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独身者と余暇

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2024年4月の記事一覧

東京にあてた恋文

東京にあてた恋文

最近、『追憶の東京~異国の時を旅する』(早川書房)という本を手にした。

著者のアンナ・シャーマンは2000年代のはじめ、10年あまりを東京で暮らした経験をもつアメリカの作家。

この『追憶の東京~異国の時を旅する』は、そんな著者による異色の日本滞在記である。

かつて江戸の市中には、町民に時刻を知らせるための鐘、いわゆる「時の鐘」が点在していた。

その響きに魅入られた著者は、すでに存在しないも

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「シュルレアリスムと日本」覚え書き

「シュルレアリスムと日本」覚え書き

シュルレアリスムはむずかしい

シュルレアリスムはむずかしい。

東京の板橋区立美術館で開催中の展覧会「シュルレアリスムと日本」をみての感想です。

むずかしいと言っても、それはかならずしも難解といった意味ではありません。そうではなく、意識をもって無意識の領域を描こうとすることに本来つきまとう困難さ、とでも言えばよいでしょうか。

シュルレアリスムは、アンドレ・ブルトンの《シュルレアリスム宣言 溶

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どうにも気になってしまい映画『異人たちとの夏』をみた

どうにも気になってしまい映画『異人たちとの夏』をみた

前回、ん? 前々回の浅草の話からの、これは続きである。



けっきょく小説だけでは飽き足らず、山田太一の小説を市川森一が脚色し大林宣彦が監督した映画版『異人たちとの夏』まで観てしまった。

主演を風間杜夫が、両親役をそれぞれ片岡鶴太郎と秋吉久美子が演じている。

この映画はすいぶんむかし、たしか十数年前にいちど観た記憶がある。

なんだかへんちくりんな映画だなあと思ったきり忘れていたのだが、今

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