Aprile
もう5月も末だが、今日はAprileについて語りたい。4月、エイプリルはNanni Moretti(ナン二・モレッティ)監督の映画である。私はナン二・モレッティのわりと初期の映画が大好きで、DVDで何回も見る。彼の映画は「息子の部屋」や「ローマ法王の休日」などが有名かもしれないけれども、昔の方がなんとなくしがらみがなく自由に素直に作っている感じがする。映画にはどれも彼自身が出ていることが多く、それもヒッチコック的なカメオ出演ではなく、ウッディアレンのように主役を自ら演じることが多い。ウッディ・アレンもそうだが、ナン二・モレッティ彼自身のあの神経質なキャラクターがどうも私はハマってしまって、(神経質で冗舌になってしまう様は二人ともそっくり!)そのため彼の自伝的な作品「親愛なる日記」と「Aprile」が私は大好きだ。(「親愛なる日記」についてはまた別の日に書きたい)
邦題だと「ナン二・モレッティのエイプリル」になっている。90年代ベルルスコーニが勝利したときのイタリアの選挙運動のことと、自身の育児の様子を同時進行で記録している。妻と子もそれぞれ本人が出演していて、特に奥さんとナン二のやりとりなんか絶妙で、こんなにしち面倒臭い夫を持つ奥さんの器の大きさが伺える。私は妊娠中も、また出産後もこの映画を何回も繰り返しみていて、普通の育児指南の類とは訳が違うわけだが、どこかで無意識にベンチマークにしている時があって自分でも可笑しい。夫があんなに妻の出産時にあたふたしていて、けどそれを見るだけで男性はなんとなく安心するかもしれないし、女性は母としての誇りが保たれるかもしれない。
この映画はなかなか文章で表すのが難しいのだが、主軸が選挙運動のドキュメンタリーの撮影のようで、もちろん当時の記録映像が含まれていて興味深いのだが、そこまで突き詰めて集中して撮っていない。並行して進行している育児の記録のようで、しかし特に教訓めいたことは描かれていない。そもそも長年念願だったミュージカル映画を撮ろうとしてたのに急にやる気が失せて、選挙運動についてを撮っているという設定なのだ。とにかく優柔不断で無責任で、揺れ動く彼。神経質で面倒な男、その裏腹に、子供みたいに素直で欲望に忠実な彼。自身が子供っぽいが子供を溺愛している微笑ましい彼。本当は超長生きしてやりたいことがたくさんあるのに!とVespaを乗り回す彼。(Vespaのシーンが彼の映画はとにかく多い)とにかく彼、彼、彼、彼を描いている作品と言っていいだろうか。(大体彼がミュージカル映画を撮りたいという設定がもうすでに可笑すぎる。しかし彼の映画にはたびたびミュージカル映画の要素が出てくるので、多分好きなんだろう。似合わないんだけれども)もうナン二モレッティが大好きな人が見る映画。不安定で性格あまりよくないけど憎めない男。彼らしく毒々しいが、通してとぼけていて小気味の良い台詞回しを見てみたい人にお勧めする。そういうのが好きな人はとにかく笑えます。
ところでナン二・モレッティはあんなに顔立ちが美しく背も高いのに、それを隠すような髭とサングラスと変な格好、そしてあの性格。ここが憎めなくて、不思議と人を惹きつける微妙なラインなのかもとも思う。
これからはイタリア映画鑑賞の記録も少しずつしていきたいと思っています。よかったら見てください。
さて、Nanni Morettiの映画を見ていると”Sacher film"という名をクレジットで見ることになると思うが、これはNanniが作った映画プロダクションの名前である。Sacherというのは日本の洋菓子屋さんでも見かけるオーストリア発祥のザッハ・トルテ(Sachertorte)のことである。(イタリア語読みでサケールと発音する)Sacher filmの映画館がローマにあるようなのだが、まだ私は一度も足を運んだことがない。(すごく行きたいっていつも行く度に言ってるのに・・・)
