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1年でピザ窯をつくった話 2 「ピザ窯について考える」

そして、年が明ける。

2019年1月3日。
年末の餅つきから、あっという間に年越しを迎え、2019年になった。
義父母とは餅つきでお会いしたばかりではあるけれど、年明けのご挨拶と、餅つきの時に倉庫で乾燥させていた「のし餅」をいただくために再び妻とご実家に伺う。

ご実家は、僕たち夫婦が住んでいる自宅から車で30分ぐらいと割と近いところにある。年末年始に限らず、普段から月一ぐらいでお邪魔させていただいている仲だ。大体行くと夕飯をご馳走になることが多く、僕と親方(義父)はお酒を呑むお決まりの流れになるので、帰りは義母に車で送っていただいている。

ここで義母を少し紹介したい。
義母はいつも元気でちゃきちゃきしている働き者でありながら、料理好きでチャーミングな方だ。平日は仕事もバリバリこなしている様子なのに、週末は畑や家庭菜園にも精を出し、季節ごとに採れた野菜を天ぷらにしてご馳走してくれたりする。天ぷらは大好物なので大変ありがたい。
また、近くの用事ついでに、お米や野菜を自宅までわざわざ車で届けてくれることもある。信頼関係から自宅の合鍵をお渡しているので、平日の日中に置いてくれることもあるのだけど、仕事から帰ると予告無しで玄関に野菜が置あったりするので、僕たち夫婦は義母に感謝の気持ちをこめて「妖精様」と呼んでいる。

ご実家に到着すると、親方と妖精様…もとい義父母の他に、妻のいとこなど親戚達がこぞって集まりおせちを囲む。
年末の餅つきに来ていなかった人たちもいるので、自然と餅つきの話題になるのだが、どちらにも参加している親戚の方が、
「そういえば、ピザ窯作るんだっけ?」
と話を切り出した。
それを皮切りに、妻のいとこや、そのいとこの子供達が
「え!ピザ窯作るの?」
と前のめり気味に話に食いつく。
まるでサッカーのパス回しのようにきれいに話のボールが流れていく。

そこで親方から、
「なんか、ピザ窯作るらしいよ」
とゴールポスト前いる僕に向かって、シュートを決めさせるかの如く華麗なパスが回ってきた。

やはり、酒呑み話で終わっていなかったのだ。
親方はさらにパスを繰り出す。

「今年の餅つきの時に一緒にピザが食べられたらいいねぇ」

ピザ窯を…今年の餅つきまでに…作る…。

餅つきの時にただピザを食べている自分の姿は容易に妄想できるけど、ピザ窯が現実的に作られている様はこの時点では全く想像できない。

その時も相変わらずの調子の良さで
「やってみましょう!」
と言ったところでどうすれば良いのか本気で考える必要が出てきた。

とりあえず、本を買ってみた。

後日、参考になりそうな本を一冊買ってみることにした。
DIYでピザ窯を作る本」という直球なタイトルのムック本だ。

というのも、年末年始の空いた時間を使って、ウェブサイトやYouTubeをいくつか検索してみたのだけれど、あまりしっくりくるものが無かったためだ。
個人サイトを見ると、使った機材や材料を事細かにまとめてくださっている方がいて、読み物として面白いし、ある程度参考にはなる。ただ、ピザ窯はご家庭にいくつもある訳ではなく、大抵ひとつ。つまり、1つのサイトに一例しかまとめられていないことが多い。今回作る予定の妻のご実家の庭と比べ、広さや環境が違った場合に、どうアレンジすれば良いのか。サイトに掲載されている寸法を頭で少し計算しただけでも思考が停止してしまう。また、いくつかのサイトで比較しようにもセメントのメーカーに始まり、形や工程も全く違う。
いい意味でピザ窯の作り方は自由だし、絶対にこれだという正解が無いように思えた。

一方、YouTubeだと海外の方の動画が数多く出ている。
ただ、こちらは業務用で実際に使用する本格的なものだったり、インパクト重視の日本国内でも限られた庭でしか再現できないような大掛かりなものが大半だった。映像なので全体の流れは分かりやすいのだけれど、ダイジェストなのでとにかく展開が速い。しかも英語などの外国語が使われているので、作業の詳細が分かりづらいのも難点だ。見る分には申し分無いんだけど。

