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好きを仕事にするってなんだろう 劇場版SHIROBAKO レビュー

劇場版SHIROBAKOを観てきました。TVアニメはNetflixで観ていたけど、アニメ業界の実態をリアル且つドライになりすぎずに、面白おかしく描いていたのは凄いなと思った。やっぱりリアルさを出そうとすると、味気なくなるし、かと言って誇張した表現は嘘になっちゃうし。その塩梅がとても印象的でした。

自分のことを話すと、僕は今MAアシストをしています。ざっくり言うと、ミキサー助手の藤明日香さんみたいに「回りました〜」って言ってるあの人のような仕事。声を録音して、その整音をする人だ。

僕はいわば好きなことを仕事に出来た人なのかもしれない。厳密に言えば「好きなことに似たような仕事」とも言える。

宮森のお姉さんが言っていた「あんたは好きなことを仕事に出来ていいわよね」という言葉。確かに好きなことを仕事にするのはある種の理想かもしれない。多分そうだ。全く興味もないことを仕事にするよりは、ずっといい。

ただ、その好きにも度合いがある。まぁまぁなのか、四六時中仕事のことを好きで考えてるのか、もはや仕事という次元ではなく生き方とも言えるぐらいなのか。

正直僕は、まぁまぁなやつだった。「自分は何に喜びを感じるのか」を十代の時にぼんやりと感じてやってみたはいいものの、なんか違う。

それもそうだ。趣味として自分に中で完結する楽しさと、他人を交えて感じる充実感、楽しさは似ているようで違う。それに失敗した数だって、何かを継続することだってロクな経験がない。

だから十代の頃のあの野心や熱意は、経験や知識が不十分だったから感じれた感覚なのかもしれない。それにその野心をそのままに真っ直ぐ成就する人は、とても少ない。そして少ないから声も目立つし、みんなに届く。

別に今の仕事が嫌いなわけじゃない。人間関係は良好だし、嫌だなと思う瞬間はあまりない。辞めずに続けたからこそ打たれ強さや、判断能力など、得れてとてもラッキーだと思えることだってある。

ただ、この映画に出てくる人達のように、熱意を燃やし、毎日をあんな風に生きているのかと言われると、それは違う気がしている。

この映画を観た人はどんな感想を抱くんだろう。「やっぱ好きなことを仕事にしている人はいいな」「何かに夢中になれるのはすごいな」。そう思うのだろうか。

僕もこの映画から元気をもらった。仕事を通じてこれだけ生きるエネルギーを放出出来るんだって、それもアニメというものを通して。そこに嘘はないし、観てよかったと思う。

でも、疑問も残った。こんなふうにみんなが生きれるのか?って。確かにあんな風に生きていくことは、仕事が違えど出来るのかもしれない。でも、それは本人の考え方、価値観がどのようなものであるのかも、とても重要になってくる気がする。

登場人物のみんなはスーパーマンだ。あれだけ前向きな人達はそういない。途中で心折れる人、もっと楽な方向に行こうとする人、途中で熱意をなくす人。色んな人がいるはずなのに、あそこには生き残った人しかいない。

映画を観てる時や、見終わった後はとても万能感に溢れる。ああいう風になりたい。頑張ろうって。でも同時に「あんなの超人の世界じゃないの?」と思ってしまう。

人のモチベーションが長続きしないこと、いともたやすく折れてしまうことを知っているし、実感してる。だからそう思ってしまった。

否定的に聞こえたかもしれないけど、僕は決してネガティヴにはなってない。彼らは生き生きしているし、かっこいい。ああいう物語は必要だ。

ただ、自分のできること、やるべきこと、やりたいことは完全には投影しきれないよなと思っただけだ。

目に前のことを全力でこなす。そして前を見続ける。ネガティヴはいっぱい食べていっぱい寝ていっぱい話して直す。そうやって生きていけば良いんじゃないかって思った。



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