IT企業で働く弁護士

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IT企業で働く弁護士 (法律事務所⇨LL.M.留学⇨ITインハウス) インハウスの仕事/IT・AIに関する法律の話/弁護士・法務部員のキャリア/法律、判例学習・企業法務への応用/留学(LL.M.)・英語学習

最近の記事

ビジネス法務・2024年5月号

ビジネス法務・2024年5月号が出たので気になった記事を感想とともに簡単に紹介します。 特集1 秘密保持契約のベストプラクティス秘密保持契約(NDA)は、民法では全く言及のない非典型契約でありながら、企業法務の世界では最も目にする契約書のうちの一つです。 今回のビジネス法務の特集では、NDAという企業法務の基本的な契約について整理することができました。 特に、鮫島正洋先生の記事である「秘密保持契約の心得」において、VUCAの時代において「軽くスピーディな」NDAの締結が

    • インハウスを目指す若手弁護士・司法修習生へ訴訟経験のススメ

      修習生や若手弁護士にとって、キャリアにおける弁護士としての訴訟経験はインハウスロイヤーとしてのキャリア発展に重要な要素になります。 今回はその理由を掘り下げていきます。 訴訟経験が企業内弁護士のキャリアにもたらす価値契約書は訴訟における裁判規範 組織内弁護士としての仕事は多岐にわたりますが、もっとも典型的かつ時間を割かれる仕事は契約業務(契約書の作成・チェック)です。 言うまでもなく、契約書の究極的な目的は紛争の予防にあります。 すなわち、契約後の争いの発生に備えて

      • ビジネス法務・2024年4月号

        ビジネス法務・2024年4月号が発刊されました。 この記事では、IT企業の法務部員として、いくつか気になった記事を紹介します。 【特集1】独禁法・競争法の最重要テーマ20独禁法の下でこれまで法執行の対象となりやすかったのは、大規模小売業をはじめとする伝統的なビジネスです。 もっとも、最近では、「食べログ事件」において独禁法違反が争点とされるなど、IT企業においても独禁法コンプライアンスは重要な法分野となっています。 この記事のサブタイトルにもある、「苦手意識を克服!」とい

        • 契約書作成におけるChatGPTの活用法

          売買契約のようなひな形がそのまま利用できない新たな取引について、契約書の作成を依頼された場合におけるChatGPTをはじめとするAIツールの活用方法について記事にします。 当事者間の権利・義務の整理ChatGPTは、複雑な取引についてに当事者の権利・義務を項目ごとに分類することがとても得意です。 契約書作成の基本は、取引における各当事者の役割を法的に有効な形で書面に落とし込むことです。 その前提として、契約書作成のもとになる当事者間の権利・義務の整理にChatGPTは非常

        ビジネス法務・2024年5月号

          人材紹介契約書レビューのポイント

          昨今の人材不足からか、職業紹介事業者との間の人材紹介契約書(「職業紹介サービス契約」、「人材紹介コンサルティング契約」等と名称は様々ですが、職業紹介サービスの提供に関する契約を意味します)のレビュー依頼が増えています。 そこで、この記事では、人材紹介契約書のレビューに関してまとめたいと思います。 人材紹介契約の基礎知識適用業法:職業安定法 人材紹介契約の適用業法は職業安定法です。 職業安定法は、人材紹介業者や求人企業の職業紹介事業や求人行為を規制しています。 具体的には

          人材紹介契約書レビューのポイント

          食べログ判決・控訴審でカカクコムが逆転勝訴

          2024年1月19日、東京高等裁判所は飲食チェーンの韓流村が、食べログの運営会社であるカカクコムに対し、韓流村に不利な「アルゴリズム変更」が優越的地位の濫用にあたると主張していた損害賠償請求訴訟において、韓流村が(一部)勝訴した東京地方裁判所の一審判決を破棄し、韓流村の請求を全面的に棄却する判決を言い渡しました。 裁判の背景と第一審判決裁判の背景 この裁判は、原告である飲食チェーンの韓流村が、2019年5月に食べログを運営するカカクコムによりチェーン店の評価を一律に下げる

          食べログ判決・控訴審でカカクコムが逆転勝訴

          ビジネス法務・2024年3月号

          2024年3月号のビジネス法務では、企業内弁護士として知っておくべき重要なトピックが多数取り上げられています。この記事では、その中から特に注目すべきポイントをピックアップし、企業法務の仕事にどのように活かせるかについて考えたいと思います。 【地平線】法務部員はなぜ自社事業を把握すべきか2024年3月号で、普段私が社内弁護士として働く際に最も意識していることを言語化している記事がありました。 『地平線:法務部員はなぜ自社事業を把握すべきか』という記事です。 この記事では、執

          ビジネス法務・2024年3月号

          ビジネス法務・2024年2月号

          あけましておめでとうございます。 今回は2024年最初の「ビジネス法務」(2024年・2月号)の紹介をします。 【特集1】類型別整理から社内連携まで 業務提携契約の総チェック2024年2月号の特集1は「業務提携契約」に関する解説です。 私の勤務先は自社製品開発だけでなく、他社とのOEM契約や販売代理店契約を結ぶことでビジネスを展開しているため、法務部として取り扱う契約業務のうち、業務委託契約と業務提携契約の2つが最も重要な契約類型となっています。 業務提携契約は、業務

