ちいさな美術館の学芸員

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ちいさな美術館の学芸員

📕『学芸員しか知らない 美術館が楽しくなる話』発売中です。東京のとある美術館で働く学芸員のお仕事コラム。気楽に書いてるので、気楽に読んでいってください。 https://www.amazon.co.jp/dp/4863113927

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はじめまして、「ちいさな美術館の学芸員」です。東京のそこそこ小さな美術館に勤めています(とか言うと怒られるな…)。 へー学芸員ってこんなこと考えながら働いてるのか。案外大したこと考えてないな、と思われそうですが、まぁ実際その通りなので、気負わず背伸びせずお仕事コラムを綴っていこうと思います。 過去記事一覧全部読むのは大変ですから気になるタイトルなどを手がかりに、過去記事の山に分け入ってください。 235 「セルフ・ブラック」ができる人とできない人で、おそろしいほど差がつ

    • 「セルフ・ブラック」ができる人とできない人で、おそろしいほど差がついてしまう残酷なホワイト社会

      「セルフ・ブラック」ができる人とできない人で、おそろしいほど差がついてしまう残酷なホワイト社会。それが現代日本だと思っています(海外は知らない)。 民間企業や役所に限っての話にはなりますが、昭和、平成に比べれば、今は働く人の権利がしっかりと守られています。もちろん「うちの職場はまだまだだよ」と思う人もいるでしょうが、それでも傾向としては改善の方向に向かっているはずです。正面切って「残業代はつかないけど、仕事が終わるまで帰るなよ」とか「新人が有給とろうなんてずうずうしいんだよ

      • 企画を通す学芸員のコミュニケーション術

        ふだん私たちは日本語で会話をしています。日本に暮らしている限り、日本語が使えればどんなシチュエーションでもコミュニケーションがとれます。でも、言葉が通じるからと言って、必ずしもきちんと意思疎通ができているとは限りません。 とりあえず私の仕事を例にしてみます。 美術館では展覧会を実際に企画する役割の学芸員と、美術館運営のために必要な事務作業を行う職員(美術館によって色々な呼び方があるので、とりあえず雑に「事務方」と言います)とがいます。企業などではフロントオフィスとバックオフ

        • 「ストレングス・ファインダー」の落とし穴

          「自分の特性を見つけよう」「強みを活かした仕事をしよう」というようなことをよく言いますよね。「ストレングス・ファインダー」でしたっけ。そんな本もありますよね(読んでないけど)。 基本的には、人それぞれ個性・長所・強み・才能を活かして生きていくことには賛成です。でもあまり早くにこの思想に染まり過ぎるのも危険だな、と思っています。なぜならこの考え方を裏返すと、「苦手なことや短所の部分でいくら努力しても、その分野がもともと好き・得意な人には叶わないのだから、無駄な努力となるのでや

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          美大生に3つ聞いてみた [結果発表]

          先日、下のような質問をしてみました。回答は匿名のアンケートにて募集。 X(Twitter)で告知したのですが、わりと答えを書き込んでくれる人がいてありがたかったです(何の特典もなくてごめんなさい)。 さて、その結果やいかに。 (1)あなたはどうしてその美大・芸大に入学したのですか? この問いに対しては「美術が好きだから」「美大に憧れがあったから」という内容の答えが多かったです。「好きだから。他になにが必要?」という潔さがあって良いなぁと思いました。 本当は数ある美大・

          美大生に3つ聞いてみた [結果発表]

          会うべき人には会うべき時にきっと会える(ので焦らない焦らない)

          生きていく上で人脈は大事です。 ただ人脈が大事だからって、とにかく人とつながればいい、有力者と面識があればいい、と考えて闇雲に名刺交換しまくるというのは、はたして意味があるのだろうかと私は疑問に思っています。 会うべき人とは会うべき時が来れば自然と会える。 逆に、その時が来る前に無理やり会っても、何か棚ぼた的に良いことが起きるわけではない。これが私の基本的な考えです。 今でも忘れられないのですが、私は大学院生になった時に当時助手(今は助教と言いますね)をしていた先輩から

          会うべき人には会うべき時にきっと会える(ので焦らない焦らない)

          学芸員の正規・非正規/男性・女性

          美術館・博物館で働く学芸員は、男性より女性の数の方が多いです。 少し古いデータになりますが、文部科学省の社会教育調査(2018年度)によると「男性学芸員482人、女性学芸員752人」だそうです。このことについては、一度noteで触れたことがあります。 その時よりも少し踏み込んだ話になるのですが、全国のどの美術館・博物館でもまんべんなく男性よりも女性の比率が高いわけではありません。 たとえば、考古系の博物館だと男性の方が多いですね(きちんと統計があるわけではありませんが)。

          学芸員の正規・非正規/男性・女性

          頭がいいなーと尊敬できる人ほど頭を使う前に足を使っているという事実

          この人にはかなわないなー、という人がいます。大先輩はもちろん、同世代にも、下の世代にも。 私は顔が広くないので、あくまで自分の業界内の話ですが、顔が広い人は他業種まで含めてそうしたすごい人に出会う機会があるでしょう。 すごいというのは、まぁ単純に実績のことだと思ってください。ひっくり返っても自分にはできないようなことを成し遂げている人を、みなさんもそれぞれの世界で思い浮かべることができるのではないでしょうか。 私は人間の生まれ持った能力って、基本的にそんなに差がないと思っ

