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若きアーキテクチャーと給与年齢表

「新卒一括採用」「終身雇用」「年功序列」そして「給与年齢表」…
もう2年も前の話しになるが、経団連会長の「日本の賃金水準がいつのまにかOECD経済協力開発機構の中で相当下位になっている」旨の発言がマスコミで紹介された。また連合の会長は「平均賃金は先進諸国と1.5倍程度の開きがある」旨を語っている。実際、日本の直近20年の平均賃金上昇率は実質ゼロであり、金額ベースでG7でも最下位、お隣の韓国にも抜かれてしまった。さらに実質賃金は先進諸国の中で唯一マイナス傾向であり、いつの間にかOECD加盟国の中でも低水準のグループに属するようになった。このような状況を、将来を担う若手技術者はどう思っているのだろうか。

要因は諸説あると思うが、「新卒一括採用」「終身雇用」「年功序列」そして「給与年齢表」などというまやかしのようなものの存在…旧来の日本型雇用形態もそのひとつではないかと私は思っている。国際的な経済の脅威といわれ、世界でもトップクラスの賃金水準を誇ったひと昔まえの日本であれば、雇用維持と相応の所得補償、一定の生活レベルが維持できたものの、物価も給料も上がらず長期に渡り経済が停滞している現在は、将来を担う若手技術者が希望を持てる環境だとはとても思えない。この形態は、知的財産ではなく労働力としての評価であり、雇用の流動性の低下であり、優秀な人材の報酬抑制であり、すなわち技術者としての自らの価値を高めようとする努力やモチベーションを奪い取ることを意味する。

私は長らく建築業界に身を置き、一線を退いた今でも経営アドバイザーとして建築設計系企業のお手伝いをしている。昨今はどんな業界でも異口同音に語られているが、建設業界もDX化は当たり前の潮流、それに逆行するようなビジネスモデルには資金も集まらないし成長も見込めない時代がすでに到来している。ITやAI、テック産業などのスペシャリストは学生時代から自らの知識・知見、自身の価値を高めようと努力を重ね、まさに売り手市場を作り出している。このように時代は確実に進化しているにもかかわらず、この業界では旧態依然とした老害脳が業界を牛耳り、高度経済成長期に構築された雇用形態を頑なに守り、そして将来を担う若手技術者にこれを当てはめようとすること自体が今の時代に馴染まないのではないかと思う。労働力よりも知的財産が正当に評価されるような業界にしようと皆さんは思いませんか。

建築物のデジタル化がもたらす国民的利益は相当程度認識されつつある。これらのツールを最大限に活用できる知識と環境を早期に整え、発展的にフェーズを変える魅力ある業界にしなければ優秀な人材は集まってこない。そして優秀な人材には正当な評価に基づく報酬が与えられ、その立ち位置を目指す努力と向上心、探求心が高く評価され、結果的に雇用の流動化は必然であろうと考えている。自らをスキルアップし価値を最大化、交渉能力を高め競争を勝ち抜く…新たな領域へ果敢に挑戦できる若い人材を時代は求めている。


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