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「おならブリブリ〜」と連呼する我が子。やめさせるのは効果的?それとも逆効果?

元テレビ局のアナウンサーで、NHKの「すくすく子育て」の司会も務めた天野ひかりによる連載です。 今まで5万人以上から相談を受けてきた親子コミュニケーションのプロが、実際によく相談される悩みをどうやったら解決できるか、自己肯定感を育てる会話のコツをお話します。

今回のお悩みはこちらです。

「おしり~」「おなら~」「うんこ~」など、言ってほしくない言葉を大声で連呼して、とても困ります。家でなら、まあいいかとも思うのですが、外で言われると、恥ずかしくてやめさせたいのです。どうしたらいいでしょうか?

微笑ましいご相談だなあと思った方は、きっと大きくなったお子さんがいる親御さんのはず。なぜならこれは誰もが通る道で、それが一過性であることを知っているからです。それに、人を傷つける言葉ではないので、この時期限定のやり取りなのだと認めて、楽しむくらいの気持ちでいいと思います。

とはいえ、1日中、何回も叫ばれたりすると、さすがにうんざりしますし、何がそんなに面白いのかと心配になりますよね。

一体何が子どもたちを惹きつけるのでしょうか。まずは、よくある会話を見てみましょう。


やめさせようとすればするほど盛り上がる子どもたち、、お母さんは疲労困憊ですね。

■子どもはお母さんに振り向いてほしい一心

お母さんは2人の子どもの手をひきながら、重い荷物を持ち、急いで家に向かっています。きっと頭の中では、家に着いたら洗濯物をたたんで、夕食の準備をして、子どものお着替えをセットして、お風呂に入れて……などなど、効率よく進める手順を考えているのかもしれませんね。
あるいは、職場で今日うまくいかなかったことを思い返し、どうすればいいのかを思案中なのかもしれません。

そんなお母さんを見て、子どもは何を思うでしょうか。
年齢が小さければ、「お母さんを自分に振り向かせたい」
少し大きくなると、「お母さんを笑わせたい」
こんなふうに考えるのです。健気ですね。

幼い子どもにとって、言葉を駆使して大好きな相手を振り向かせたり、笑わせたりするのは、至難の業です。
その点、「おしり、おなら、おっぱい」などは、言うだけで、お母さんは即座に自分の方を向いてくれます。マンガでもお姉ちゃんはゲラゲラ笑っています。子どもにとっては、つまらなかった帰り道が、自分の力で和やかになる魔法の言葉なのですね。

子どもは、たとえ叱られたとしても、自分の方を見てくれるほうが嬉しいので、もっともっと叱られることを言うようになります。

実は、これは欧米と比較されてよく指摘されていることですが、日本では、子どもが悪いことをした時だけ、注意をしたり叱ったりして、子どもに向き合う傾向があります。逆に子どもがいいこと(親の言いつけを守るなど)をしたときには、何も言わずに無反応(親としては、当たり前だと思っている)になっているのです。

このマンガの場合、子どもが何も言わずに静かに歩いているときは、お母さんは、何も言いませんでした。でも子どもが「おなら」と言った時だけ、反応していますね。

子どもからすると、いいことをしても親が振り向いてくれないのでつまらなくなり、振り向かせるために、叱られることをもっともっとするようになるのです。

ですから、「おならブリブリ」と言わなくても(言う前に)子どもに向き合って楽しい時間にできるのが1番です。
でも、常にそんなことができるわけでもないのが現実。子どもが言い始めてしまった時は、どうすればいいのでしょうか。OKマンガを見てみましょう。

反応をせず話題を切り替えたお母さん。子どもたちも大好きなご飯の話にノリノリです。

■子どもの連呼が止まるシンプルな方法

「おしり」と言ってもお母さんがふり向いてくれなければ、魔法の言葉でもなんでもありません。過剰に反応しなければ、子どももつまらないので、言わなくなります。
そして、何事もなかったかのように別の話題を切り出しましょう。できれば、子どもの興味がありそうな話題がいいですね。お母さんが笑顔で自分の相手をしてくれれば、それで子どもは満足です。

■あまり神経質にならなくて大丈夫

ただ、こういった言葉は、子どもにとっては生きるための武器なのかもしれません。
言葉を駆使したコミュニケーションが未熟なうちは、お友だち同士でも、こうした言葉は大活躍です。
だって「おなら」と言うだけで、みんなゲラゲラ笑って打ち解けたり、険悪なムードを打開して和やかな雰囲気になったり、喧嘩の仲直りができたりするのです。
ですから取り上げてしまうのは酷な気がします。お家では、一緒に楽しむくらいでいいと思います。

しかも、これまでは「泣く」「引っ張る」「叩く」といった原始的な方法でしか相手の気をひけなかったのに、言葉で人の気をひけるようになったのは、成長の証です。

ここからさらに成長して、言葉を上手に使いこなせるようになれば、こうした言葉に頼らなくてもうまく会話で自分の気持ちを伝えられるようになり、あっという間に卒業するでしょう。
そのために親にできることは、子どもの気持ちにぴったりな言葉を一緒に探して会話をすることです。

今日のコミュポイント
「やめさせようとしない。過剰に反応しないようにしよう」

マンガ:とげとげ。

執筆:天野ひかり

上智大卒。テレビ局アナウンサーを経てフリーに。NHK「すくすく子育て」キャスターの経験を生かし、親子コミュニケーションアドバイザーとして 講演や企業セミナー講師を務める。子どもの自己肯定感を育てるため自身で立ち上げた「NPO法人親子コミュニケーションラボ」代表理事、一般社団 法人グローバルキッズアカデミー主席研究員。主な著書に『子どもが聴いてくれて話してくれる会話のコツ』(サンクチュアリ出版)や『賢い子を育てる 夫婦の会話』(あさ出版)などがある。


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