな奴は、単純なことを複雑に考える。普通の奴は、複雑なことを複雑に考える。賢い奴は、複雑なことを単純に考える」と語っています。
 
複雑な現代社会について論理的に考えすぎると複雑になっていくのは当然です。そんな状況をシンプルに考えることが必要です。ただシンプルに考えることは、一定の「勇気」や「エネルギー」が必要になります。その状況を打破するために「インスピレーション」を活用しましょう。論理的に導き出せないなら、これまで培った経験と知見で判断するしかありません。単なる感覚ではなく、知性と経験に基づいたインスピレーションでシンプルに決断するのです。

会社で成果を出し続けるために必要なもの

■個が認められる時代

これまでの社会人のキャリアは会社主体によるものでした。会社主導の配置転換や昇格によって個人のキャリアが形成されるのです。しかし、終身雇用制度が崩れ、会社の体力が落ち、人を抱え育て続けることができなくなりました。また物質的に満たされ精神的な豊かさを求める時代へと変化し、価値観も多様化したことで、個人の欲求にフォーカスが当たったキャリア形成の流れが生まれつつあります。
 
全国のビジネスパーソンと人材関係企業をつなぐネットワークを形成する「日本の人事部」が主催する、「HRアワード」という表彰制度があります。これは、人・組織に関わる領域において、企業や個人の成長を促す取り組みに着目し、HR(Human Resources。つまり人材のこと)を通じた全国の企業の発展を目指しているものです。このHRアワードで優秀賞を受賞する企業では、ある共通したキーワードに注目した取り組みを行なっています。それが、「個を見る」ことです。
 
HRアワード2020企業人事部門最優秀賞を受賞したカゴメ株式会社の人事担当者は、こう語っています。
「柔軟に選択できる働き方のオプションを増やすこと。そして、一人ひとりが自分のキャリアを自分で決められるようにすることです。自律的なキャリア形成は、個人のマーケットバリューの向上につながります」と。
 
ライオン株式会社の人事担当者は、「変革を起こすために必要なのは、『自律した個』の存在です。一人ひとりの従業員が互いに刺激しあい、主体性のある個人が躍動することで、組織全体の活性化につながると考えています」と述べています。
 
つまり、会社ではたらく個人一人ひとりが自身の将来のキャリアを考え、仕事を通して成長し、その結果として会社の繁栄に貢献するという流れになりつつあるのです。今はまだ特定の大企業が中心となった取り組みですが、「自立した個」を尊重し、確保する流れは、これから主流になっていくでしょう。
ここで重要になるのが、はたらく個々人の仕事に対するモチベーションです。会社任せの働き方ではなく、主体的に考えながら強みを発揮し、成果を出していく意欲が必要です。こうした意欲を「内発的動機づけ」といいます。
内発的動機づけとは、「自分自身に内在する関心や興味からやる気が生まれること」です。内発的動機づけが促されると、高い集中力が発揮され、質の高い行動を主体的に、また積極的に起こせるようになります。内発的動機づけによってはたらく会社の従業員の人々は、モチベーションが高く仕事に取り組み、またクリエイティビティが高いとされています。
そうした内発的動機づけを起こすための、内在のやる気を生み出す元になるのがインスピレーションなのです。

■AIに負けない人間の力

 近年AI(人工知能)の台頭は目覚ましく、AIを導入する企業が増えています。2045年には「シンギュラリティ(技術的特異点)」が到来し、AIが人間の能力を超え、その影響で社会や人々の生活に決定的な変化が起こると考えられています。
大量のデータを処理するスピードを比較した場合、人間とAIではスピードや正確さで勝負になりません。またプログラム通りのルールに沿った作業、共通点を見つける作業、画像処理や画像認識などAIにできることは増えています。その結果、人間の「仕事がなくなる」というデータもあります。
 
会社で成果を出し、必要とされるビジネスパーソンになるためには、何が必要なのでしょうか。それは人間にしかできない仕事をすることです。具体的には、人体に関わる医療系の仕事やホスピタリティ性の高い仕事、高度な接客を必要とする仕事、さらに芸術分野などクリエイティブな仕事は、AIに取って代わられにくいと考えられています。
 
また新しいことを生み出す力は人間にしかできない仕事です。カールワイツは著書『シンギュラリティは近い 人類が生命を超越するとき』(NHK出版)の中で、人間の脳にはあちこちの場所が同時発火する「超並列型処理」という特徴があり、最大100兆回の計算を一瞬で行なうこのメカニズムによって、人間の脳内では「予期せぬつながり」が生まれると述べています。そのはたらきを生み出す根源となるのがインスピレーションといえるでしょう。

