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労働協約と労使協定: 中小企業のための人事戦略と法令遵守ガイド

=中小企業の成功を支える: 効果的な人事戦略と法令遵守のための完全ガイド=

中小企業における労働協約と労使協定の重要性と実践方法

中小企業を取り巻くビジネス環境は日々変化しており、その中で企業の成長と安定を実現するためには、効果的な人事戦略が不可欠です。

特に、労働契約や就業規則だけでなく、労働協約や労使協定の理解と適切な運用は、人事管理の質を高め、法令遵守を確実にする上で重要な役割を果たします。

この記事では、中小企業の人事担当者が直面する具体的な課題を解決し、労働関係を円滑に管理するための基本から応用まで、わかりやすく解説します。中小企業の人事担当者が知っておくべき、労働協約と労使協定の重要性、その締結から運用に至るまでの実践的な方法に焦点を当て、人事戦略と法令遵守を支援するためのガイドとしてお役立てください。

労働契約・就業規則・労働協約・労使協定の概要

中小企業の人事担当者の皆さんにとって、労働契約、就業規則、労働協約、労使協定の理解は、従業員との円滑な関係を築く上で欠かせない知識です。ここでは、専門用語を避け、これらの基本的な概念を詳細かつ具体的に解説します。

1.雇用契約と労働契約

雇用契約

雇用契約は、企業(雇用主)と従業員との間で交わされる契約のことです。この契約により、従業員は自身の労働を提供し、企業はそれに対して報酬を支払います。雇用契約は、一般的には、労働条件、勤務地、勤務時間、休日、給与などの基本的な雇用条件を明確にするために締結されます。

雇用契約内容の詳細解説

雇用契約は、中小企業においても非常に重要な書類です。この契約書は、従業員と企業の間の様々な条件を明確にし、双方の期待を一致させる役割を果たします。ここでは、雇用契約に含めるべき主要な項目を、具体的な例と共に解説します。

労働条件

労働条件には、勤務地、勤務時間(始業・終業時間)、休憩時間、休日(週休日数、年間休日数、有給休暇)、残業の取扱いなどが含まれます。例えば、「勤務時間は9:00〜18:00、休憩時間は12:00〜13:00。年間休日は120日、有給休暇は法定通り付与」といった形で記載します。

給与

給与の額、支払日、支払方法(銀行振込など)、給与計算の基準(時間給、月給など)、賞与の有無とその支払条件、昇給の有無とその基準などを明記します。
例:「月給は基本給200,000円、毎月末日に支払い。賞与は業績に応じて年2回、夏季と冬季に支給」。

試用期間

試用期間の有無とその期間、試用期間中の労働条件(給与、労働時間などが本採用時と異なる場合はその詳細)を記します。例えば、「試用期間は入社後3ヶ月間で、この期間中の給与は本採用時の90%とする」。

勤務評価と昇進

勤務評価の方法、評価のタイミング、昇進・昇格の基準や手続きについて説明します。これにより、従業員は自身のキャリアパスを理解しやすくなります。

福利厚生

健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険の加入条件、退職金制度、社員割引、健康診断、研修制度などの福利厚生に関する情報を記載します。

従業員の義務と禁止事項

企業秘密の保持、競業避止義務、副業の禁止または条件、社内規則の遵守など、従業員に求められる義務や守るべき禁止事項を明記します。

解雇と退職

解雇の条件(解雇予告期間、解雇の通知方法、解雇の理由)、自己都合または会社都合による退職時の手続き、退職予告期間について詳述します。

中小企業の人事担当者は、雇用契約を作成する際にこれらの項目を網羅的に検討し、企業と従業員双方にとって公正で理解しやすい契約内容を目指すべきです。

また、法律や労働基準に関する最新の情報を常に把握し、契約内容を適宜更新することが重要です。こうすることで、従業員との間で生じ得るトラブルを未然に防ぎ、安心して働ける環境を提供することができます。

労働契約

労働契約は、雇用契約とほぼ同義で使用されることが多いですが、特に労働者の労働を提供する義務と、雇用主がその労働に対して報酬を支払う義務を明確にした契約を指します。労働契約は、口頭での合意だけではなく、明文化されることが法律で求められています。これにより、万が一、労働条件についてのトラブルが発生した際に、双方の約束事を証明することができます。

