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1年でピザ窯をつくった話 3 「GW前編:山が動く」

ゴールデンウィーク突入

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上の写真をご覧ください。

こちらは、妻のご実家の庭の一角にある、年末に完成するピザ窯建設予定地となっております。撮影された1月6日から早4ヶ月以上経ちますが、未だ着工されておりません。
一体どうなっているのでしょうか。


いやぁ、どうなっているんでしょうかねぇ。ハハハ。

…なんて悠長なこと言ってる場合では無い。
あれから、あっという間に冬が終わり、桜の季節が過ぎ去り、世間ではゴールデンウィークに突入しようとしていた。

はじめはお酒の勢いもあったにせよ、僕が「ピザ窯作りましょう」と宣言してしまった手前、このまま何も進められないとなると、とんだピエロになってしまう。ピエロの格好をし、年末の餅つきで妻の親戚たちを前におどけている自分。お調子者な性格上、これはこれで容易に想像できてしまう光景ではあるけれど、このまま作らずに終わらせてしまうには勿体無い。
「単層式+ドーム型」のピザ窯で行こうと決めたところまではいけたのだ。次の一歩。あとは完全に僕のやる気の問題だった。

この状況を察知してなのか、親方と妖精様から一報が入る。

「来週からのGW中にピザ窯の作業はじめるなら、車でホームセンターに連れて行ってあげるから、2人で着替え持ってきてウチで一泊したらどう?」

前回もそうだったけれど、いつも最高のタイミングでパスをくださる義父母。千里眼とはこのことか。
動かざること山の如しだった僕は、すでに四の五の言っている場合ではなく、このありがたい提案にがっつりと乗らせていただくことにした。

いざ、ホームセンターへ

2019年4月28日。
朝から作業着とお泊まりグッズを準備し、朝食を済ませてしばらくしたところで、義父母が自宅まで車で迎えにきてくれた。
僕と妻を後部座席に乗せ、車はホームセンターへと向かう。
いよいよ今日から本格的に作業をはじめるということで、車内はどこか高揚感が漂っている気がした。僕の思い過ごしなのかもしれないけれど。

ホームセンターに到着。
僕は実家が都内にあり、結婚して郊外に住むまで縁が無かったけれど、ホームセンターはなかなか面白いところだ。
日用品を扱っているスーパーマーケット的な要素もありつつ、そこに工具や作業着、園芸用品、ペットコーナーまであったりする。駐車場の出入りも激しく、カゴに目いっぱい買い物して帰っていくお客たちの姿が自然と目に入る。
実家のマンションで暮らしていた頃は、ベランダで母がプランターで花などを育ているのをよく見ていたが、一軒家などで、さらに本格的に庭いじりできる人たちはこういうところで買っているんだな。確かにこういった生活の楽しみもあるよなとあらためて気付かされる。

そんな様子を横目で見ながら僕たち一行は、まっすぐ資材コーナーへ足を運んだ。
さて、何を買うんだっけ。

その時、スッと横から小さな紙切れが僕の視界に飛び込んできた。

セメント、砂、利砂、ブロック…

必要な材料が書かれたメモ用紙を、妻が僕に差し出してきたのだ。

せっかくなので、ここで妻について少し紹介したい。
妻はCM制作会社に勤めていて、その中でもコマ撮り(ストップモーション)と呼ばれる実写で1コマ1コマ撮影していくスタイルのアニメーターだ。
肩書きはアニメーターではあるけれど、美術セットや人形制作、撮影、編集など必要であれば、コマ撮りに関わる大体のことを1人で進めることができる。仕事で場数を踏んでいるため、一見小柄な身体からは想像がつかないほどのストロングスタイルとでも言うべきなのか、こうと決めたら職人気質でガンガン制作を進めていく一面もある。
あまり伝わらない比喩かもしれないが、僕の目からは時折、漫画『幽☆遊☆白書』に主人公浦飯幽助の師範として登場た幻海を彷彿とさせる凄みを感じる。小柄だが無言で片っ端から敵をボコボコにして読者の度肝を抜いた謎の覆面戦士の時の幻海だ。

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僕が妻にお任せしていたのもあるが、その仕事で培われた設計の知識を生かして、どの材料がどれくらい必要なのか、目安を今日までに調べておいてくれていたのだ。
こういう時とても頼りがいがある妻。頭が上がらない。

僕たちはメモを見ながら、記載されている砂、砂利、セメントが売っているコーナーを物色する。

砂や砂利は、1袋20kgで200円程度。セメントは、25kgで350円ぐらいと見た目の割にお小遣いで買えてしまうぐらい安い。
まさか自分が今まで生きていて、セメントを買う日が来ようとは想像もしていなかった。

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乗用車で来た手前、ブロックやレンガまで買ってしまうと流石にトランクに積みこめないので今回は後回しにし、すぐに使う材料だけに絞って購入した。その後、ご実家まで運び、4人で軽く昼食を済ませる。
作業着に着替えたら、午後からいよいよスタートだ。