■足し算思考ではなくかけ算思考の仕事術

真面目にコツコツと目の前にある仕事を自分にできる範囲でこなしていくこと。時間をかけて一歩一歩前に進んで成長していくスタイル。これは仕事をするうえでの、ひとつの王道スタイルであり、誰にも平等にできることです。1+1を少しずつ積み重ねていく、いわば「足し算思考の仕事術」。「石の上にも3年」ということわざもあるとおり、3年もあれば一人前になっていることを言いあらわしたものでしょう。
 
その働き方を否定する気は、まったくありません。特に学生から社会人になったばかりの若手社会人には、基本的な考え方として教えたいものです。しかし時代が変わり、テクノロジーが進歩し、そうした「足し算思考な働き方」だけでは通用しなくなる時代が近づいています。
 
「ムーンショット(Moonshot)」という言葉があります。これは、「とても困難だが、実現したら非常にインパクトがあるスケールの大きな目標や挑戦」をさす言葉です。アメリカ合衆国大統領のJ・F・ケネディ氏が当時困難だと思われていた人類の月面着陸の挑戦を目標に掲げ、見事実行したことに端を発しています。
 
日本の内閣府も「ムーンショット型研究開発制度」として、イノベーションの創出を目指し、従来技術の延長にない、より大胆な発想に基づく挑戦的な研究開発を推進する大型研究プログラムを発表しています。国が総力をあげて取り組んでいるとおり、これからの時代は、あらゆる分野において、ある種、妄想といわれるような大きな目標を描くムーンショット型の思考力が求められていくことでしょう。
 
仕事で求められる成果においても、10%の成長であれば、足し算的思考による気合いと根性で努力すれば達成できるかもしれません。では10倍の成長となればどうでしょうか。これまでのやり方では不可能なはず。根本的に別のやり方を考える必要があります。大きな目標を掲げ、その実現に向けて、足し算ではなくかけ算の考えを取り入れましょう。想像力を大いにはたらかせ、組み合わせて掛け合わせて、大きな結果を出すのです。
 
目標達成のための独創的なアイデアの可能性を信じることは、インスピレーションによるひらめきを期待することです。世の中に存在するあらゆる資源を活用するために、かけ算思考によってインスピレーションをはたらかせ、困難とも思える大きな目標を実現させていきましょう。

試練や困難、苦しいときのインスピレーション解決法

■変化やトラブル、ストレスに強くなる

たとえば、仕事でAの判断をすればクライアントに大きな負担がかかり、Bの判断をすれば会社側が負担を抱えなければならない場合、何を根拠に決断すればよいでしょうか。
まずは上司に相談してアドバイスをもらうでしょう。情報を集め、過去の事例を参考に対応を検討するかもしれません。ただ往々にして、すべきこと、やるべきことは、すでに心の中に浮かんでいるはずです。それを認めるのが怖い、または抵抗があるからいろいろと理由づけをしようと考えるものの、考えすぎて思考の渦に飲み込まれてしまいます。
 
「考える」ということは、人間が備えもつ有効な手段です。しかし追い詰められると視野が狭くなり、最適な答えを出すことが困難になります。それでも考えをやめるわけにもいかず、それがストレスになって苦しんでしまう。そんなときは、性急に決断しないことも重要です。ある程度考えたら時間をおいて熟成させるイメージをもってみてください。そうしてインスピレーションが最善の方法を導き出してくれるのを待つのです。
 
 トラブルをインスピレーションで乗り越えるということもありますが、トラブルがあるからこそインスピレーションが湧いてくるという側面もあります。この先一生トラブルが起こらないということはありません。だからこそ、起きたトラブルにインスピレーションを使って対処する方法を学ぶほうが建設的です。
 
昨今、「レジリエンス」という言葉が注目を浴びています。レジリエンスとは、逆境や試練から立ち直る心の力です。
大きな逆境やトラブルに直面したときに、あまりにその壁が大きすぎて気持ちが沈み、落ち込んでしまう体験は誰にもあるはずです。その際に一時的にやる気が下がり、無気力になってしまうのはしょうがないこと。重要なのは、凹んだ際に長期間ネガティブな感情を引きずるのではなく、素早く立ち直ることです。それがレジリエンスの力です。
 
