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学芸員の正規・非正規/男性・女性

美術館・博物館で働く学芸員は、男性より女性の数の方が多いです。

少し古いデータになりますが、文部科学省の社会教育調査(2018年度)によると「男性学芸員482人、女性学芸員752人」だそうです。このことについては、一度noteで触れたことがあります。

その時よりも少し踏み込んだ話になるのですが、全国のどの美術館・博物館でもまんべんなく男性よりも女性の比率が高いわけではありません。
たとえば、考古系の博物館だと男性の方が多いですね(きちんと統計があるわけではありませんが)。発掘現場の肉体労働などがある分野ですので、そもそも大学・大学院の時点で進路に選ぶ女性が少ないからでしょう。

こうした専門ジャンル以上に、如実に男女比率に差が出る要因として、正規か非正規かという雇用形態が大きく関わっています。
はい、とてもシビアな話をこれからします。

学芸員の募集をみると、「会計年度任用職員」「任期付職員」「契約社員(契約更新あり)」そんな単語ばかりが並んでいます。つまり数年後どうなるか分からないという不安定な雇用形態。
信じがたいことに、公立の施設ですら任期付の学芸員しか置かないところが存在するのです(勘弁してくれ……)。
そして、こうした募集をする施設には男性よりも女性の学芸員が多いという現実があります。

逆に、終身雇用の正規採用をしている美術館・博物館に目を向けると、肌感覚ですが学芸員の男女の割合は半々かな、という感じです。

これを聞いて「不安定な働き方を女性ばかりが押しつけられている!」と憤る方もいるでしょう。ただ、非正規雇用の学芸員の募集をすると、応募してくるのは女性ばかりでそもそも男性は応募すらしてこないそうです。
必然的に、そうした施設は女性学芸員ばかりになりますよね。

正規雇用の募集に対しては、男女ともに応募が来るので純粋な実力勝負で男性が採用されたり、女性が採用されたり、自然と男女比のバランスが保たれるようです。

正規でしか働こうとしない男性と、非正規でも働こうとする女性。これについては色々な受け取り方があるでしょう。
いまは共働き世帯が過半数を超えていますが、実際問題、女性が一家の大黒柱として家計を担う(例えば不安定な立場の男性パートナーを支える)というパターンは珍しいでしょう。理想の話は置いておいて、男性の方が一家の大黒柱にならなければならないという社会的圧力があります。

つまり「不安定な働き方を女性ばかりが押しつけられている!」という見方は裏を返せば「安定的な働き方しか男性は許されない!」と言い換えることもできるのです。

男も女も楽じゃないよなぁ、というまとめでは許されない気もしますが、今日はこの辺で(急に社会派の回)。みなさんはどう思いますか。コメントでもXでも。

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