マガジンのカバー画像

エッセイ

117
運営しているクリエイター

#風

お手軽センチメンタル

お手軽センチメンタル

この時期おれは、ちょっとしたセンチメンタルなジャーニーを密かに楽しんだりしている。
それというのも、お手軽な方法があるのだ。

センチメンタルジャーニーといっても、なにも雨の中を駆け出すような恋に破れたわけではない。

そう、ジャーニーといっても、つかの間のセンチメンタルタイムのことをそう呼んでいるのだ。
いや、タイムって何のことだ。

それは、ふとした瞬間の胸を締めつける甘酸っぱい一瞬のことだ。

もっとみる
風をいっぱいに集めたら

風をいっぱいに集めたら

電車待ちのホーム。

今日は、晴天なれど思いのほか風が強い。
着ているシャツが、パタパタとはためく。
バタバタといってもいいくらいだ。

電車到着までは、まだ時間があるようだ。
そこでおれは、目をつむり思考を飛ばしてみる。

目の前に広がるのは、広大な海だ。
ここは日本海か。
海風が容赦なくおれを洗う。
あいにくの曇空。
じきに一雨くるだろう。
人影も無く、猫の子一匹見当たらない。
ただただ、白浪

もっとみる
レモンスカッシュ

レモンスカッシュ

レモンスカッシュ…

なんとも甘酸っぱい単語だ。

レモンスカッシュ

おれにとってのレモンスカッシュは、初夏の季語だ。
まあ、同じく夏のイメージを抱く方が多かろう。
しかし、おれにとっては「初夏」なのだ。
真夏の太陽ギラ!ではない。
あくまでも初夏。
お気に入りのTシャツをやっと着れるようになる季節。
タバコをぷかりとふかし、隙だらけの構えで、入り浸っていた喫茶店でまったりする。
耳元で流れる曲

もっとみる