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WEEK 8: アメリカの「共同親権」制度 - ダディ、もう日本人でいちゃ、ダメなの? / NYCで「実子連れ去り」の被害にあった子供たち

CHAPTER 18: STROLLER


 水曜日

 放課後、長男は、わたしを見つけると走ってきました。
 次男は、新しいストローラーに乗せられてきました。 

 今回のストローラーは、前回の比べたらまだマシだが、相変わらずのミニマムな機能しかないプラスチック製のものでした。
 あれ、この前のはどうしたの?と聞くと、長男は「同じビルの住んでる、子供がいる人にあげた」と言いました。
 同じシェルターに住んでいる、仲良くなったお母さんとかにあげたのかな。
 あり得ない話ではないけど、本当なのだろうか?
 長男の言い方が、どこか不自然だと思ったのです。

 けどもう長男に、色々と聞くのはやめました。
 彼にとってプレッシャーになっては可哀想だし。
 普通に宿題をさせたあと、おやつを食べながらテレビを観て、そのあとはおもちゃで遊んで、ご飯を食べて。
 放課後の午後3時前から、次の日の朝8時すぎに登校するまでだから、9時間ぐらい寝ることを考えても、子供たちと過ごせる時間は一週間で正味9時間しかないし。
 この日、長男も次男も、新しい靴を履いてました。
 ストローラーや靴などを一気に買ったということは、どこからか資金を得たんだろう。
 最高裁に国選弁護士はつかないから、やっぱり、あっちも弁護士を雇うな。
 そう確信しました。

CHAPTER 19: EXHIBITS


 木曜日

 午後1時半。
 弁護士のオフィスで、最高裁に提出する証拠(Exhibits)をまとめました。
 わたしも自分のMACと書類を持っていき、会議室で、わたしと弁護士とパラリーガルの3人。3時間ほどかけての作業でした。

 日本でのDV被害者側の対抗策の一つに、携帯で動画を撮るという話がよく出てきますけど、アメリカの裁判で動画を証拠として出すのは、非常に難しいと説明されました。
 まずプラバイシーの問題がある。
 相手が承認してないのに撮影されたものは「盗撮」になるから、使えない場合が多い。
 フォックス会長のロジャー・エイルスがセクハラで訴えられた時も、被害者はセクハラの一部始終を録音をしましたけど、ニューヨーク州の法律だと、相手が承認していない形で録画されたものは、法廷で証拠として使えない。だから、わざわざニュージャージー州から訴訟を起こした。そんな記事を読んだことがあるので、なんとなくそれはわかっていました。
 相手の承認なしに撮られた動画や音声よりも、毎日しっかりと日記・記録をつけた方が証拠能力があると知っていたので、わたしは、過去半年にわたり、母親のある「問題」について、毎日記録をとっていたんです。同時にリアリタイムで、記録に残るメールという形で、アメリカ人の友だち2人、そして日本人の友達だち2人に毎日のように報告してきました。
 70ページ近い、日記・記録を見せて、これを証拠で使えますか?とわたしは弁護士に聞きました。
 こんなに長いものを出しても、裁判長は全部読んでくれない可能性が高いから、重要な部分だけを抜粋しましょう、と言われました。

CHAPTER 20: DINNER

 
 金曜日

 長男の友達の母親に誘われて、イタリアンを食べに行きました。
 前述の「スクールママ友」とは違う、もう一人のスクールママ友なんで、ここではスクールママ友2ということにします。
 このスクールママ友2は、色々と教えてくれました。
 「近所のお母さんたちは、あなたがどれだけ子供たちと時間を過ごしてきたのかを、みんな知ってるわよ。公園でもミュージアムでも、いつでも一緒なのはあなただったし、コインランドリーのおばさんも、あなたと〇〇(長男)はしょっちゅうきてけど、母親は見たことがないと言っているわ。子供の世話を主にしてきたのはあなただと、裁判で証言しても良いわよ」
 ありがたいことでした。
 でも証人を法廷に呼んでみたいな、映画やドラマのような展開に持って行くためには、大金を使わないといけないので「もしかしたらだけど、宣誓供述書にサインしてと頼むかもしれない、その時はよろしくね」と説明しました。