就業規則の役割

就業規則は、企業が労働契約の詳細を具体的に定めたルールブックです。企業内の労働条件、勤務時間、休憩・休日の取り扱い、給与の計算方法、福利厚生、従業員の懲戒規程など、労働に関わる多岐にわたる規則を網羅します。就業規則は、企業が従業員に対して公平な取り扱いを保証するための重要なツールであり、労働基準監督署への届出が必要です。

労働協約と労使協定

労働協約は、労働組合と企業(または企業グループ)との間で締結される契約で、労働条件や雇用のルールに関する合意事項が定められます。労使協定は、企業と従業員代表(または労働組合)との間で、特定の労働条件(例:時間外労働の扱い)について合意した契約のことを指します。これらの協定を通じて、企業と従業員は労働条件についての合意を形成し、トラブルの予防や円滑な労働関係の構築を目指します。

中小企業の人事担当者の皆さんは、これらの基本的な概念を理解し、適切な運用を心がけることで、従業員との信頼関係を築き、企業の安定的な成長を支える重要な役割を果たします。次のセクションでは、具体的な運用方法やトラブル回避のポイントについて詳しく見ていきましょう。

労働契約の詳細解説

労働契約は、先程もお話ししましたが、雇用関係の基盤となる重要な文書です。この契約によって、労働者と雇用主の間の労働に関する条件が明確にされ、双方の権利と義務が定められます。ここでは、労働契約を構成する基本要素について、具体的に解説します。

労働契約の構成要素

1. 契約当事者

契約を結ぶ双方、すなわち労働者と雇用主(企業や組織)の情報を記載します。これには、フルネーム、住所、連絡先などが含まれます。

2. 職務内容

労働者が担当する職務の内容を具体的に記述します。これは、職務の範囲を明確にすることで、将来的な誤解を避けるために不可欠です。例えば、「営業部に所属し、地域内のクライアントへの製品プレゼンテーション及び販売活動を行う」という記述が考えられます。

3. 雇用期間

契約の有効期間を明記します。これは、正社員(無期労働契約)、契約社員、アルバイト・パート(有期労働契約)など、雇用形態によって異なります。有期契約の場合は、契約終了日を具体的に記載します。

4. 労働時間と休憩

労働時間、休憩時間、休日に関する情報を詳細に記します。これには、1日の始業と終業時間、休憩時間の長さ、週休日数、年間の有給休暇日数などが含まれます。

5. 給与

給与の額、支払い日、支払方法、賞与の有無とその条件、昇給の可能性とその基準など、給与に関する詳細を記述します。また、残業手当や交通費支給などの特別手当についても明記します。

6. 福利厚生

社会保険の加入状況、退職金制度、健康診断、研修制度、社員割引など、福利厚生に関する情報を提供します。

7. 義務と責任

労働者が遵守すべき規則や責任を明記します。これには、業務上の秘密保持、職場のルールや規範の遵守、安全衛生管理に関する責任などが含まれます。

8. 解雇条件

解雇の予告期間、解雇の条件(業務上の理由、能力不足、経済的な理由など)、解雇通知の方法に関する情報を詳細に記述します。

労働契約は、労働関係の基本を形成する文書であり、企業と労働者双方の権利と義務を保護するための重要なツールです。

中小企業の人事担当者は、契約書を作成する際にこれらの要素を網羅的に検討し、双方にとって公平かつ透明性の高い内容を目指すことが大切です。また、労働基準法や関連する法律に基づいて、労働契約を適切に管理・更新することが求められます。


2.労働契約の締結

労働契約の締結は、中小企業が新たな才能を迎え、組織を強化する上での重要な第一歩です。ここでは、労働契約の成立から労働条件の明示に至るまでのプロセスを、より詳細かつ具体的に解説します。

イ. 労働契約の成立と労働条件の明示

労働契約の成立プロセス

労働契約は、労働者が仕事の提供を申し出、雇用主がこれを受け入れることで成立します。大抵の場合、面接の後に雇用のオファーが出され、応募者がこれを受諾する形を取ります。しかし、口頭での合意だけでは後々の誤解を招く恐れがあるため、労働条件の具体的な詳細を文書化し、両者の署名を得ることが望ましいです。

