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失敗こそ成長の万薬だ/失敗の科学

この本を読もうと思ったのは、「人間が失敗に対して、どういう意識を持っているのか?」気になったから。そして、外科医や航空パイロットといったミスが許されない人達が失敗に対して、どういう姿勢を持っているのか、その実情を見てみたいと思ったのだ。


僕もそうだが、失敗する事は悔しいし、時には辛い。何なら失敗より成功した方が嬉しい。
本書は失敗に対するそういったネガティブな意識を変えてくれる良書だった。

失敗する事は、学びの絶好の機会だ。失敗した原因を知れば、自身を改善する事が出来るし、そこから新たなアイデアや習慣を閃く事だってある。物事を上達していく上で失敗は避けられないし、避けようとすれば、行動は萎縮し、挑戦する意欲も失われてしまう。

頭ではそう理解していても、いざ目の前で失敗が起きれば、自尊心が傷つき、都合よく解釈し、あの手この手を使って失敗から目を背けようとする。

こうした作用が起こってしまう原因として、自尊心を守ろうとする事が挙げられる。それは失敗した後の自分の愚かさや、周りからの非難を避けようとする事だ。

人間は失敗すれば、「自分は出来ない奴だ」というレッテルを自分自身に貼ったり、失敗した後の批判や責任追及を逃れようと隠蔽しようとする場合がある。それは自分の背負う失敗が大きければ大きいほど、歪んだ形で捉えようとしてしまう。

そうした失敗に対する立ち回り方を医療業界や、航空業界を主な例として挙げている。どちらも人命を扱う仕事であり、失敗が人の命を奪う事に繋がりかねない仕事だ。

航空業界は、失敗に対してとても前向きだった。航空機の墜落といった甚大な事故からも、機内でどういうやり取りがあったのか?燃料はどれぐらい残っていたのか?ありとあらゆるデータから原因を追求し、機内設備の見直しや、乗組員に対するレクチャーを行う。

それに対して医療業界は真逆の姿勢を取っていた。手術事故があれば「このような事態は避けられませんでした」とか「こういった事は珍しくないんです」といった風に手術中の事故をあやふやな形で遺族に伝える。これは医者が悪徳という訳ではなく、人体という個体差が無数にある対象に対して、自分達の処置はどうしようもなかったものと片付けられているのだ。

他にも無実の人を有罪と判決してしまった場合や、F1レースチームといったあらゆる業界で、失敗に対する姿勢を書いていた。中には感心するものもあれば、その内部事情に衝撃を受けたものまで様々だ。

失敗に対する取り組み方も、実践的な内容で書いている。課題を分解し、より細かい要素から試行錯誤して改善していく「マージナル・ゲイン」
最初から完璧を目指さず、出せる状態になったらすぐさま実践し、そこから改善を図っていく「リーンスタートアップ」
どれも失敗を積極的に受け止め、成長しようとする意識があるように見えた。

失敗する事にポジティブな印象を受ける人は少ないかもしれない。しかし、失敗する事は成長するまたとない機会だ。失敗から学ぼうとする姿勢を持つ人が多ければ多いほど、その環境で仕事や勉強に対する意欲も増すし、今まで以上の成果を出す事も可能になる。

失敗に対する意識を変える事は、どんな技術的なノウハウ以上に大切なことなのかもしれない。

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