『終わった国の経済の処方箋』ー「新・所得倍増論」David Atlinson(著)
「日本経済は終わってる」
最近よく聞く話です。日本経済の最前線で戦う企業の社長たちはこの終わった経済の中でどう生き残っていくかを常に考えています。
政治は経済復活という名目で政策を行いますが、大きな効果がないまま私たちは今日を迎えました。
本書は「終わってしまった日本経済をどう復活させるべきなのか」という問いに挑んだ本です。
著者であるDavid Atkinson氏はイギリスで日本について学び、大手金融会社で活躍した後、日本で会社を経営しています。そんな著者による経済分析は日本復活に必要な政策を見つける一つの提案です。
・経済を「式」にして考える
経済の状況を分析する時、よく利用されるのはGDPです。GDPとは国内総生産を意味します。国内総生産の規模が大きいほど経済力がある国といえるのです。
このGDPを求めるための式は
です(基本式)。
著者はこの式を簡単に要約して
であるとします(Atkinson式)。
私はこの公式を構成する要素から経済を分析するという視点に驚きました。
私が文系出身で数学があまり好きではないというのも一因だと思いますが、これは長年数字を相手にしてきた分析家だからこその視点ではないでしょうか。
・日本の経済成長を裏付けてきたものとは?
著者は日本経済が成長した最大の理由を人口増加してきたことであると言います。
人口増加によって労働量が増え、生産量が増え、消費量が増えてきたのです。だから、人口が減少傾向に転じると成長が鈍化したというのが著者の仮説です。
だからこそ著者の考える改善案はシンプルです。
この二つです。
ですが、それだけではこの本は終わりません。Atkinson式を見るともう一つ要素があります。それは「生産性」です。
これを上げるにはどうすればいいのでしょう。それは無駄な仕事を辞めることです。
私がワクチン接種の現場に行って感じたことですが、バイトの人数が無駄に多いということです。また稼働率も低いのです。
あれを見て時給とは「暇な時間を金に両替している」ことだと思ったほどです。
無駄な仕事は探せばいくらでもあります。この無駄な仕事に忙殺される日々から解放されるのが生産性向上において大事なことではないしょうか。
・おわりに
著者自身は結構SNSで議論に巻き込まれるタイプの人に感じます。
ですが、著者の意見が考えるに値しないようなものとは感じません。イギリス生まれのアナリストの視点というのは貴重です。
個別のデータで世界における日本の現在の立ち位置を示してくれているのは、日本に対するエールのように感じます。
このまま潰れないためにも、日本人は自身で考えることが大事なのです。私も著者同様にやり方次第では日本経済は復活すると思っています。
最後に著者が本書の中で引用しているMargaret Thatcherイギリス元首相の言葉で終わろうと思います。
この部分は私が最も強く共感した部分です。イギリス人向けですが、言葉の本質は日本人にも通じてほしいと思っています。
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