          ビジネス法務・2024年2月号

          法律書のサブスクサービスを使った新人教育

          先日、法律書のサブスクサービスのトライアルをしたという記事を書きました。 私の勤務先は「BUSINESS LAWYERS LIBRARY」を契約しているのですが、「BUSINESS LAWYERS LIBRARY」では、法律実務書に加え、教科書的な法律書も多く収録されており、実務だけでなく新人教育でも使うことが可能であると考えました。 そこで、当社の法務部においても今年から新人研修をスタートすることとし、「BUSINESS LAWYERS LIBRARY」に収録されている

          法律書のサブスクサービスを使った新人教育

          法律書のサブスクサービス・トライアルの比較

          法務の仕事を進めるうえで欠かせない法律書。 今回、3つの法律書サブスクサービスをトライアルしたので、その感想を記事にしたいと思います。 今回試した3つのサービスLEGALSCAPE 「LEGALSCAPE」は、法律業務の支援に特化したサービス開発を行っている東大発ベンチャーである株式会社Legalscapeが提供する法律書のサブスクサービスです。 「LEGALSCAPE」の特徴は、ChatGPTに基づくAIリサーチ「Watson & Holmes」という機能があること

          法律書のサブスクサービス・トライアルの比較

          読書 / 『半オートモードで月23.5万円が入ってくる「超配当」株投資』 / 株式投資における基礎知識を身に着ける

          以前、『最強のファンダメンタル株式投資法』という読書記録を記事にしました。 引き続き今回は、『半オートモードで月23.5万円が入ってくる「超配当」株投資』という本が株式投資において大変参考になったので要約記事にしたいと思います。 本の紹介要約もともと株式投資をしていた著者は2006年のライブドアショック、続く2008年のリーマンショックで株式投資の洗礼を浴びることになる。 そこで、受取配当を増やすことを軸に沿えた投資手法に変えて投資を続け、2022年、「億り人」(=金融

          読書 / 『半オートモードで月23.5万円が入ってくる「超配当」株投資』 / 株式投資における基礎知識を身に着ける

          ビジネス法務・2023年12月号

          ビジネス法務・2023年12月号が発刊されました。 もう「12月号」ということで今年ももう終わりが近づいていると思うと、時間の流れのはやさを感じますね。 この記事では、最新刊(2023年12月号)においてIT企業法務において参考となる記事をピックアップします。 【連載】法務部が知っておくべき景表法の最新論点「アフィリエイト広告・ステマ広告」インターネット広告はIT企業において最も用いられているマーケティング手法である一方、広告の仕組みが複雑であったり、2023年10月か

          ビジネス法務・2023年12月号

          ベートーヴェンの遺書から勇気をもらう

          ベートーヴェン、クラシック音楽に興味のない方でも「耳の聴こえない作曲家」として、運命や合唱をはじめとする有名な曲を聴いたことがあるのではないでしょうか。 正確に言うとベートーヴェンは「最初から」耳が聴こえなかったのではなく、病気のため20代中盤からだんだん耳が聴こえなくなった、と言われています。 ベートーヴェンは現代では「楽聖」(音楽の聖人)と呼ばれ、人類の歴史の中でもっとも偉大なクラシック音楽の作曲家の一人です。 ベートーヴェンは生きていた当時から、その才能が周囲に認め

          ベートーヴェンの遺書から勇気をもらう

          「生成AIの法律問題」特集に注目! / ビジネス法務・最新号(2023年11月)

          ビジネス法務・最新刊(2023年11月号)が発刊されました。 2023年11月号では、「生成AIの法的ポイントと内部規約を検討する」(特集1)という、IT企業法務では避けて通ることのできない重要な論点が取り上げられています。 そこで、今回の特集を題材に、生成AIの法律問題、法務パーソンとして生成AIへどのように対応すべきか、について簡単に記事にまとめました。 ポイント1 生成AIに関わる3つの法的論点この特集では7つの記事で構成されていますが、通してわかることは大きく①著

          「生成AIの法律問題」特集に注目! / ビジネス法務・最新号(2023年11月)

          読書/「最強のファンダメンタル株式投資法」/決算書読解力を備えた法務を目指す

          皆さんは財務諸表を読むことはできますか?数字の羅列で苦手な方も多いのではないでしょうか?(実は私もそうです) 財務諸表の基礎知識を身に着けることは、会社の経営戦略や方向性を数字の面から確認するために法務パーソンとしても非常に重要です。 また、特に上場企業の法務部は会社法・金融商品取引法に基づく法定開示や証券取引所規則に基づく適示開示の対象となる情報に接する方も多いでしょう。法務の仕事がどのように株式市場と関係しているかを理解することはとても大切です。 まず、株式投資にお

          読書/「最強のファンダメンタル株式投資法」/決算書読解力を備えた法務を目指す

          法務と営業部門のコミュニケーションのコツ

          企業の法務部で働いていると、他部門とのコミュニケーションは日常的に発生します。 今日は、営業部門とのコミュニケーションについて、これまでのキャリアにおいて上司やコミュニケーション上手の同僚から学んできたことを踏まえ、私が企業内弁護士として心掛けていることを記します。 ①法務の専門性をふりかざさない法務の仕事において、「自部門から他部門へ仕事を依頼する」、というよりも、「様々な部門から法律事項の依頼を受ける側」であることが必然的に多くなります。 そして、法務部は「法律」とい

          法務と営業部門のコミュニケーションのコツ