 それよりも気になったのは、子供たちのことです。
 最近会った?と聞いたら「ついこの前、〇〇公園で会ったわよ」と教えてくれました。
 家から徒歩5分ぐらいのところにある、近所の子供たちやその親御さんたちがよく行く公園です。
 「公園で色んな人に、あなたと喧嘩した時の動画を見せて、自分はDV被害者だと言いふらしていたわよ。それは大変ね、XXXを紹介しようか?と親身に相談していた母親もいたけど、わたしが後で実をそういうことではないと、みんなに説明したの」
 このスクールママ友2は続けました。
 「あなたたちのプライバシーのことだから、こういった動画は見せるべきではないと思うの。けど〇〇(母親)から全部観てと言われたから、わたしも観たのよ。〇〇(もう一人のスクールママ友)も観たから、彼女とも話したんだけど、そんなに悪くないと言うか、わたしたちの旦那の方がもっと大声で怒鳴るわよ。だってあの動画見たとき、自分の旦那が怒ってもあの程度なら良いなぁー、と思ったもの。〇〇(母親)は、怒鳴られる、叱れるということに対して免疫が低すぎると思うわ。あの程度でDVだと騒がれたら、夫婦喧嘩もできないと思うの」
 でもNYCのDVシェルターのホームページなどには「自分がDVされたと感じたら、もうDVです」と載っている。
 スクールママ友2は、他の父母たちの間でも話題になっている母親の「問題」についても、この母親からこういう話を聞いた、あの父親もこう言ってた、みんなに連絡してみれば良いわよ。
 みんな、あなたの味方だからと言ってくれました。
 「他のお母さんたちは、子供たちがいるから〇〇(母親)とは普通に接しているけど『大嫌い』だと言っているお母さんも多いわよ。子供たちをシェルターに連れて行くのもおかしいし、それを宣伝するかのようにSNSに載せるなんて最低だと思っている人の方が圧倒的に多いわよ。公園で『なんで裁判官は母親と子供たちを家に戻して、父親に家を出ていけと命令しなかったのかわからない』と〇〇(母親)は言ってたけど、自分から出て行っただけでなく、子供たちまで巻き添いにして、何を言ってるんだろう、とわたしは思ってるわ」

CHAPTER 21: NEW ATTORNEY


 土曜日
 
 母親の国選弁護士から連絡が来たと、わたしの弁護士からメールがありました。
 母親は、最高裁のために弁護士を雇ったそうです、とその名前を伝えてくれたのと「最高裁での動きがないから、親権と保護命令に関して示談できるか話してみましょうか?次の家裁の口頭審理まで親権に関して合意できなければ、もうそれは最高裁に判断を委ねることにして、その場合は、保護命令に関してだけこちらで解決を試みるでもいいと思います。どうしたいのか教えてください」とのこと。

 最高裁のために雇ったと思われる弁護士の名前を、すぐにネットで検索してみました。
 Yelpなどサイトで口コミを確認すると、そんなに評判がいいとは思えませんでした。
 他の弁護士や、友達の弁護士にも聞いてみましたけど、みんな、わたしの弁護士は知っているけど、この弁護士は知らない、でした。
 それなりのお金しか払えない人には、そんなに時間を費やさずに事務的に示談を勧めるようなタイプに思えたので、わたしは、自分の弁護士にこう返信しました。

 最高裁のために雇ったのが本当にこの弁護士なら、親権に関しては、この人と交渉しない方が良いような気がする。
 自分の弁護士費用とか、子供の養育費とか、お金に関しては色々と言ってきそうだけど、子供たちのことに関して、そんなにこだわりがない。なんの根拠もない想像ですけど、写真を見た印象から、そんな気がしたんです。
 ファックス型の黒いメガネに、保守的とは言い難い、アクセサリーのついたスーツ姿。弁護士というより、ファッション業界にいそうな出立ちだったんです。

 もう国選弁護士の方には、最高裁で戦うと説明してるのですから、最高裁の方から、母親の担当弁護士はこの人になりましたという、正式なNotice of Appearance (出廷の告知)が来るかどうか、1、2日待って、何もなかったら、このまま証拠を申請を進めましょう、いうことになりました。

 To be continued…..(続く)


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