またレジリンスには立ち直るだけでなく、前よりもさらに成長することも重要視しています。
前述の通り、変化が早く不確定な事柄が多い現代社会では、大きな逆境だけでなく、日常的かつ慢性的なストレスにさらされ続ける機会が多くなってしまいます。そうしたストレスから心を守るために、また予防的に対処するための方法をレジリエンスの基礎知識として知っておきたいものです。
 
そしてインスピレーションはレジリエンスの力を発揮するための視点を広げ、また具体的な行動に移すための原動力にもなります。

■自分の心は自分で守る

近年、心を病んでしまう人が多くなっています。平成29年の厚生労働省の情報によると、心の病気で病院に通っている人たちは、国内で約420万人にのぼります。これは日本人のおよそ30人に1人の割合です。職場環境、人間関係、家庭内トラブルなど原因を特定するのは困難ですが、私は「正しくあらねばならない」という固定観念がストレスの原因のひとつではないかと思います。
「社会人としてこうあらねばならない」「父親・母親としてこうあらねばならない」「成果を出すためにはこれをしなければならない」など、世間の常識、他人の視線を基準とした正しさを自らに課していないでしょうか。心がけとしては大変立派です。
でも、それは一方で、自分の心を感じることを忘れてしまっているということです。他者の基準を重視し、自分の心を無視し、心を疲弊させています。「本当の私はこう」なのに、「こうあらねばならない」というギャップによってストレスをため込んで、心をすり減らしているのです。もっと自分の心を大切にする必要があります。
 
詩人、茨木のり子さんの詩に『自分の感受性くらい』というものがあります。

〝自分の感受性くらい
 
ぱさぱさに乾いてゆく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて
 
気難しくなってきたのを
友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか
苛立つのを
近親のせいにはするな
なにもかも下手だったのはわたくし
 
初心消えかかるのを
暮らしのせいにはするな
そもそもが ひよわな志しにすぎなかった
 
駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄
 
自分の感受性くらい
自分で守れ
ばかものよ〟

自分の心を守れるのは、自分しかいません。自分の内から湧き出てくるインスピレーションの声に耳を傾け、心が求めるままに過ごしてみませんか。それは、決して自分よがりではなく、「自分に正直である」ことです。正直であるからこそ、自然体でいられ、自然体であるからこそ、無理をせずあるがままに、楽に過ごせるようになるでしょう。

■直感の7割は正しい

棋士の羽生善治氏は著書『決断力』(KADOKAWA)の中で、「直感の7割は正しい」と述べています。公式戦で1000局以上の将棋をさしてきて、直感によって「この一手が一番いいだろう」とひらめいた手のほぼ7割は正しい選択をしていたそうです。そのうえで、人間のもっている優れた資質のひとつを「直感力」だと述べています。
 
仕事におけるトラブルに対応するために、規則に基づくことは正しい解決方法です。往々にして規則というのは、過去の事例の対応策として作られたものだからです。では、過去に例がないトラブルの場合はどうでしょう。
また、過去に同様な事例が他の人に起きていて、それを参考にしようとしても、経験してきたことが違えば、大切とする価値観は違うもの。それは、もやは別物の事例です。そんな場合はどうすればよいでしょうか。
 
当たり前ですが、自らの覚悟によって決断するしかありません。自分が正しいと直感的に感じるインスピレーションを信じて決断するのです。
要は、自らのインスピレーションを受け入れる勇気の有無。これまで生きてきた人生経験を糧として生まれてくる直感的なインスピレーションを信じることができるかどうか、その覚悟をもてるかどうかです。「私のインスピレーションは自分の人生において絶対に正しい」とインスピレーションを信じる覚悟がもてたとき、この先起こる困難やトラブルをうまく切り抜けていくことができるでしょう。

 《インスピレーションがひらめくコツ①》インスピレーションには鮮度がある

インスピレーションがひらめいた瞬間には、目が覚めるような衝撃があります。でもその感動がいつまでも同じ温度で頭の中に残り続けることはありません。時間がたつにつれて鮮度が低くなります。あの瞬間の劇的な感動も、段々と薄れてしまうのです。
 
そのため、インスピレーションの感動を忘れずに実現させるためには、インスピレーションの温度を下げないことが重要になります。熱量を冷まさないこと、より熱くすること。いかにワクワク感を保ち続けられるかが鮮度を保つコツです。
 
