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世界の伝統スイーツと食文化〜春の訪れセムラ編


世界の美味しいスイーツを食べて
食文化を知ろう!!


セムラ Semla

エストニアのセムラ

2月に入ると、このセムラがスーパーに並び出します。
エストニア語で「Vastlakukkel」と呼ばれる、シュークリームのような見た目のこのお菓子は、小麦粉のパンの上の部分を切り落とし、間にホイップクリームを挟んで、切り取られた部分で蓋をされています。

(断面図)できれば中にもクリームを詰め込んで欲しいと思うのは私だけではないはず。

ですから、シュークリームと言うよりは、ホイップのクリームパンと言った方が日本人の私たちにとっては分かりやすい表現になります。

パン好きの私にとって、これはケーキではなくパンと分類させていただいています。

これはエストニアだけの食文化でなく、北欧やヨーロッパ全域で食べられている伝統菓子です。

しかし、全く同じ形のものを食べられているのではなく、それぞれの国の食が輝くセムラを食べられています。

エストニアでは、夏にたくさん収穫されるベリージャムや、伝統菓子として有名なマジパンが入っているものがあります。

ベリー系のジャムが入ったセムラ

温かいミルクに入れて食べたり(スウェーデン)、シュー生地にホイップクリームやジャムを入れ、上にアイシングされたものがあったり(デンマーク)と個性豊か。

フィンランドでも、ベリーのジャムやマジパン、チョコレートなどがトッピングされたものがあり、エストニアとかなり似ています。


そもそも、このセムラが今の時期に食べられるようになったのは、キリスト教において最も重要な祭「復活祭(イースター)」と深い繋がりがあります。

復活祭は移動祝日になりますので、毎年変わりますが、3月下旬から4月下旬の間の日曜日です。

今年2022年は4月17日です(ローマ・カトリック教会)。

復活祭の40日前から前日までの期間を「四旬節」といいます。

四旬節は、節制の精神で自らを振り返る期間とされていて、「祈り・断食・慈悲」の行いが推奨されていたようです。

また、秋の収穫が初春には少なくなることが多かったため、春に入る時期には食事を質素なもので乗り切るということをしていたそうです。

古代末期から中世にかけて、肉や卵、乳製品の摂取が禁じられ、1日に1回しか十分な食事を摂っていなかったとか。

セムラは本来、四旬節の最後のお祝いの食べ物として、四旬節前の3日間のみに食べられていました。

ある時、スウェーデン人が四旬節の節制に嫌氣がさし、クリームとアーモンドペーストを加えて、復活祭までの毎週火曜日にセムラを食べるようになったのが、現在の形となって残っているように感じました。


農業や食品加工技術が進歩した現在、収穫が少ない時期に合わせて食事の節制をする必要がなくなり、私たちは毎日健康で豊かな食生活を送れるようになりました。

もちろんその中でも、生態系や地球環境を守ることができる食事の選択は求められるものではなく、選んでいくものであって欲しいとも感じています。

豊かな選択ができるようになったこの素晴らしい時代で、

大切な祭りや新しい季節の訪れを
「喜び、祝う」ということができる幸せ


しっかりと噛み締めて、
今年もおいしく頂きます。



参考

セムラ

四旬節

復活祭



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