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わけわからんタクラマカン砂漠

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自分でもよくわからない話。 思いついたことのまま、10分くらいの勝負。
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#ショートストーリー

青山通りに漂うメモ

青山通りに漂うメモ

いつもよりあつい夏。毎年そう思ってて、本当は何にも変わらない夏なんだ。
通勤で使うバスも、休日になると乗車する人も、空気も違う。ギンギンにきいているクーラーはとても気持ちが良い、きっと途中で寒いと感じるのだろう。

バスの中からゆっくりと見渡す街。
こんなに落ち着いて見渡すと、あんな店あったんだ、などの気づきがあった。
ゆっくり見ると、この道は通勤だけじゃないときに来ている、懐かしい感覚。

耳元

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友人のひとり

友人のひとり

金曜日、街には人が遅くまで集まっている。
今日はそんなに急ぎの仕事もないし定時に上がれそうなんて思ってたのに、終わりかけでいつも仕事を頼まれる。断れないのが一番悪いのはわかっている。そういう日に限って、人と約束をしていたりなんてことはしょっちゅうだ。 

スマートフォンを開いて、"ごめんもう少しかかりそう"と待ち合わせの時間。
"大丈夫、ゆっくりで"なんてゆるい返事が来る。あの人のことだから恐らく

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もしもの、クーラーとパセリ

もしもの、クーラーとパセリ

扇風機の回る部屋。
セミがなく音。
窓は開きっぱなしで、生温い風が入ってくる。

一言で言うと「暑い」。
クーラーはというと、故障している。
夏の始まりに多くの人の故障で、修理が混むためなかなか順番はこない。
こういう時はフローリングの冷たさだけが頼りだ。

「あっつ〜」
うつ伏せに体を冷やすように寝ている。

「さとこ」
「ん」
「別れよっか」

扇風機とセミの音がさっきより強く響いて聴こえる。

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