インスピレーションが降りてきた瞬間は、たとえるならば、火だねができた瞬間です。火打ち石をこすって火花が散る一瞬の状態が、インスピレーションがひらめいた瞬間になります。
火花が散ってもまだ火はついていません。火花が薪に燃え移って、自燃する必要があります。
インスピレーションの火を大きくするための空気は、イメージ力です。何度も頭の中で繰り返してインスピレーションを想像してみましょう。モノクロの状態をカラーで描けるまで鮮明にしていきます。背景をつけ、効果音をつけ、より具体的になるようインスピレーションを何度も頭の中で描いて味わうのです。
 
この段階では、現実的なことや具体性を考えないほうがいいです。夢物語でいいので妄想として楽しみましょう。現実的な資金や実現可能性を考えることは、燃え盛る炎にいきなり冷水をぶちまけるようなものです。そのため、この段階では誰かに相談するのも控えたほうがよいでしょう。ここではいかに自分が楽しめるか、ワクワクしながらインスピレーションの鮮度を保ち温度を高められるかが重要なのです。燃焼を続けていきます。
 
ちなみに、ひらめいたインスピレーションを燃焼させようと思っても、ちょっと時間がたつと、あまりワクワクしなくなることもあります。それは仕方のないことです。新たなインスピレーションを迎える準備をしておきましょう。

*   *   *

第一章はここまで!
続きを読みたい方は、各電子書籍ストアにて6月10日より随時発売になりますので、是非お買い求めください。
下記リンクはAmazonストアでの商品ページになります。書籍の詳細と目次もこちらからご覧になれます。
書籍『ビジネスに活かすインスピレーションの技法 感覚を研ぎすます9つの方法』

■書籍情報

ひらめき、直感、インスピレーションは自ら鍛えることができる

時代の変化が著しく、また価値観が多様化している現代においては、論理的に正しいだけでは物事の判断がしにくいもの。心で感じることを大切にするためには、心の力を活用すべきです。それがインスピレーションの力です。

本書は、スピリチュアル本ではなく、ロジカル思考本でもありません。著者のビジネス経験を土台に、山ごもり修行を経て研ぎ澄ませた感覚や、カウンセラリングの実績を元に書いたものです。企画力や発想力を高めたい人はもちろんのこと、仕事でもっと成果を出したい人やこのままではマズいとモヤモヤしている人、何かを変えたいけれど一歩踏み出せない人のお役に立てるでしょう。

インスピレーションは目に見えない力です。科学的に証明できない力です。ビジネスに活用できるはずがないと思うかもしれません。しかし、「目に見えないからといって存在しないわけではない」こと、また、「目に見えないはたらきは、目に見えない領域で感じるしかない」ということは事実でしょう。

それに多くの方がインスピレーションの存在を身近に感じているはずです。これまでの人生で体験してきたに違いありません。だからこそ勇気を出して、インスピレーションに向き合い、その力を前向きに活用してみませんか。

【目次】

第一章 なぜ今、インスピレーションが必要なのか
第二章 インスピレーションとは何か
第三章 ビジネスパーソンこそインスピレーションを活用しよう
第四章 インスピレーションを呼び起こす9つの方法
第五章 インスピレーションをより高める「心磨き」について

■著者プロフィール

神田道雄

取次師/国家資格キャリアコンサルタント
1984年生まれ、法学部法律学科を卒業後、大手居酒屋チェーン店に新卒で入社。その後は、大学生の就職支援、イベント運営業、採用代行業務、転職希望者の支援、ウェブディレクター、コンテンツマーケシングディレクター、キャリアコンサルタントと分野職種がバラバラな仕事に興味の赴くままに従事。その後、家業を継ぎ宗教法人金光教竹原教会の教師となる。神信仰を体得することで、これまでの経歴が単なる興味で選んだのではなく、インスピレーションに導かれてのものであることに気づく。新たな視点での物事の見方を体得。
これまでも1000人以上の方とキャリアコンサルティングを実施するなか、インスピレーションに気がついてからの面談、対話は相談者との関わり方の度合いに雲泥の差がでている。実際に相談者自身の気づき力、満足度も向上している。

【ごきげんビジネス出版からのお知らせ】

著者デビューの夢を叶える!「電子出版サロン」6月スタート!
初月無料キャンペーン中です! お気軽にご参加ください😊

【詳細・日時・申込はこちら】

この記事が参加している募集

スキしてみて

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?