労働条件の明示

日本の労働基準法では、雇用主に対し、労働者が業務を開始する前に、労働条件を明確に文書で通知することが義務付けられています。この文書は「労働条件通知書」とも呼ばれ、最低限次の情報を含む必要があります。

  1. 勤務地および職務内容: 労働者がどのような業務を、どこで行うかを明確にします。

  2. 勤務時間と休憩時間: 1日の始業時間と終業時間、休憩時間の長さ。

  3. 休日、休暇、有給休暇: 週休日数、国民の祝日に関する取扱い、年次有給休暇の条件など。

  4. 給与: 給与の額、支払いの頻度と方法、残業手当の有無と計算方法。

  5. 契約期間: 雇用形態が正社員ではない場合、契約の有効期間を明示します。

  6. 退職に関する条件: 予告期間、退職の手続きなど。

ロ. 明示しなければならない労働条件の具体例

雇用契約を締結する際、中小企業の人事担当者は、次の具体的な条件を明確に示すべきです。

  • 給与の支払日: 「給与は毎月末日に支払います」

  • 勤務時間: 「平日9時から18時まで、休憩時間は12時から1時までです」

  • 休日: 「完全週休2日制(土・日)、祝日、年末年始休暇、夏季休暇」

  • 残業の取扱い: 「残業は必要に応じて発生し、事前に申請をして承認を得る必要があります。残業手当は基本給に基づいて計算されます」

  • 雇用形態: 「正社員、試用期間は3ヶ月間です。試用期間中の条件変更はありません」

これらの労働条件を事前に明確にすることで、労働者との間での誤解を避け、円滑な職場環境の構築につながります。また、労働基準法などの法令に遵守することで、企業としての法的な義務も果たすことになります。

中小企業の人事担当者は、これらの基本を理解し、適切な労働契約の締結を通じて、従業員との健全な労働関係を築くことが重要です。


3.労基法における契約に関する規制

労働基準法(労基法)は、すべての労働者を保護することを目的としています。中小企業の人事担当者が特に注意すべき、労基法における契約に関する規制を、わかりやすく解説します。

イ. この法律違反の契約

労基法は、労働者の最低限の権利と保護を定めています。このため、法律で定められた条件よりも不利な条件での契約は、原則として無効です。例えば、最低賃金より低い給与を定める契約や、法定の休日や休憩時間を守らない契約などがこれに該当します。

ロ. 契約期間等

契約期間に関しても、無期限の契約(正社員)と有期限の契約(契約社員、パート、アルバイト)の違いを理解し、それぞれの契約に適した条件を設定する必要があります。特に有期契約は、更新条件、契約期間の上限など、法律で特別なルールが定められています。

ハ. 賠償予定の禁止

労働者が退職する際に、「違約金」や「損害賠償」を予め定めることは禁じられています。これは、労働者が自由に職を選び、変える権利を保護するためです。したがって、退職に際して金銭的なペナルティを課すような契約は無効となります。

ニ. 前借金相殺の禁止

労働者から前借金を受け、給与から自動的に差し引くことは制限されています。これは、給与は労働者が生活を支える基本的な手段であるため、不当な差し引きを防ぐためです。給与からの差し引きには、労働者の同意が必要であり、また、差し引ける金額にも上限があります。

ホ. 強制貯金

労働者に対し、強制的に貯金をさせることも禁止されています。給与の一部を無断で貯金として積み立てる行為は、労働者の同意なく給与を控除することに該当し、労基法に違反します。労働者の自由意志に基づく貯金制度の導入は可能ですが、その際も明確な同意と適切な手続きが求められます。

中小企業の人事担当者は、これらの規制を理解し、遵守することが重要です。労働基準法は、企業と労働者双方の公平な関係を保つための枠組みを提供します。

法律に違反する契約を結ぶことは、企業にとって重大なリスクを伴うため、契約書の作成や労働条件の設定には十分な注意が必要です。適切な労働環境の提供は、企業が持続的に成長し、労働者との良好な関係を築く基盤となります。

