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競わない生き方と法務の仕事

競争しない生き方

自己啓発書でよく言われることだが、幸せに生きるためのコツとして、「人と比べない」「競争しない」というものがある。

人間って本当に比べるのが大好きで、年収から人事評価、飲食店、国に至るまであらゆることに「点数」や「ランキング」がつけられている。

つい人(他社、モノゴト)と比べ、競争してしまう。
しかし、他人と比べることは不幸への第一歩でしかない。

そもそもすべての人に個性があるし、生きてきたバックグラウンドも全然違うのだから、今この瞬間、この場面、特定のポイントの比較をしても意味がない。

そして、上には上がいるもので、自分は決して一番にはなれない。

特に、「あいつより劣っている」、「あの人がうらやましい」、「あの会社は自分の会社よりも格が上だ」、これらは基本的に人生にとってあまり意味がない。
比べただけで自分の能力が向上したりその地位が手に入るわけでもない。
結局、嫉妬心や劣等感が生まれるだけで、自分を不幸へしか追いやらない。

しかし、「人と比べない」、「競争しない」ことはあえて意識しないとできない。

人と比較することは人間のDNAに組み込まれているのかってくらい、日々の意識に刷り込まれているからだ。特に、会社で働いていると、数字が第一にくることが多く、「比べない」、「競争しない」というのはなかなか難しい。

競争するなら、他者ではなく、昨日の自分、明日の自分と比べること。
昨日と比べて成長したと感じる。明日の自分はもっと良くなると信じる。

これが幸せに生きるコツだと思う。

この観点からみると、法務の仕事って悪くないな、と最近感じている。

法務の仕事は数値化・可視化しにくい

会社を見回してみると、数字、数字、数字…。

比べる、競争するための最もわかりやすい指標が「数字」だ。

営業は毎月売り上げ数字目標に追われていてしんどいだろうなと想像する。

営業だけでなく、事業開発部門は常に新たなサービスの開発や改善に追われているし、いつまでに新商品が出るのか、他社との競争優位性はどこか、投下資本をいつ回収するのか、経営陣・投資家からのプレッシャー(期待)も大きい。
翻ってバックオフィスを見ると、人事部は採用人数や離職率というKPIを追わなければならないし、財務部・経理部も会社のお金をミスのないよう適時適切に管理しなければならない。

ここで法務部の仕事に視点を移すと、仕事内容が数値化・可視化しにくいため、そもそも他社等と比較しにくいという特徴がある。
契約書の作成・チェック、新規施策の適法性審査、M&Aに至るまで、ミスは許されないという前提はありながらも、数字に追われるプレッシャーや厳しい競争の少ない仕事だと感じている。
もちろんレビューした契約書数や他部門からの評価により可視化できる要素はあるものの、これは一般的にどの部門も同じである。

そもそも法務は他部門から「頼られる」部門、つまり、自分から成果を出しに行くアウトバウンドの業務というよりも、待っていれば相談・依頼の来るインバウンドの仕事が多い傾向にあるため、依頼に対して適切に応えてさえいれば、競争にさらされる要素が少ない仕事だな、と感じている。

もちろん自分から成果を出すべくプロアクティブな動きもできるし、そこが法務という仕事の面白いところでもある。

しかし、相対的に法務は数字管理されることは少ないし、数値化・客観化されたKPIを設定しにくいのは事実としてある。

この「比較しにくい」「競争の要素が少ない」仕事であるという点で、やっぱり法務の仕事は営業をはじめとする他部門と比べて精神的なプレッシャーは少ないと感じている(この意味では総務部も似た側面があり、実際に両者の仕事は親和性がある)。

法務の仕事で競う場面

法務の仕事で競う場面があるとすれば、主にそれは法務部内での出世競争・評価競争ということになる(リーガルヘッドになれば経営陣のポジション争いもあるかもしれない)。

私はこれまでいくつかの企業の法務部に所属したが、組織の大きな法務部では部門内の競争があったし、正直に言って部内での面倒な人間関係やストレスもあった。

法務の仕事は専門性が高い分、クセの強い人間が多いので管理職になったらなったで面倒だし、可視化できない分、上司からの評価結果には納得がいかないこともあった。

今は比較的、規模の小さな法務部でマイペースに仕事をしていて、競争から離れた法務ライフを送っている。
もちろん急ぎの依頼にはストレッチをきかせて可能な限り対応しているし、部下の教育にも力を入れているが、基本的にはかなり快適な働き方だと感じている。

結論として、競争原理の働きにくい小さい法務で働く、あるいは一人法務として働く、というのは競争から離れたい人にとっては、わりとおすすめできる働き方なのかな、と思う。

競争が報われればよいが、競争して勝った暁には新たな競争が待っている。

成長し続けるビジネスモデル、それに伴う競争まみれの生き方は限界に来ているのではないだろうか。

どういった組織(会社)が自分に合っているかは人それぞれだが、規模の小さな法務組織(一人法務)は、競争から離れた仕事に携わりやすいというメリットがあることを強調したい。

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