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古本屋になりたい

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本や読書にまつわるあれこれ
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2023年5月の記事一覧

古本屋になりたい:33 雨の日と月曜日

古本屋になりたい:33 雨の日と月曜日

 父方の祖母が亡くなったあと、遺品の整理をしていたら、特別ご招待、第6回JRファミリー大バザール!と印刷された、薄い紙の封筒が出て来た。優待券でももらったのだろうか。
 裏を返すと、祖母の字でメモ書きがあった。

 “お父さんの姉の子供
 宝塚の
 (田中義一)”

 封筒と中身は関係がなく、中には古い新聞の切り抜きが入っていた。
 「タイガースよさらば」というコラムで、筆者は村山実。往年の阪神タ

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古本屋になりたい:32 「たけしの大英博物館見聞録」

古本屋になりたい:32 「たけしの大英博物館見聞録」

 2001年の秋の終わり、TBSで、作家の塩野七生とビートたけしが対談する番組が放送された。
 塩野七生は「ローマ人の物語」を刊行中で、さらに年明けには文庫化も同時進行で始まるタイミングだったようだ。この記事を書くためにWikipediaで刊行年月を見て、そういうタイミングだなあと私が思っただけなのだが、ビートたけしとの対談は、やはりそれなりに話題になったのではないだろうか。

 対談のテーマは、

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古本屋になりたい:31 「食品知識ミニブックスシリーズ スパイス入門」(改訂二版)

古本屋になりたい:31 「食品知識ミニブックスシリーズ スパイス入門」(改訂二版)

 最初に勤めた会社を辞めて、派遣会社でアルバイトをしていた頃、土日の2日間、ある食品関係の展示会に行くことになった。どの企業の何を扱ったのかもすっかり忘れてしまったのだが、何かしら食品を簡単に調理して、試食に出すのが私の仕事だった。

 和歌山県の海沿いの大きなイベント会場だったと思う。しかし、ビルやホールのようなかっちりした建物ではなかった記憶がある。
 サーカス小屋のような、半常設の施設だった

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古本屋になりたい:30 恒川光太郎「風の古道」

古本屋になりたい:30 恒川光太郎「風の古道」

 兵庫県伊丹市に、猪名野神社という古い神社がある。
 JR伊丹駅を出て、荒木村重の居城で黒田官兵衛が幽閉されていた有岡城址を横目に、酒蔵通りを西へ歩き、産業道路と呼ばれる県道を北へ上がっても良いし、そのまま西へ進んで、おしゃれな外観のタリーズコーヒーと白雪ブルワリーレストラン長寿蔵の間の道を進んでも良い。伊丹市立ミュージアムや、旧岡田家・石橋家住宅などを覗きながら、伊丹市立図書館、通称ことば蔵を目

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古本屋になりたい:29 乱丁・落丁お取り替えします

古本屋になりたい:29 乱丁・落丁お取り替えします

 私の手元に、ニ冊の乱丁本がある。
 一冊は読むのにあまり支障がなく(人によるかもしれない)、もう一冊は同じページが重複している分抜けているページがある。
 取り替えてもらうことなく持っているのは、ちょっと面白いと思ってしまったからだ。

 ほとんどの場合、書籍の奥付のページに、乱丁・落丁の場合は取り替える旨が記載されている。
 念の為、2012年発行の岩波文庫をめくってみると、乱丁・落丁に関する

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古本屋になりたい:28 「正岡子規ベースボール文集」

古本屋になりたい:28 「正岡子規ベースボール文集」

 数年前に亡くなった伯父が、肺炎をこじらせて入院したことがあった。

 毎日来ていたのにここ数日来ないと心配した、行きつけの喫茶店のマスターが、独り者の伯父が住むマンションを訪ねて、病院にも行かないでふせっているのを発見した。マスターは、伯父を近くの病院に連れて行き、入院が必要らしいと伯父の妹である私の母に電話をくれた。

 仕事が休みでたまたま街へ出ていた私に母から電話がかかって来て、私は予定を

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