4.就業規則・労働協約・労使協定の概要

中小企業の人事担当者が理解すべき、就業規則、労働協約、労使協定について、わかりやすく解説します。これらは、企業が労働者と良好な関係を築くための基礎となります。

イ. 就業規則

就業規則は、企業が労働者に対して設けるルールのことです。勤務時間、休憩時間、休日、給与の計算方法、残業の取扱い、福利厚生、懲戒処分など、労働条件や職場のルールを詳細に記述します。10人以上の従業員を持つ企業は、就業規則を作成し、労働基準監督署への届出が義務付けられています。この規則は、新しい従業員が入社した際に、仕事のルールを理解するためのガイドラインとなります。

ロ. 労働協約の概要

労働協約は、労働組合と企業(または企業グループ)が交渉を通じて合意した労働条件をまとめた契約です。賃金、労働時間、安全衛生、福利厚生、雇用の安定など、幅広い項目にわたって具体的な条件が定められます。労働協約は、就業規則とは別に、労働組合のメンバーにのみ適用されることが多いですが、その条件はしばしば非組合員にも影響を与えます。

ハ. 労使協定の概要

労使協定は、労働基準法に基づいて、特定の労働条件に関して企業と労働者(またはその代表)が取り決める合意のことです。特に時間外労働や休日労働に関する協定(いわゆる「36協定」)が知られています。この協定により、法定の労働時間を超える労働や休日労働が可能となりますが、労働者の健康保護を目的とした厳格な規制のもとで行われます。

これらの規則や協約は、企業と労働者が互いに理解し合い、公平な労働環境を実現するための基盤となります。中小企業の人事担当者は、これらを適切に管理し、更新することで、労働関係のトラブルを防ぎ、企業の成長を支える役割を担います。

就業規則、労働協約、労使協定を通じて、企業と労働者はお互いの権利と義務について明確な合意を形成し、健全な職場環境の構築を目指します。中小企業においても、これらの規則や協約の適用と遵守は、持続可能なビジネス運営において非常に重要です。

5.労働契約・就業規則・労働協約・法令間の関係および優先順位

中小企業の人事担当者の皆さんに向けて、労働契約、就業規則、労働協約、そして法令の間の関係と優先順位について、わかりやすく解説します。これらの理解は、公平で法令に則った労働環境を整備する上で欠かせません。

イ. 労働契約と法令との関係

労働契約は、企業と労働者の間で直接結ばれる契約です。この契約で定められる労働条件は、必ず法令に準じていなければなりません。

つまり、労働契約で合意された内容が労働関連法令に違反している場合、その違反部分は無効となり、自動的に法令が優先されます。例えば、最低賃金法に基づく最低賃金以上を支払うことが義務付けられています。

ロ. 労働契約と就業規則との関係

就業規則は企業が定める労働に関する規則の集まりです。労働契約が個々の労働者と結ばれるものであるのに対し、就業規則は企業内の全従業員に適用されます。

労働契約で特に定めがない場合、就業規則が労働条件の一部として適用されることが一般的です。しかし、就業規則が労働契約よりも不利な条件を定める場合、労働契約の条件が優先されます。

ハ. 労働契約と労働協約との関係

労働協約は、労働組合と雇用主との間で交渉され、合意される労働条件です。労働協約が存在する場合、その協約に記載されている労働条件は、個々の労働契約の条件よりも優先されることが多いです。これは、労働協約が一般的により良い労働条件を労働者に提供するために交渉されるからです。

ニ. 就業規則と法令・労働協約との関係

就業規則は、法令の範囲内で企業が独自に定めることができますが、労働基準法などの法令に反する内容を含むことはできません。また、労働協約がある場合、就業規則はその労働協約に矛盾しないように整備される必要があります。基本的に法令、労働協約、就業規則の順に優先順位があり、労働者にとってより良い条件が適用されます。

このように、労働契約、就業規則、労働協約、法令の間には、明確な関係と優先順位があります。中小企業の人事担当者は、これらの基本を理解し、日々の業務に活かすことが大切です。

