メイドインジャパン(Made In Japan)を考える(1) 〜 日本ブランドのシミュラークル

 MINISO(名創優品産業)の勢いが止まらない。「今の生活が好き! だから、名創優品」「Love Life, Love MINISO」をキャッチコピーとするが、日本の業界関係者からは「偽ダイソー」「パクリ無印良品」と批判され、日本の無印良品とユニクロ、そしてダイソーの3社を上手く模倣してできたようなブランドだ。

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 日本では5店舗しか出店されていないが(いくつか閉鎖に追い込まれたようだ)、実は海外では既に世界70か国3700店舗展開しており、ますますグローバル展開を加速させている状況なのだ。模倣したとされる無印良品、ユニクロ、ダイソーの3社と比較するとその世界展開のスピードに驚くばかりである。 

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表のデータは各社ホームページより(2020年6月3日現在) 

 またスピード感という意味ではコロナ下にあって、マスクの箱売りを行なっており、夏頃から始める日本のユニクロや無印良品とは一線を画する市場の動きへのアジャイル性を持っている。

  そして実際は中国の広州の企業であるMINISOは「From Japan To the World」と標榜しており日本ブランドで日本企業であることを前面に出したマーケティング戦略を取っている。商品にも敢えてロゴなどの象徴的な箇所は日本語で名称が記載されている。無印良品が海外で売られているところに日本語表記が残っているところを真似ているのかもしれないが、少なくとも中国企業とは思われないだろう。実際、創業地は東京で起業家のYe Guofu(葉国富)と日本人デザイナーの三宅順也がグローバル共同創業者として同社Web上では掲載されている。

  このMINISOが行なったのは無印良品、ユニクロ、ダイソーのコピーでしかないのだが、今までは力のある先進国の企業がアウトソースして中国や東南アジア諸国(ないしは東欧やアフリカなど)に委託製造させるのが通例だった。しかし製造プロセスに強みを持った中国企業がブランドやデザインという上流工程を日本やヨーロッパに出すという逆流が起きていることがもはや先進国の企業であることが何の優位性をもたらさないという証明ではなかろうか。MINISOが日本のデザインを真似る、ないしは日本のデザイナーを起用する、さらには日本っぽい商品を提供することで中国企業も日本企業も見分けがつかなくなるし、そんなことはどうでもよくなる。つまりシュミラークルなのだ。 

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