20年間、ずっと変わらない「子育ての悩み第1位」とは?
今週もたくさん届いたご相談を読みながら、時代は変わっても子育ての悩みの多くは20年間ほぼ変わっていないなあと思います。
ダントツで多いお悩みとは、ずばりこちらです。
この悩み、本当によく寄せられます。
そして毎回、みなさん、あの手この手で親の言うことを聞かせようと頑張っているのが伝わってきます。
なぜうまくいかないのでしょうか。
この連載を読んでくださっている方はもうお分かりですね。
「子どもに、大人の言うことを聞かせるテクニック」はいらないのです。
大事なのは、「子どもの思いを聴くテクニック」を身につけることなのです。
そして、それが子どもの自己肯定感を育てることにつながり、相手(親)の言うことを聞くことのできる子に育ちます。
まずは、親の言うことを聞かせようとする会話を見てみましょう。
■どうしたら親の言うことを聞くようになるのか?
せっかく公園に来たから、小学校に行って困らないように鉄棒に慣れさせようと言うお父さんの気持ち、よくわかります。それに、急いで帰って夕食の準備もしなければなりません。
鉄棒をする意味やできないと困る理由も説明していますね。最後には、言うとおりにしないと二度と連れてこない!という交換条件まで出して、言うことを聞かせようとしました。
お父さんの言葉がけは、何がよくなかったのでしょうか?
次のマンガを見てみましょう。サトくんの思いに耳を傾けながら読んでみてください。
■子どもの思いを言葉に換える
サトくんは、鉄棒が嫌だったわけではなく、お父さんに反発したかったわけでもありません。
砂遊びをやり遂げたかっただけなのですね。
NGマンガのお父さんは、その思いをケアする言葉がけができていなかったのです。
OKマンガでは、サトくんが今夢中になっている世界(砂場でトンネル作り)にお父さんも入り込んで一緒に楽しみました。
手に触れたら「手だね」
トンネルがつながったら「つながったね」
壊さないで、と言われたら「わかった」
完成したら「一緒にはしゃぐ」
サトくんの思いを1つ1つ言葉と行動で表現していきました。
つながった穴から覗いたら顔が見えるなんて、子どもも大喜びです。
子どもの仮説(山を掘ったらつながるかな?)を一緒に実験し(掘り進め)、山を崩さないように慎重に進める工夫を一緒に乗り越え、完成させた喜びを一緒に味わうことで、自分で考えて行動し工夫して最後までやり遂げる力が育っていきます。
親の言うことを聞かせようとすると、この力が育つのを邪魔することになってしまうのです。
■子どもの行動が変わる言葉がけ 2つのポイント
子どもは自分の思いを認めてもらえたら満足します。ですから認めてもらえたあとは、びっくりするくらい、さっさと家に帰ります。そして次回は鉄棒を一緒に楽しむでしょう。きっと子どもの方から、「鉄棒やりたい!」と言うはずです。
こうして自己肯定感が着々と育ちます。
おおっと! 今、砂場に行って早速やってみようと思いませんでしたか?
親がやらせようとしても意味はありません。要注意です。
我が子が今、やっていることに親が入っていって一緒にすることが大切なのです。
ポイントは2つ、視点とタイミングを子どもに合わせることです。
私の言うことを聞かない!と思ったら、私は、子どもの思いを聴いているだろうか?と問い直してみてくださいね。
決して子どもの言いなりになることではありません。
許可したり黙認したりすることでもありません。
子どもが何をしようとしているのかを、言葉に置き換えていくだけです。
そうすると、びっくりするくらいこちらの言うことも聞けるようになります。
子どもってすごいのです!
この感動をぜひ全てのお母さんお父さんに感じてもらいたいです。
今日のコミュポイント
マンガ:とげとげ。
執筆:天野ひかり
上智大卒。テレビ局アナウンサーを経てフリーに。NHK「すくすく子育て」キャスターの経験を生かし、親子コミュニケーションアドバイザーとして 講演や企業セミナー講師を務める。子どもの自己肯定感を育てるため自身で立ち上げた「NPO法人親子コミュニケーションラボ」代表理事、一般社団 法人グローバルキッズアカデミー主席研究員。主な著書に『子どもが聴いてくれて話してくれる会話のコツ』(サンクチュアリ出版)や『賢い子を育てる 夫婦の会話』(あさ出版)などがある。