企業が法令を遵守し、労働者の権利を尊重することは、信頼される企業文化を築き、長期的な成功につながる土台となります。

6.就業規則

就業規則は、企業と従業員の間で守るべきルールや労働条件を定めたものです。ここでは、中小企業の人事担当者が知っておくべき、就業規則の作成と届出、周知義務、記載内容、減給制裁の制限について解説します。

イ. 就業規則の作成と届出・周知義務

作成と届出

10人以上の従業員を持つ企業は、就業規則を作成し、労働基準監督署に届出することが法律で義務付けられています。就業規則を作成する際には、労働者の健康と安全を守る観点から、労働時間、休憩・休日、給与計算方法などの基本的な労働条件を明確に記載する必要があります。

周知義務

作成した就業規則は、労働者に対して周知する必要があります。これは、掲示板への掲示、個別に配布する冊子の形式、または電子的な方法で行うことができます。重要なのは、全ての従業員が容易に規則を確認できる状態にすることです。

ロ. 就業規則に記載する労働条件

就業規則には、以下のような労働条件を詳細に記載します。

  • 労働時間、休憩時間、休日、有給休暇

  • 給与の計算方法、支払日、賞与に関する規定

  • 残業手当や休日労働に対する手当

  • 健康診断、安全衛生に関する取り組み

  • 福利厚生に関する内容

  • 従業員の評価、昇進、異動、退職に関する基準

これらの内容を明確にすることで、労働者と企業間のトラブルを未然に防ぎます。

ハ. 就業規則に減給制裁を定める場合の制限

減給制裁を定める場合には、以下のような制限があります。

  • 減給の上限:一定期間(1ヶ月)の減給額は、従業員の平均賃金の一定割合を超えてはなりません。

  • 減給の手続き:減給を行う前に、従業員にその理由を通知し、説明する機会を与える必要があります。

  • 明確な基準:減給の条件や計算方法は、就業規則に明確に記載し、従業員に周知する必要があります。

労働基準法やその他の法令は、従業員を保護する観点から、減給やその他の懲戒に厳しい制限を設けています。そのため、就業規則に減給制裁を定める場合は、これらの法的要件を遵守することが重要です。

中小企業の人事担当者は、就業規則の作成、届出、そして従業員への周知を適切に行い、減給制裁を含む懲戒規定を設ける際には法令に則った運用を心掛けることが求められます。これにより、企業と従業員間の信頼関係を築き、健全な職場環境を維持することができます。

7.労使協定の種類

労使協定とは、企業(使用者)と労働者(またはその代表)との間で結ばれる合意のことです。これにより、労働条件や職場のルールに関する特別な取り決めが可能になります。

特に中小企業においては、柔軟な労働環境を整えるために重要な役割を果たします。ここでは、労使協定の主な種類とその内容について、わかりやすく解説します。


イ. 時間外労働に関する協定(36協定)

最も一般的な労使協定の一つが、「36協定」とも呼ばれる時間外労働に関する協定です。これは、労働基準法第36条に基づき、時間外労働や休日労働について、法定の上限を超える労働を行う場合に必要とされる協定です。具体的な時間外労働の上限時間、休日労働の可否、それに伴う手当の支払い条件などを定めます。

ロ. フレックスタイム制に関する協定

フレックスタイム制とは、始業・終業の時刻を労働者が自由に設定できる勤務形態のことで、これに関する協定も労使協定の一つです。この制度を導入することで、従業員は仕事と私生活のバランスを取りやすくなりますが、導入には労使間の合意が必要です。

ハ. 代替休暇に関する協定

時間外労働や休日労働に対して、追加の金銭支払いではなく、代替休暇を与える取り決めに関する協定です。労働者が長時間労働の代わりに休日を取得できるようにし、ワークライフバランスの改善を図ります。

ニ. 短時間労働者に関する協定

パートタイムやアルバイトといった短時間労働者の待遇に関する特別な取り決めを定める協定です。短時間労働者への福利厚生の提供や、正社員への登用基準などを明確にすることが目的です。

労使協定は、企業と労働者が共に納得のいく労働環境を実現するための有効な手段です。中小企業の人事担当者は、これらの協定を通じて、労働条件の柔軟な調整を図り、従業員の満足度向上や生産性の向上を目指すことができます。

協定の締結に際しては、労働者の意見を十分に聞き、法律に則った形で適切に文書化し、周知することが重要です。これにより、法令遵守はもちろん、企業文化の向上にもつながります。

労働契約・就業規則・労働協約・労使協定に関するQ&A

Q1: 労働契約は口頭でも有効ですか?

