薔薇と雨の日　2020.5.21

薔薇色とは程遠い毎日だけど。このところ、至るところで綺麗な薔薇を見ることができた。近所の住宅街にこんなにもたくさんの薔薇が手入れされていたなんて。知らなかった。秘密の花園は案外すぐそばにあったのだな。そして花が散った後には、鋭い荊棘が渦を巻いている。くわばらくわばら。深呼吸をする。雨の匂いがする。湿ったシュラフに包まって目を瞑っていたい。今日は緑がイキイキしていた。都会でも空気が濃い。マスクを外すと雨の匂いと一緒にいろんなものがシャバダバダバっと肺に雪崩れ込んできた。草や花の青臭い匂い、じいっと雨宿りしている虫や小鳥、濡れて重くなった土や石、その裏っ側で蠢くカエルや節足動物、湿った靴の爪先、ぬめる鉄のレールやステンレスの車両、夕方に糸を引く豆腐屋のラッパ、軋む新聞配達のバイク、僕に似て雨の日は癖が強くなる息子の硬い髪。みんなちゃんと粒立ちながらもひとつの塊りになって、肺の奥に流れ込んでくる。むせ返りそう。プラケースの中、腐葉土に包まれて眠るカブトムシのサナギともひとつになる。イバラを掻い潜りながら夏を待っている。

くるり／ばらの花
https://youtu.be/fpjIsylnvU8