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エッセイ

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どうでもいいような、だけどあるとちょっとウレシい毎日のことです。
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#食べ物

七草がゆのかわりに

七草がゆのかわりに

 今日は、あなたと一緒に食べるために七草がゆをつくります。でも、家には大根しかないので、これでつくります。すみません。でも、お正月のあとの胃腸をいたわるという目的はクリアしているし、お昼の三分クッキングでやってたんです、大根がゆを。
 土鍋でお米と大根を煮ます。わたしは料理が得意とは言えないのですが、今日は絶対焦がさないように慎重にやるので安心してください。お米が柔らかくなったら葉っぱもいれます。

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チーズおかき

チーズおかき

 午後になってもしんしんと冷える日、分厚い小説を読むのに疲れた時なんかには、チーズおかきをちょっとつまみます。二枚の丸いおかきにチーズがはさまっていて、片側のおかきはリング状になっている。そこからつるつるしたチーズクリームが見えています。おいしそう。
 たとえ小説の舞台がボストンの洒落たレストランでも、わたしはわたしの世界、たとえばおばあちゃんちの玄関に、帰ってくるのです。幼き日、おばあちゃんがビ

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あんバタートースト

あんバタートースト

 ぜんざいのためのあずきが余ってしまったら、それを言い訳に大きなスプーンで好きなだけすくいあげ、こんがり焼いたトーストの上に、バターと一緒にのせる、それだけ。
 あとは、なんだっていいのです。窓の外は眩しく晴れていてもいいし、つめたい小雨でもいい。襟に細かいレースがついたワンピースを着てもいいし、ドーナツ柄のパジャマを着たままでもいい。飼っているちいさなミドリガメが、ごきげんに愛嬌をふりまいてもい

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みかん

みかん

 みかんは、いちばん親しみ深いくだものです。「お」をつけて「おみかん」と呼びたくなるのですから。
 たとえば、りんごやぶどう、バナナも身近だし、おいしい。でも、ふとアダムとイブや、美術館の静物画が思い出されたり。ワイナリーの広大な畑や、あのCDジャケットが浮かんだり。ちょっと、かっこよすぎるのです。苺は、アイドルみたいなあの子。さくらんぼは赤い口紅のお姉さん。桃はチャイナ服のセクシーなガール。あん

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あまざけ

あまざけ

 近所の神社ではお正月に甘酒がふるまわれています。雪がちらつく中の初詣、みんなその湯気に寄っていく。あるいは「あまざけ」という言葉に引き寄せられて。甘酒との出会いは幼い頃、お正月か、ひな祭りかに親戚からもらった瓶詰めのもの。白っぽい瓶に、うすもも色のラベルが貼ってあって、わたしはウワッと色めき立ち、これ飲んでいいの? と大人たちの顔色を伺う。お酒なのに?飲んでいいの?あまいの?という気持ちで。
 

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