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子どもを褒める。子どもを叱る。実はどちらも同じだった。

元テレビ局のアナウンサーで、NHKの「すくすく子育て」の司会も務めた天野ひかりによる連載です。 今まで5万人以上から相談を受けてきた親子コミュニケーションのプロが、実際によく相談される悩みをどうやったら解決できるか、自己肯定感を育てる会話のコツをお話します。

先日あるお母さんから、深刻な面持ちでこんなご相談を受けました。

自分で考える子に育てるには、選択肢を与えるといいと聞いたので、「これとこれ、どっちがいい?」と聞いているのですが、「わかんないーっ!」と最近かんしゃくをおこすようになりました。叱りたくないし、でも子どもが自分で全然考えないし、どうしたらいいのか、途方に暮れています……

お話を伺った後、
「日頃、お子さんをなるべく褒めようと心がけていらっしゃいますか?」
と聞くと、
「はい! どうしてわかったんですか?」
と表情が明るくなられました。

選択肢を与えることはとても良い方法です。
でも「わかんない!」と言われた時、子どもは何がわからないのか、みなさん、わかりますか?
これは、褒められて育っている子の“あるある”かもしれません。マンガを見てみましょう。

おやおや。自分の希望を答えているのに、お母さんの様子を伺っているような・・・

親からすると、
「好きな方を選べばいいでしょ? わかんないって、どういうこと?」
と思いますよね。しかも、かんしゃくをおこすほどのことかしら? と不安になります。

さて、青のTシャツとピンクのTシャツ、どちらがいいか聞かれて、子どもは一体何がわからないのでしょうか。

これは、「どっちを答えたら、お母さんに褒めてもらえるんだろう?」と考えて、わからなくなっている可能性があります。
実は、これは褒められて育ってきたお子さんによくみられます。

かんしゃくをおこすのは、「親の望むこと」と「自分がしたいこと」の間で揺れているから。成長している証拠だと思って、前向きに受け止められるといいですね。

このタイミングで、お子さんがしたいことを一緒に探していける会話に変えてみましょう。OKマンガを見てみます。

お母さんは「認めている」だけですが、子どもは行動に自分なりの基準ができている様子ですね。

■「褒める=評価する」になってない?

褒める言葉と認める言葉は、似ているようで全く違うのです。

例えば「弟に譲って優しい子ね」と褒めると、子どもは嬉しくて、もっと褒められたいという気持ちから、優しい子であろうとします。
でも本当は、「譲りたくない」とか、「これなら譲ってあげよう」など、自分の気持ちに正直に向き合って、自分の考えを育ててほしいですよね。
そのためには、親が評価するような褒め方は避けられるといいですね。

譲ったから優しいのではなく、譲らないことが優しいこともある。
もっと言えば、優しい子と決めつける必要もないと思います。

「これは譲ったのね」
「これは譲らないのね」
とそのままを言葉にすることで、子どもは見てもらえた、認められたと感じます。つまり自分の判断を認めてもらえたので、自分に自信を持つのです。
その繰り返しで、親に褒められることを考えるのではなく、自分の考えと向き合えるようになっていきます。

■褒める子育てに疑問を持つ親が増えてきた

実は最近、褒めて育てることに疑問を持つお母さんお父さんが増えてきました。
「褒めれば、言うことを聞くのでとても助かるけど、子どもを操ってるみたいな気がして、このままでいいのでしょうか」
というご相談です。
それに気づいたお母さんお父さんは、すごいと思います!

褒めることはいけないことではありません。
でも、褒めることで親自身の望みや価値観を、子どもに押し付けている可能性を内省してみることも、時には大切です。

褒めて、やらせるか。叱って、やらせるか。
これは手段が違うだけで、実は、こちらの思い通りにさせたい気持ちはどちらも同じ。ということは、「褒める」と「叱る」に違いはないのかもしれませんね。

今日からは「認める」言葉かけにして、子どもが自分で考えるようになっていけば、選択肢にも答えられるようになるはずです。

今日のコミュポイント
「褒めてやらせるより、認めて子どもの考えを尊重しよう」

マンガ:とげとげ。

執筆:天野ひかり

上智大卒。テレビ局アナウンサーを経てフリーに。NHK「すくすく子育て」キャスターの経験を生かし、親子コミュニケーションアドバイザーとして 講演や企業セミナー講師を務める。子どもの自己肯定感を育てるため自身で立ち上げた「NPO法人親子コミュニケーションラボ」代表理事、一般社団 法人グローバルキッズアカデミー主席研究員。主な著書に『子どもが聴いてくれて話してくれる会話のコツ』(サンクチュアリ出版)や『賢い子を育てる 夫婦の会話』(あさ出版)などがある。


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