はい、口頭での合意も法律上は有効な労働契約となります。しかし、後々のトラブルを防ぐため、契約内容は書面で残しておくことが推奨されます。

Q2: 就業規則の変更はどのように行われますか?

就業規則の変更には、労働者の代表との協議が必要です。変更後の規則は、改めて労働基準監督署への届出が必要で、変更内容を従業員に周知する必要があります。

Q3: 労働協約とは何ですか?

労働協約は、労働組合と雇用主との間で交渉を通じて合意される労働条件や職場環境に関する協定です。この協定は、契約当事者に対して法的な効力を持ちます。

Q4: 労使協定の締結方法は?

労使協定を締結するためには、雇用主と労働者代表または労働組合との間で合意を形成し、協定内容を文書化する必要があります。特に時間外労働の規制に関する「36協定」は、その後労働基準監督署への届出が求められます。

Q5: 就業規則はどんな企業でも作成しなければなりませんか?

10人以上の従業員を持つ企業は、就業規則の作成と労働基準監督署への届出が法律で義務付けられています。10人未満の企業でも作成することは可能で、推奨されます。

Q6: 時間外労働の上限はどのように定められますか?

時間外労働の上限は、「36協定」により定められます。法律で定められた基本的な上限を超える場合には、労使間での協定が必要となります。

Q7: 労働協約が就業規則と矛盾する場合、どちらが優先されますか?

一般的に、労働協約の条件が就業規則よりも労働者に有利な場合、労働協約が優先されます。法律は労働者の保護を最優先としているためです。

Q8: フレックスタイム制の導入には何が必要ですか?

フレックスタイム制を導入するには、労使協定を結び、その内容を就業規則に反映させる必要があります。また、労働時間の管理方法を明確にし、従業員に周知することも大切です。

Q9: 減給制裁を定める際の注意点は?

減給制裁を定める際には、その基準や条件、上限額を明確にし、就業規則に記載する必要があります。また、懲戒の適用前には、従業員に対し説明の機会を与えることが法律で求められています。

Q10: 労使協定を届出ずに適用することはできますか?

労使協定の中でも特に、「36協定」など一部は労働基準監督署への届出が義務付けられています。届出を行わないと、その協定は無効とみなされ、違法な労働状態になる可能性があります。そのため、適切な届出が必要です。


この記事の最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。
中小企業の人事担当者の皆様にとって、労働契約、就業規則、労働協約、そして労使協定は、従業員との円滑な関係構築、良好な職場環境の維持、そして企業文化の発展において、欠かせない要素です。

今回の記事が、そんな重要な役割を担うこれらのテーマについて、理解を深める一助となり、皆様の会社運営における具体的な取り組みの一端に活用いただければ幸いです。


労働法規は時に複雑で理解しづらいものですが、その根底には従業員を守り、公正な労働環境を確保するという、大切な目的があります。本記事が、そのような法の精神を理解し、皆様の職場での実践へと繋がるきっかけとなればと思います。また、労働契約や就業規則の作成、労使協定の締結など、日々の業務に直結する具体的なアクションプランの立案にも役立つ内容となっています。

人事担当者としての役割は多岐にわたり、時には難しい決断を迫られることも少なくありません。しかし、従業員と企業が共に成長し、より良い未来を築いていくための、大切なステップであることを忘れないでください。この記事が皆様のそのような努力に寄り添い、支援することができればと願っています。

皆様のこれからの人事業務における成功を心よりお祈りしております。最後までお読みいただき、再度感謝申し上げます。


ぼっち人事の最強化計画

この記事を最後までご覧いただき、心から感謝申し上げます。
中小企業の人事担当者として、皆さまが直面する多様な課題に対して、より実践的なアイデアや効果的な戦略を提供できることを願っています。

皆さまの未来への一歩が、より確かなものとなるよう、どうぞこれからも一緒に前進していきましょう。

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