          頭がいいなーと尊敬できる人ほど頭を使う前に足を使っているという事実

          いきのこり日本美術史vol.1 雪舟等楊

          先にこちら(↓)をお読みください。 いきのこり日本美術史vol.1 雪舟等楊いきのこり日本美術史の初回を飾る画家は、雪舟(1420年〜1506年頃)です。 日本美術に特別詳しくなくても、雪舟の名前を知らないという人はいないでしょう。画聖と呼ばれたり、小僧時代に足でネズミの絵を描いた逸話が語られたり、とにかく「すごい画家」の代名詞的存在です。 でもその生涯を見ていくと、伝説上の人物から、苦労しながらもがいた一人の人間にだんだんイメージが変わってくるはずです。さて、雪舟はどんな

          いきのこり日本美術史vol.1 雪舟等楊

          書籍化企画 『いきのこり日本美術史』(公開プレゼン in note)

          ありがたいことにnoteをコツコツ更新していたら、そこから書籍化の話が進み『学芸員しか知らない 美術館が楽しくなる話』(産業編集センター)を出版することができました(重版も決まり好評発売中)。 一度経験すると、ふとした時に書籍のアイデアが浮かぶようになります。「あ、こんなテーマも面白いかも」みたいに。 とは言え、自分のアイデアは客観視できません。我が子(アイデア)は誰よりも可愛く思えてしまうものですからね。というわけで、ここで頭出しをして反応を見たいと思います。 その名も

          書籍化企画 『いきのこり日本美術史』(公開プレゼン in note)

          【試用版】美大生が美術史を学ぶということ論

          昨年からとある大学の文学部で日本美術史を教えています。と思ったら、今度の4月からはとある美大でも日本美術史を教えることになりました。こりゃ大変だ。 文学部と美大では、きっと学生たちの学ぶ姿勢もちがうでしょう。心に響くポイントも異なるでしょう。 だからここで一度腰を据えて、私の中のOSをバージョン1.0「文学部のための美術史講義」から、バージョン2.0「美大生のための美術史講義」へバージョンアップしなくてはいけません。 美大は様々な実技指導、創作指導が基本であり、それに加え

          【試用版】美大生が美術史を学ぶということ論

          ギャラリートーーク!

          学芸員は、お客さんの顔が見えません。これは実はやばいことです。 美術館に限った話ではありません。商品やサービスの受け手の存在が希薄になると、どうしても独りよがりのものを生み出しがちです。 店主のこだわりが行きすぎた独創的なラーメン。 開発者のセンスを見せつけることに意識がいって使いにくいアプリ。 巷にあふれる「これ何で作ったの?」という商品は、たいていお客さん不在という原因が隠されています。 展覧会もこれと同じで、学芸員がずっと机にむかって頭をひねって企画を立てていると、

          ギャラリートーーク!

          高層ビルのてっぺんまで登る学芸員

          どう考えても、学芸員は肉体労働だなと思う場面があります。 重い作品を持つ時ももちろんそうなのですが、一番痛感するのは照明のセッティングの時です。これはすべての美術館・博物館にあてはまるわけではありませんが、うちのようにスポットライトの設置を学芸員自身が行うところなら同じはず。 作品をすべて展示して、キャプションもつけたら、最後の仕上げとして照明をあてていきます。みなさん、展覧会を見に行ったら是非天井を見上げてください。たくさんのスポットライトがそこかしこに設置されているは

          高層ビルのてっぺんまで登る学芸員

          鬼に笑われつつ(2023年最後の投稿)

          暦(こよみ)というのは偉大な発明だな、としみじみ思います。 暦がなければ、「今日」が「昨日」になり、「明日」が「今日」になる、この繰り返しが延々と続くだけ。 それが1週間や1ヶ月や1年と区切られることで、「今月中にこれをしよう」とか「今週はゆっくりして来週からがんばろう」とか、人それぞれペース配分ができるようになりました。 市民マラソンも、たいていは1kmごとに表示があり、「ここが折り返し地点」なんていう看板も出ています。そういう区切りの表示が何もなく、さぁはるか彼方のゴー

          鬼に笑われつつ(2023年最後の投稿)

          2つのトーハクやまと絵展[1993年/2023年]

          どうも、メリークリスマス。 思いつきでやってみたアドベントカレンダー企画「マイベスト展覧会2023」。おかげさまで24日まで、たくさんの方が日替わりで素敵な記事を発表してくれました。 べつに大トリをつとめるとかそういったつもりはないのですが、最後の25日がまだ空きがあったので、せっかくだし私も何か書こうかなと今年を振り返ってみました。 色々記憶に残る展覧会はありました。 こうやって見返すと、今年の後半から公私ともに忙しくなり、ぜんぜん展覧会レポートが書けていませんね(

          2つのトーハクやまと絵展[1993年/2023年]

          展覧会ができるまで(美術館の舞台裏)vol.22 記録をのこす

          美術館で展覧会が開催されるまでの工程を、学芸員の立場からひとつひとつ解説していくコーナー、いよいよ最終回です。 ■前回の記事(↓) ■全工程一覧はこちら(↓)をご覧ください。 36. 事業報告書を作成する展覧会も無事おわり、作品をすべて片付け、お借りしていた作品はきちんと返却し、基本的にこれで一つの展覧会は完全に終了します。 ただ、場合によってはもう一仕事ある場合があります。 その展覧会が外部から助成金を受けていたり、企業から後援を受けていたりすると、展覧会終了後に

          展覧会ができるまで(美術館の舞台裏)vol.22 記録をのこす