基礎を打つ

午後は、作業日和とばかりにいい感じに陽が射していた。
義父母は家庭菜園や、飼っている犬の世話などのため、ここからは僕たち夫婦で作業をすることになる。

「これくらいかな。」

僕が倉庫からスコップやバケツなどを運んできている間に、妻が、ささっと手際よく庭の一角をメジャーで測り、この後に穴を掘る四隅の目安をつける。
日よけのキャップを被り、土埃を防ぐためのマスクを着け、こちらに問いかけてくるその風貌と風格は、まさしく覆面戦士・玄海そのものだった。

僕たちはその目安に従い、早速スコップや鍬を土にザクっと差し込み、掘り始めた。

ピザ窯を作る時に、そのまま地面の上にブロックやレンガを積んでいけば良い訳ではない。「基礎を打つ」という地盤を固める作業が必要なのだ。

基礎(きそ、英: foundation)とは、構造物からの力を地盤に伝え、構造物を安全に支える機能をもつ構造である。下部構造(かぶこうぞう)とも呼ばれ、それに対して建築物本体を上部構造と呼ぶ。また、構造物の基礎を作る工事を基礎工事と呼ぶ。

Wikipedia「基礎」より

要は、土の地面のままで基礎を打たないと、ピザ窯を作ったところで全体が傾いてしまう危険があるという訳だ。前回紹介した本にも、窯の構造図に必ずと言ってもいいほど基礎の部分がセットとなって記載されている。

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日常生活で、工事現場に出くわすと、たまにすごく深いところまで地面を掘っている光景を目にすることがあるけれど、実はそういう事情あったりするのだ。
ちなみに今や当たり前に使われている「基礎」という言葉は、この構造物を安全に支える機能をもつ構造が由来になっている。
僕も今回ピザ窯を作ろうと思わなければ知らなかったことなので勉強になった。これが本当の「基礎知識」というやつか。

土を掘る

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その縁の下の力持ちとも言える大事な基礎を打つため、土を掘る。

面倒な作業と思われがちな掘る作業というのは、やってみると楽しい。
日々インターネットなどのデジタルを中心とした、椅子から動かなくても済む生活にどっぷりと浸かってしまっているからか、全身を使って作業をするのが新鮮。かつ、何も無い更地だった場所が目に見えて開拓されていくのでシンプルにやりがいがある。2人で協力したらあっという間に終わってしまった。

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枠で仕切る

続けて、堀った四方の穴に、すぐ近くに元々積んであったコンクリートの柱を入れて大枠を作る。

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そして、その中に木枠で仕切りを設ける。
「ピザ窯エリア」と、その手前に人が作業に立つための「人エリア」に分けるためだ。「人エリア」にも少し基礎を打っておいたほうが良さそうと言う皆の意見もあり、こういった形にした。

「ピザ窯エリア」にげんこつ大の石をいくつか用意し、その上に金網を乗せ、なるべく水平に浮くようにする。金網無しで、そのままコンクリートを流し込んでも間違いではないけれど、金網を入れることにより補強され強度が増す。これも本でいくつか事例を見たりして得た知識だ。

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コンクリートを流す

次に基礎の大詰めとも言えるコンクリートを流す作業に移る。
コンクリートは、「セメント」「砂利」「砂」「水」を混ぜ合わせることによって出来る。料理で例えば、卵、牛乳、小麦粉、ベーキングパウダーなどを混ぜ合わせてホットケーキを作るのに少し似ているかもしれない。

先ほどのホームセンターで、コンクリートを作る時に必須な「トロ舟」と呼ばれる大きめのプラスチック容器も買っていたので、そこにセメントなどを流し入れ、スコップで均等に混ぜ合わせる。

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このコンクリート作りを何回かやって分かったのは、水を入れ過ぎると乾くのに時間がかかり固まりづらい。
少しずつ調整しながら粘度がある状態で留めておくのが大事だ。

できたコンクリートで、ひとまず「ピザ窯エリア」の3分の1程度をコンクリートで埋めてみる。

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砂や砂利を多めにしたのもあり、はじめてにしては結構いい感じにできた。このまま残りを進めても良かったが、一旦様子見で乾くのを待つことにした。

そして、明日必要な材料を調達するために、犬の散歩を終えた親方と再びホームセンターに買い出しに向かう。今度はトラックを用意してくれたこともあり、さらに今後必要になってくるブロックなども手に入れたところで、この日の作業は終了となった。

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はい、お疲れさん

そして日が暮れ、義母が準備してくれたお風呂をいただきつつ、4人で夕食を囲む。
そして、目の前に座る親方から「はい、お疲れさん。」と手渡されたアサヒスーパードライの缶ビール。今日はいつもに増して銀色が輝いて見えた。一日の達成感と風呂上がりという状況も合間って何とも美味い。
その後には、一緒に呑もうと封を開けないままで取っておいたという日本酒も出していただき、こちらもするすると身体を通り抜けていった。

長い一日だったが、とても充実していたように思える。
明日もバリバリ進めようと心に近い、ご実家の布団の中で目を閉じた。

(つづく)


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