35. 土偶・勾玉・さざれ石
古代に作られた「土偶」や「勾玉」、自然にできた「細石」、それらができた歴史を想像すると自然の繋がりを感じます。ヒトが生きてきた長い歴史を感じます。
■動植物に対する儀礼のための縄文土偶
動植物を食し利用し、その精霊を祀るために作られていたという縄文時代の土偶。国宝「縄文のビーナス」と呼ばれる土偶は、妊娠した女性像ではなくトチノミをモチーフにしたと考えられる理由が著されています。
何の形を作ったか不明の土偶も幾つか紹介されています。その中の一つが「笑う土偶」と呼ばれているもの。これが頭部なら全長20cm位あるらしく、ふと、”絵を描き慣れていない人が描いた木に見える”と思いました。
この書籍に載った土偶の形を見ていると、”植物を本当によく観察してるなぁ”と思います。
また、土偶を作る様子を見た子供が、大人を真似て何かを作ったりもしたのだろうかと、遠い昔に思いを馳せました。
■胎児の形をした勾玉
一般的に知られている勾玉とは違い、胎児にそっくりな形の勾玉が遺跡から出土されています。
勾玉は、身を守るお守りとして作られ、身につけられていたと考えられています。
縄文時代、子が無事に生まれ育つのはおそらく容易ではなく、生きられなかった子の魂を想い、美しい翡翠で胎児を形作り、そして祀り、身につけていたのではないかと、様々な大きさの色々な形の勾玉を見て想像しました。
■小石が固まり岩になった細石
細かな石が集まりくっついた「細石(さざれいし)」と呼ばれる岩があります。
学名は「石灰質角礫岩(せっかいしつかくれきがん)」、主要産地は、伊吹山付近の岐阜県や滋賀県です。
大昔、山道で石ころを拾おうとした時に、あるいは手で掴んだ石が固まりから離れず、「細石」ができる自然の現象を発見し何故それが起こるのかを不思議に思った人や、石の力を感じた人がいたのではないかと思います。
「細石」を題材として詠まれた和歌が『古今和歌集(古今集) 第七巻 賀歌』に収録されています。
わが君は千世にやちよにさざれいしのいわおとなりてこけのむすまで
(よみ人知らず)
わが君は(大切なあなたは)
千世にやちよに(歳を重ね)
細石の巌となりて(細石が岩となって)
苔のむすまで(苔のむすまで長生きしてください)
大切な人の長寿を願う歌、誕生を祝う歌として、古今集に収められています。
作者が誰を想い、何を思い、この歌を詠んだのか本当のところは誰も知ることはできません。
この歌はその後の時代(中世や江戸時代の説あり)に、冒頭の「わが君」は、「君が代」に変えられました。
もし私がよみ人の立場なら、言葉を選び、一語一語の言葉に想いをのせて詠んだ自分の歌に手が加えられ変えられてしまったことに、悔しさや、悲しさや、腹立たしさを感じます。
あるいは、国歌として多くの人に知られたことを作者は喜ばしいと思っているかもしれません。
いずれにせよ、よみ人の気持ちを想像してもそれは単なる憶測でしかありません。
いずれにせよ事実として、古代を生きたよみ人の想いが込められたこの歌が「国歌」になり、よみ人の想いや歴史を顧みることなく、否定や憎しみの感情を抱くことがあれば、それはとても悲しいことだと思い、
「細石」はどのようにしてできるのか、なぜ伊吹山周辺で多くできるのかという自然の現象について、「細石」を見て歌を詠もうと思った人の感受性や当時の時代背景、暗記するだけではない歴史学の興味深さについて考えました。
「わが君」を詠んだ作者に関する伝承の歴史が残っています。
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