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パン職人の修造 1〜55話 江川と修造シリーズ

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パン職人の修造 江川と修造シリーズです。 口数は少ないがパンにかける情熱は人一倍の田所修造と、明るくてみんなに好かれるが実は人一倍頑固者の江川卓也がパン作りに挑戦していきます。各…
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パン職人の修造 江川と修造 初めに

パン職人の修造 江川と修造 初めに

パン職人の修造は、口数の少ない主人公の田所修造(たどころしゅうぞう)がパンにまつわる色々な出来事に出会うお話です。元は2021年3月に「パン屋のグロワール」のホームページのブログで始まりました。

九州から関東に出てきてパンロンドというパン屋に就職した田所修造は、妻の律子(りつこ)と緑(みどり)を日本に残してドイツにパンの修業に行き、26歳で日本に戻って2人と再会。またパンロンドの店主柚木(通称親

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パン職人の修造16 江川と修造シリーズ 進め!パン王座決定戦!

パン職人の修造16 江川と修造シリーズ 進め!パン王座決定戦!

「修造さん!大変です!あの機械がありません!」

「えっ!ちゃんと用意できるように紙を渡したろ?」

「確かに用意して車に積んだのを覚えています!」

2人は自分達のテーブルの周りをよく探した。

「無い」江川が半泣きになってきた。

「どうしましょう修造さん」

その時安藤が叫んだ。

「お次はもう3品目ですね!何が出てくるのか楽しみです!それでは作って頂きましょう!」

画面に修造と佐久間が交

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パン職人の修造9 江川と修造シリーズ 進め!パン王座決定戦!

パン職人の修造9 江川と修造シリーズ 進め!パン王座決定戦!

下町の商店街にあるパン屋のパンロンドは今日もお客様が絶えない。お客さんがパンを買って帰ったらまた次のお客さんが来る。

大人気のとろとろクリームパンを成形しながらパンロンドの店主柚木(通称親方)は仕込み中の職人田所修造を見て思っていた。

修造が修業に行っていたドイツから帰ってから急にやる気に満ち溢れた職人が増えてパンロンドは爆上げになったな。

あいつは本当に大したもんだよ。

律子さんと緑ちゃ

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パン職人の修造8    江川と修造シリーズ   新人の杉本君  Baker’s fight

パン職人の修造8 江川と修造シリーズ 新人の杉本君  Baker’s fight

一方、隣の裏庭では修造が缶コーヒーを杉本に渡していた。

「暴れたら喉が渇いたな。」

空き家のペンペン草が沢山生えた花壇を囲っているブロックに腰をおろして一緒に缶コーヒーを飲みながら「少し落ち着いたか?」と聞いた。

杉本は何も言わずに黙っていた。

修造は話し始めた。

「多くのパン屋が『何人かが狭い空間で働いてる』んだ。その全員がメインのシェフの意思通りに動かなきゃならないと俺は思ってる。勝

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パン職人の修造7  江川と修造シリーズ 新人の杉本君  Baker’s fight

パン職人の修造7 江川と修造シリーズ 新人の杉本君  Baker’s fight

 修造は杉本のパンチをかわして刻み突きして相手の胸を押して距離を取る動作を何度か繰り返した。

その後杉本の左手からのパンチを肘を曲げて右に巧みにかわして背中が空いた瞬間後ろに重心をかけて裏回し蹴りを入れ、そのまま左のつま先の内側を引っ掛けて倒した。

「うわっ!」

素早く杉本の背中に乗っかり動けなくすると、

杉本は背骨の中央をロックされ、手も届かず足で蹴ろうとしたが修造の足で防がれている。

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パン職人の修造6 新人の杉本君  Baker’s fight 江川と修造シリーズ

パン職人の修造6 新人の杉本君  Baker’s fight 江川と修造シリーズ

次の日、修造と江川は大量にシュトレンのフルーツを洋酒に漬け込んでいた。

フルーツをボールに入れ、洋酒を多めに回しかける。スパイスを足してそれをタッパに入れて倉庫の涼しいところに置いていく。

秋11月頃になると段々洋酒が染み込んで熟成されたフルーツをシュトレンに使うのだ。

シュトレンはドイツではクリスマスの時期に様々なお店で売られている。クリスマスを待つ4週間にアドヴェントという期間があり、少

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パン職人の修造5 新人の杉本君  Baker’s fight 江川と修造シリーズ

パン職人の修造5 新人の杉本君  Baker’s fight 江川と修造シリーズ

このお話は『初めての面接』の続きです。

18歳になったばかりの江川卓也は、修造と面接の時約束した通りに高校を無事卒業して、北国から関東の商店街にあるパン屋のパンロンドにやって来た。

入社してからはずっと先輩の田所修造と組んで毎日仕事を教えて貰っている。

「修造さーんおはようございまーす」

「よお」

明るく爽やかに挨拶した江川に対して言葉少なに修造が挨拶仕返す。

これが江川の毎朝の始まり

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パン職人の修造4 初めての面接 江川と修造シリーズ

パン職人の修造4 初めての面接 江川と修造シリーズ

「失敗を回避して成功に導くんだ。つまり一言でいうと『咄嗟の判断で失敗を回避する能力』の事なんだ」

江川は修造の言葉を口を開けてポカーンと聞いていた。

僕がそんな能力に長けてると誰かに言って貰えるなんて思ってもみなかった。もしこの人に会えてなかったら僕は一生自分の事を誤解したまま引きこもっていたかもしれない。

僕は認めて貰えたんだ。

「お前は冷たい熱いという自分の手の感覚で本当の事を見抜いた

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パン職人の修造3 初めての面接 江川と修造シリーズ

パン職人の修造3 初めての面接 江川と修造シリーズ

「す、すみません」

「いいよ」

今ので合格かどうか決まるのかな。。

江川は箱を素早く片付ける修造を、息を切らしながら見ていた。

「さっきのところに戻ってて良いよ」

「はい」

靴を履いて工場に戻るとさっきと同じ動きを皆んながしていた。

親方が「どうだった?」と聞いた。

「はい、時間が足らなかったんです」

江川は正直にいった。

「そう」と言って親方はまた前の作業に戻った。

え?

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パン職人の修造2 初めての面接 江川と修造シリーズ

パン職人の修造2 初めての面接 江川と修造シリーズ

江川は倉庫について行った。

「俺は田所修造。みんな修造って呼んでるよ」

「修造さん、よろしくお願いします」

「今から試験をするよ。これから3分間でこのダンボールを3つに仕分けして俺のところに持ってくるんだ。途中与えられるヒントは1回だけ」

「えっ?」

倉庫を見ると床にシートが敷いてあってその上に沢山のダンボールが積まれている。大小形の違う30個ほどあるダンボールを3つに仕分ける?

一体

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パン職人の修造1 初めての面接 江川と修造シリーズ

パン職人の修造1 初めての面接 江川と修造シリーズ

お話の前に。

パン職人の修造は、口数の少ない主人公の田所修造(たどころしゅうぞう)がパンにまつわる色々な出来事を体験するお話です。元は「パン屋のグロワール」というパン屋のホームページで始まりました。お話は全てフイクションで、実在するお店や団体とは何ら関係ありません。各お話毎にテーマや主人公が変わります。noteでは、パン職人の修造というお話の第3部のあたりから始まります。

九州から関東に出てき

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