そこで、Amazonで調べていて見つけたのがこの「DIYでピザ窯を作る本」だ。
実際のご家庭にあるピザ窯の実例が22種もまとめられているのとのことで買ってみたが、結果的に正解だった。
紹介されている窯の分かりやすい構造図と、ポイントが解説されているので想像しやすい。その上、サイズを間違えたまま完成させてしまうとこういうことになるだとか、クラック(ひび)が入ってしまう作り方など失敗談もまとめられているので、いきなり作業をはじめてしまう前に読んでおいて良かった。

単層式と2層式

本によれば、ピザ窯の構造は大きく分けて単層式と2層式というものがあることを知る。

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単層式:薪を燃やす「火床」と、ピザを焼く「焼き床」がひとつ床で兼ねている窯。メリットは初心者でも作りやすく、窯全体に熱が行きわたるので遠赤外線の恩恵が受けやすい。デメリットとしては薪をピザの近くで燃やしているので、灰が入らないように床をきれいにしておく必要がある。

2層式:要は2階建のような構造の窯。1階部分を「火床」と2階部分を「焼き床」に分けられるので、灰の影響をあまり受けずにピザを焼くことができる。上の「焼き床」でピザを焼いている間に、下の「火床」にダッチオーブンや焼き野菜を直火調理するなど活用することも可能な欲張り仕様。ただし、単層式に比べて窯全体に熱を行きわたらせるのに若干時間がかかるのと、作り方が複雑になる。


正直どちらもメリット・デメリットがあり、甲乙つけがたい。
妻や義父母にも相談し、意見を聞いてみたりもした。
妻や義父は僕の好きな方でという感じだったのだが、冒頭で出てきた料理好きの義母は2層式でダッチオーブンや焼き野菜ができたら嬉しいとの意見で、僕もこれに賛成だった。これができたら確かに便利だし、洒落てるなぁと思った。
しかし、本を読み込んでいくと、電子レンジのオーブンとは違う、「窯でピザを焼く良さ」をあらためて考えた時に、生地の下のパリッと感は熱が伝わりやすく遠赤外線で蓄熱の恩恵を受けやすいのが単層式というのが分かった。

なんとも悩ましい問題だ。

熟考を重ねた結果、実現性を考えて「単層式」で進めることにした。
(妖精様ごめんなさい。)

ドーム型、アーチ型、スクエア型

続けて、窯の形状も考えなくてはいけない。
ドーム型、アーチ型、スクエア型という3種のいずれかから1つを選択する。

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作り方で言えば、半球型の木型を作成し、その周りをレンガなどで埋めていくドーム型が一番難しく、続けてアーチ型、スクエア型となっていく。
しかし、ドーム型のメリットとして熱まわりが他と比べて良いということも分かった。
単層式に決めた時にもそうだったが、いかにピザ生地をパリッとさせるかにこだわろうとすると自然とドーム型がいいのかなと思えた。
それに、何より見た目がかっこいい。せっかく作るなら自分たちがテンション上がる見た目にするというのも大事な気がした。
半球型の木型なんてどうやって作るんだろうという今後やってくるであろう現実を、この時は見て見ぬ振りをしながら…。

単層式+ドーム型に決定

こうして「単層式」「ドーム型」のピザ窯を作ることが決定した。

本の中で別々に紹介されていた窯と土台の事例を組み合わせれば何とかできるかもというイメージもできた。
繰り返しになるけど、いい意味でピザ窯の作り方は自由だし、絶対にこれだという正解が無い。だから状況が変われば「2層式」の「スクエア型」でも正解だと思う。
とりあえず、誰もやったことないし、やりながら何とかして行こうという楽観的な感じで僕たちはスタートし始めた。

…と言いたいところだが、実はこの仕様を固めるまでに僕がゆるゆるとやりすぎていたため、すでに4ヶ月以上経ってしまった。
妻や親方たちの「こいつに任せていて、このままのペースで本当に年末までに終わるのだろうか。」というプレッシャーを背中にひしひしと受けつつ、世間ではもうすぐゴールデンウィークに差しかかろうとしていた。

果たしてどうなるのか…!
次回も乞うご期待。

(つづく)


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