シズルとの闘い
みなさんは、シズルという言葉をご存知だろうか。
これは英単語のsizzleからきている。もともとは揚げ物などが揚がるときの音や、肉が鉄板の上で焼けるジュージューという音を表す言葉だが、これが転じて、そういった、食べ物の臨場感を伝えるもの、という広告用語になっている。
ちなみに、お笑い芸人に「しずる」というコンビがいるが、彼らの名前は定食屋の名前から取ったらしい。おそらくこの定食屋は、シズルの意味を知っていて店の名前にしたのだろう。
ネットでものを売り買いすることが多くなった現在、実物の商品を見なくても、その食感や味の臨場感が伝わることは非常に重要であるため、シズル広告の重要度も増している。
しかし、何もネット広告にだけこのシズルが使われているわけではない。先日、スーパーに買い物に行った時、あるコーナーで所狭しと並ぶシズルに出くわした。
それは、お菓子売り場である。もっと正確に言えば、その中でも、グミが並べられているコーナーだ。
金属製の棒にぶら下げられ、並べられているグミ。そのパッケージのほとんど全てにシズル感があった。
グミというのは大抵、フルーツ味である。ブドウにミカンにリンゴにモモ。それらがプリントされたパッケージには、滴る果汁が必ずと言っていいほど描かれている。みずみずしく光る果実に、思わず手を伸ばしたくなる。
また、コーラ味やソーダ味のグミもある。それらも、やはりそのパッケージにシズル感がある。炭酸が弾ける音が聞こえてきそうなくらい、細かい気泡で埋め尽くされたパッケージ。本物のコーラよりも、はるかにコーラ感がある。
シズル広告は、消費者の感覚を刺激して購買を促す。それらを作った広告代理店は、人間がどういうイメージに反応し、どういう行動を取るのかを研究し尽くしている。そんな広告に無防備なまま曝されたとき、私達はなすすべがない。彼らの思惑通りに動くしか無い。
そんな僕らに残された武器は何か?それは、知ることである。それが何なのかを知り、それに出会った時にそれだと認識することである。
今度、シズルに出会ったら、「良いシズル出してるね〜」と褒めてみよう。そうすればあなたを縛る鎖を一つ解くことができる。本当に買いたいものだけ、買えるようになる。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!