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散文の仲間

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ジブラルタル峻が綴る、理性や科学の外側のテクスト。
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#スキしてみて

小説:半呼吸体とは(421文字)

小説:半呼吸体とは(421文字)

 常識を片目で見る。あるいはできる限り遠くに置く。あいつはそういうことをやっているのだろう。

 スクランブル交差点を渡り切った呼吸体は、イヤフォンのボリュームを上げた。
 正解は誰かのルールにおいての正解であり、絶対的ではないのよ、と三叉路を通り過ぎたペンペン草が喋る。
 ルートの記号を7個集めて、オオトカゲに願う。するとどうだろう。旧邸の鍵が見つかり、みりんで味付けされた縦横無尽体が振る舞われ

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小説:透明な猫(374文字)

小説:透明な猫(374文字)

 誰も持たない道具を使う。それはピッケルの先端を納豆巻きにすることであり、幕末のヒキガエルの鳴き声にフランジャーを掛けて仕上げるものだった。
 遥か遠くに見えるミートパイは、あっけなく情報戦に埋もれ、パラダイムのキャップに嵌め込まれたチゴイネルワイゼンとともに祝杯を上げる。
 漬物石で覆われたエレクトーンがひとりでに鳴り響き、ウーロン茶はそのときだけ、複製物ではないよという表情を浮かべる。
 ミシ

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駄菓子の真実(418文字)

駄菓子の真実(418文字)

 隠れマルコフ作戦を偏微分する。額縁の友達は「それは妥協じゃなくて挑戦だよ」と言う。そのセリフを第五象限にプロットしたまま暮らす。
 
 時間と握手をする龍が、予定調和にかじりつき、真夜中色のアジサイが咲き続けることになる。
 感情という言葉をナノテクノロジーで解体し、まだ問われていない素子に代入する。

 駄菓子の真実を過冷却し、動的粘弾性を計測する。誰も認めようとしないのは承知しているが、パレ

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小説:猫は粘性流体だ、などの言葉の塊(450文字)

小説:猫は粘性流体だ、などの言葉の塊(450文字)

 猫は粘性流体だという話をする。

「ユルゲヌス-ブブッティ反応」はウォーレン・ユルゲヌスとセルゲイル・ブブッティの二人により発見された反応だ。
 ごく簡単に説明すると、ベルヌーイの定理の切れ端を梃子の原理で炒めた反応物を反物質にスパッタリングし、そこに析出した薄膜を野良猫に踏ませたときの反応のことを意味する。
 猫の鳴き声は通例「カメカメカメカメー」なのであるが、奇跡的に「ニャー」あるいは「ミャ

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小説:あなたの文法を見せなさい、などの言葉の塊(472文字)

小説:あなたの文法を見せなさい、などの言葉の塊(472文字)

 現象のゆりかごをマリアナ海溝から引き上げ、地鎮祭が催される。崖を背にした偉大な俳優が背水の陣とばかりに、前方後円墳に変貌する。手袋を自らの歯でもって剥ぎ取り、世代の鐘が鳴り響く。調子の良いエンゲル係数にヒッタイトの鉄を突きつけて、盤面を俯瞰する。
 するとどうだろう?
 トリオの左の担当者がファンシーなマシュマロを乱射するではないか! その際、固めるか吸わせるかはさして問題ではないのだ。高分子吸

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小説:ピンボールで20点というイカの色素のようなスコアを叩き出してから。などを含む言葉の塊(403文字)

小説:ピンボールで20点というイカの色素のようなスコアを叩き出してから。などを含む言葉の塊(403文字)

 雪の結晶が健気に伸ばす片手を握りしめて男は走る。ピンボールで20点というイカの色素のようなスコアを叩き出してから。
 スペア7連続で別室にいざなわれ、畳の部屋でマッコリを飲み続ける。記憶のほつれ髪に淫することを禁じ得えなかった。

 側転4回で失格になった国道98号線はハレーションを塗り広げて喜ぶ。タウリンとハイタッチ。
 黒い遵法精神が街に降り注ぐ。あくなき平泳ぎはブルーライトカットではにかみ

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小説:ドーナツ、サルトル、サーターアンダギー(666文字)

小説:ドーナツ、サルトル、サーターアンダギー(666文字)

 カルガモの対義語は乳液だと言ってきかないブルドーザー伯爵。
 常に叫びを聞くのは、あるところのものではなくあらぬところのもの、の仕業だと分かる。地下茎がまた伸びる。
 ドーナツに穴があることは、ないことがあることであり、存在性の思春期を意味している。ドーナツの存在はその背中に非存在の銃口を突きつけられており、いつ食べられてもよいという覚悟に満ちている。

 覚悟とは無縁のサーターアンダギー。サー

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小説:アセロラ(573文字)

小説:アセロラ(573文字)

 アセロラによって引き起こされた揚げパン戦役は、一人の犠牲者も出さずに終焉を迎えた。量子次元に封じ込めたカルテの声が6世紀的な意味を持って理科室を優しく包んだのであった。ピスタチオカーブを曲がりきったハイエナは、バックオフィスで独り涙する。ポートボールで最多得点の天文学者は持ち前のアルカイックスマイルで観客を湧かせた。

 表面温度を計測したアヴィケンナの忍者ムラサメは細い川を下りきったところでブ

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