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硝子のハンマー/貴志祐介(2004/04/21)【読書ノート】

日曜日の昼下がり、株式上場を間近に控えた介護サービス会社で、社長の撲殺死体が発見された。エレベーターには暗証番号、廊下には監視カメラ、窓には強化ガラス。オフィスは厳重なセキュリティを誇っていた。監視カメラには誰も映っておらず、続き扉の向こう側で仮眠をとっていた専務が逮捕されて……。弁護士・青砥純子と防犯コンサルタント・榎本径のコンビが、難攻不落の密室の謎に挑む。日本推理作家協会賞受賞作。


あらすじ

硝子のハンマーは角川書店から刊行された貴志祐介の長編小説であり、防犯探偵榎本シリーズの第1作である。この物語は、幾重にも張り巡らされたセキュリティをかいくぐり、オフィスビル内の最上階で介護サービス会社の社長が撲殺された事件の謎を追う。物語は2部構成となっており、第1部では榎本と純子があらゆる可能性を模索しながらトリックにたどり着くまでを描き、第2部では事件の真犯人が犯行を実行するに至った背景と動機が描かれた倒叙形式となっている。2005年には第58回日本推理作家協会賞を受賞し、2004年4月に刊行された後、2007年10月には文庫化された。文庫版には法月綸太郎の著者へのインタビューが収録されている。
メイントリックは著者が20年前に温めていたもので、物語の中で様々な別解を次々と潰していく。著者自身が住むマンションのセキュリティがお粗末だった経験から、専門家に話を聞いていたことが探偵役の榎本というキャラクターの誕生に繋がった。また、著者の友人から介護事業について聞いたことが、本作で介護サービスが描かれた背景になっている。
介護ロボットについては取材を拒否されたが、資料から推測して描かれた。12階建てのオフィスビル、六本木センタービルの最上階から3フロアを占める介護サービス会社ベイリーフでは、役員が日曜日にも関わらず株式上場を控えて休日出勤していた。そんな中で社長が殺害される事件が発生する。現場である最上階の社長室には、暗証番号がないとエレベーターから入れないセキュリティが施されており、監視カメラと潔癖のセキュリティが廊下に備えられていた。そして、その網を逃れられる唯一の扉の向こうの専務室で仮眠を取っていた専務久永が逮捕される。久永の弁護人となったレスキュー法律事務所の弁護士青砥純子は、久永の無実を証明するため防犯コンサルタントの榎本へ密室の解明を依頼する。久永の弁護団が久永の無実を信じずに刑を軽くする方針を掲げる中、榎本と淳子は様々な可能性を徹底的に検証する。

「硝子のハンマー」は、貴志祐介によるミステリー小説で、一風変わった弁護士と防犯コンサルタントのコンビが、密室殺人の謎を解き明かす物語です。物語は、介護サービス会社の社長が自社の社長室で殺害されるところから始まります。この社長室は、監視カメラとセンサーが豊富に設置された、外部からの侵入が極めて困難な場所にあります。
謎の中心
主な謎は、厳重なセキュリティをどのようにして犯人が突破したのか、そしてどのようにして社長室に侵入したのかに集中しています。唯一、犯行の可能性があるとされるのは、同じ会社の専務で、事件当時に隣の部屋で昼寝をしていた人物です。しかし、専務は犯人ではないと信じられており、彼の無実を証明するために、主人公たちが雇われます。
探偵役の特徴
探偵役には、チョコレートを愛する弁護士と、防犯設備に詳しい防犯コンサルタントがいます。この防犯コンサルタントが、防犯設備を巧みに利用した密室トリックの謎を解く鍵となります。
物語の構成
小説は、犯人が社長を殺害するまでの経緯を描く第1章から始まり、その後、探偵役の二人が事件を調査する過程を描きます。第2章では、犯人の視点から、事件の動機やビルへの侵入方法が明らかにされます。物語は、読者が探偵側と犯人側の両方の視点から物語を追うことで、最終的に真実にたどり着くように構成されています。
作品の特徴と評価
「硝子のハンマー」は、非常に論理的に構築された物語であり、その論理を徐々に解き明かしていく過程に魅力があります。作者の貴志祐介は、細部にわたる緻密なリサーチと表現により、読者を物語の世界に引き込みます。この作品は、特に理系の読者や、物事の背後にある論理を解き明かすことに興味がある人におすすめです。
以上が、「硝子のハンマー」の簡潔な紹介と分析です。謎解きが好きな方や、緻密に構築されたミステリーを楽しむ方には、特におすすめの一冊です。

登場人物

メインキャラクター

  • 榎本 径: 防犯ショップ「F&Fセキュリティ・ショップ」の店長兼防犯コンサルタント。外見は真面目な職業人だが、実は泥棒としても活動している。

  • 青砥 純子: 「レスキュー法律事務所」に所属する美人弁護士。法律のプロフェッショナル。

ベイリーフ社

  • 頴原 昭造: 社長。年齢は80近くで、特徴的な大きな耳を持つ。美食家を自称するが、実際には味の違いはわからない。

  • 頴原 雅樹: 副社長。昭造の娘婿で、仕事ができるが冷酷な一面も。無能な人間を辞めさせることを厭わない。

  • 久永 篤二: 専務。人柄が良く、社長に忠実だが、雅樹とは合わない。

  • 河村 忍: 専務秘書。以前はキャビンアテンダントで、現在は介護ビジネスに憧れを持つ。

  • 松本 さやか: 副社長秘書。外見は可憐だが、実は芯の強い性格をしている。役者を目指しており、会社に内緒で副業をしている。

  • 伊藤 寛美: 社長秘書。仕事を淡々とこなすプロフェッショナル。

  • 小倉: 総務課長。社長の身の回りの世話をし、「エレベーターボーイ」と揶揄されている。

  • 安養寺: 介護システム開発課長。介護ザルの研究に情熱を注ぐ。

  • 岩切: 介護ロボット「ルピナスV」の開発担当。自分の仕事に誇りを持っている。

セキュリティ・法律関係者

  • 藤掛: ベイリーフの顧問弁護士。弁護団の一員として久永の弁護を担当。久永の無実を信じていない。

  • 今村: 「レスキュー法律法律事務所」の弁護士。純子の同僚。

  • 鴻野: 警視庁の刑事。榎本と関わりがあり、情報提供をする。

その他

  • 椎名 章: 資産家の息子で闇金業者から逃れるために偽名を使い生活している。

  • 小池 健吾 & 青木 哲夫: 闇金業者「共生ファイナンス」のヤクザ。章を追い詰める。

  • 鈴木 英夫: 章の悪友。一時的に章を助ける。

  • 三島 沙織: 章の高校の後輩。お互いに惹かれあっていたが、章は距離を置く。

  • 藪 達也: 「渋谷メンテナンス」での章の後輩。元体育会系。



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