NanniはSacherが一番好きなケーキらしい。あと私は個人的にローマにいると食べる機会が多い。ローマの人たちは「ウィーンのホテル ザッハー(ザッハトルテ発祥のカフェがある)で食べたけど、ローマの○○のお店のSacherの方が美味しいぜ」と言ったりする。アプリコットのジャムをチョコレート生地で挟んで、またチョコレートでコーティングした、まさにチョコレートの誘惑加減を体現したケーキと私は思っている。
そういえば小学生の頃、恥ずかしいので親に隠れてバレンタインのチョコを作ろうとした時、液体状のチョコはお湯を入れれば作れるのかと思って大失敗した思い出がある。(ボソボソになる)お菓子作りにはレシピが重要だと学んだ瞬間であった。そして2回目に挑戦した時は湯煎中にお湯が少しだけチョコレートに入ってしまって、少しだけしか入っていないのに大失敗に終わりショックを受ける。それ以来なんとなくトラウマチックで、チョコを湯煎するのはずっと避けていた。
しかし夫と出会ってから、イタリアではなんでも湯煎をすることを”Bagno Maria”(マリアのお風呂)と言うことを知り、マリアがイタリアのあの美味しいチョコレートの泉に入っている様子を思い浮かべるとなんとも甘美で(私の中ではボッティッチェリの絵のイメージ)それから「Bagno Mariaする」と言いたいだけに私はまたチョコレートの湯煎をするようになったのだった。
※レシピ(Ricetta)
Sacher(ザッハトルテ)
<材料>
●チョコレートケーキ(ベース)
・チョコレート 75g(Cacao 60%)
このチョコは本当に美味しくてしかも使いやすいので、よく使っています。
・卵 3つ
・バター 60g (室温に戻す)
・砂糖 100g
(できたらこの細目の方が混ざりやすく、生地も滑らかになる)
・薄力粉 65g
・塩少々
・バニラビーンズ
(日本だとホールでなかなか買いにくいし、便利なのでこのチューブ式のは私は超使います。オーストラリア産オーガニック)
・アプリコットジャム
(やっぱりイタリア産がいい)
●チョコレートコーティング
・チョコレート(同上)185g
・生クリーム 125g
<作り方>
1. ケーキ分のチョコレートを湯煎でとかす。
2. メレンゲを立てる。メレンゲを立てる時は最初塩だけ入れて立てると立ちやすく、その後砂糖を入れる(70g)。砂糖を先に入れると重くて立ちにくい。(これはピエモンテのシェフから教わった)しかしメレンゲを立てすぎるとケーキを焼いた時に膨らみすぎて後でチョココーティングをしにくくなるので、八分目ぐらいのたて具合でやめとく。(シフォンケーキでなければ爆発を避けるためにそんなに立てなくていいと私は思っている)
3. バターをクリーム状になるまで混ぜて、砂糖30gを入れて攪拌する。(この砂糖は粉糖だとなお良い)その後卵黄3個分も入れて混ぜる。
4.湯煎したチョコレートを混ぜる
5. メレンゲを半分追加し攪拌機でぐるっと混ぜ、薄力粉をふるって半分入れ、ヘラで切るようにサクサク混ぜる。その後残りのメレンゲをヘラで混ぜ、最後に粉をサクサク混ぜる。(練らない)
6. 型に入れ、170度 45分焼いたら、冷ます。
ちなみにイタリア(別に日本でもやる人はやると思うけど、私はイタリアで教わった。)でケーキを焼く時は、型にバターを塗ってその上に粉をまぶして、焼いたケーキを取り外しやすくする人が多い。その時バターを塗ることをImburrata、粉をまぶすことをImpolverataと言うのが私は好きである。Burro(バター)と言う名詞を動詞化しているのと、polvere(ほこり)を動詞化している言葉なのだが、こう言う連想しやすかったり関連単語を発見する瞬間は言語学習している際の至福の時である。
7. 生地が冷めたら横にナイフを入れて半分に切り、間にアプリコットジャムを塗る。また表面にも塗る。表面に塗ることでチョコをコーティングした時にツルツルになる。
8.生クリームを鍋で温めながらチョコを溶かし、そのチョコレート液を生地の上に流し込む。冷蔵庫で固めたら出来上がり。
Buon appetito!
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