パン職人の修造9 江川と修造シリーズ 進め!パン王座決定戦!
下町の商店街にあるパン屋のパンロンドは今日もお客様が絶えない。お客さんがパンを買って帰ったらまた次のお客さんが来る。
大人気のとろとろクリームパンを成形しながらパンロンドの店主柚木(通称親方)は仕込み中の職人田所修造を見て思っていた。
修造が修業に行っていたドイツから帰ってから急にやる気に満ち溢れた職人が増えてパンロンドは爆上げになったな。
あいつは本当に大したもんだよ。
律子さんと緑ちゃんをおいてドイツに行くって言った時はどうなるかと思ったけど、帰ってきたら相変わらず律子さんと超仲良し夫婦だし。丸く収まるもんだなあ。
杉本は修造の舎弟みたいだし、江川は金魚の〇〇だな、、、
そこへ電話がかかってきた。親方は人一倍太い指で受話器をとった。
「はい、パンロンドです」
「初めまして。わたくしNNテレビのディレクターの四角志蔵(しかくしぞう)と申します。この度夕方の特番でパン王座決定戦というのをやるんです」
「へぇ〜、、えっ?うちが出るんですか?」
「はい、最近人気の店を調べてパンロンドさんのお名前が上がってきましたので」
「何をやるんですか?パンのクイズとか?」
「それもあります。勝ち進むと更にテーマがあるんですが、それは現場でのお知らせという事になります」
親方は修造を見ながら言った。
「四角さん!うちに相応しい人材がいますよ。ぜひやらせて下さい」
「本当ですか?全て録画になりますが、お茶の間の視聴者はみな釘付けになりますよ。各チーム2人ずつペアで参加なんですがどうですか?1回目の撮影は来週の火曜日です」
「わかりました」
「修造君〜!」電話を切って親方は修造に声をかけた。
親方がこう言ってくる時は大体頼み事が多い。
いやな予感しかしない修造は親方を見た。
「来週火曜日に修造と誰かもう1人がNNテレビのパン王座決定戦に出る事になったんだよね〜」
「もう決めちゃったんですか?俺テレビとか苦手なんですが」
人前で何かするとか嫌だよ、特に目立つのは苦手だな。そう思ってると
「修造さんとですか?だとしたら誰かもう1人って僕しかいないですよね!」
修造と一緒と聞いて気が大きくなって修造の弟子っこの様な江川卓也が立候補してきた。
「じゃあ頼むね〜」
親方はさらっとそう言ってまた仕事に戻ってしまった。
杉本は倉庫に材料を取りに行ってて出遅れて悔しがった。
「え~!江川さ~ん!変わってくださいよ~」
「いやだよ。僕が修造さんと一緒に出るんだもんね」
そんなやりとりを聞きながら修造は凄く嫌そうにしていた。
うわ、俺どこかに逃げ出そうかな。そう思いながら火曜日はすぐにやって来た。
修造と江川はNNテレビに向かう車の中で「なんで俺がテレビに出なくちゃいけないんだ」とぼやいた。
「まだそんな事言ってるんですか?僕なんて何も知らないのに出るんですからよろしくお願いしますね。」
「お前、、信じられない図々しさだなあ!」
そんなやりとりをしながら2人はNNテレビに到着した。
「うわー!僕テレビ局初めてです。広いなあ」
ADらしい人に控室に通されて「こちらに座ってしばらくお待ちください」と言われた。
自分たちの他に5組いるんだ、、修造は腕を組んで椅子に座りながら凄い目力でジロジロ観察した。
1番右の2人。あれは北海道のパン屋北麦(ほくばく)パンの佐々木シェフだ。ここの自慢は自家製酵母を使ったハード系。
2番目が甲信越のブーランジェリータカユキの那須田シェフ。ここの自慢は見た目も美しいデニッシュとクロワッサン。
3番目は関東の俺たちパンロンド。
4番目は関西のブーランジェリーサクマの佐久間シェフ。ここは豊富な惣菜パンが有名な人気店だ。
5番目は中国地方のBBベーグルの田中シェフ。ここはベーグルの種類が豊富で、華やかなベーグルフルーツサンドが人気なんだ。
そして6番目は九州の酒種パンのロングハッピー藤原シェフ。
「それぞれ持ち味出してる店ばっかだな」
うちが1番無名かなあと言ってるとディレクターがやって来た。
「どうもみなさんお待たせしました。ディレクターの四角と申します。今から皆さんでクイズの勝ち抜き戦で争って頂きます」
パンにまつわる問題が出ますのでどんどん答えて行ってください。6組中4組までが勝ち抜いて第2ステージに向かいます。
全10問しかありませんので頑張って下さい。お二人のうち、わかった方が答えて構いませんよ」
説明のあとスタジオに案内された。1番やる気のない修造はだらだらと最後について行った。「さっさと負けて帰ってやる」と呟いた。
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