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微笑む人/貫井徳郎(2012/8/18)【読書ノート】

理解できない犯罪が、一番怖い
エリート銀行員の仁藤俊実が、「本が増えて家が手狭になった」という理由で妻子を殺害。小説家の「私」は事件をノンフィクションにまとめるべく、周辺の人々への取材を始めた。「いい人」と評される仁藤だが、過去に遡るとその周辺で、不審な死を遂げている人物が他にもいることが判明し……。理解不能の事件の闇に挑んだ小説家が見た真実とは!? 戦慄のラストに驚愕必至! ミステリーの常識を超えた衝撃作!!

朝の淡い光が窓辺を彩る中、かつては名声と富を手にした銀行員、仁藤俊実の存在が突如として暗い影を落とし始めた。安治川のほとりで起こった衝撃的な事件、それは仁藤が理解しがたい動機で愛する家族を手にかけた瞬間から、一つの悲劇が幕を開けたのだった。社会の光を浴び、尊敬を集めた男がなぜそんな選択をしたのか、真実は藪の中だった。
この謎に心を奪われた『私』は、小説家としてその深淵に飛び込むことを決意した。ノンフィクションの形で真実を紐解こうと、関係者たちのもとを訪ね歩き始める。しかし、仁藤について尋ねるたび、口々に「彼はいい人だった」との言葉が返ってくる。それでも、その裏に隠された冷酷さの片鱗が、時折垣間見える。
さらに事件の深層には、仁藤の周囲で起きた不可解な連続死が糸を引いていた。彼の元同僚や大学時代の友人たちが、一つずつこの世を去っていく。これらは偶然なのか、それとも仁藤の暗い過去に何か関係があるのか。
「真実はいつも一つ」と信じる『私』だが、この事件の真相に近づくにつれ、複雑な感情が交錯する。仁藤俊実は本当に罪を犯したのか、そしてその深い動機とは何なのか。謎を追う私の前には、想像もしえない結末が待ち受けている。貫井氏が語るミステリーの最高峰に立つこの物語は、読者に未知の戦慄を与えることだろう……


最後まで読み切らないとこの作品のテーマは絶対に理解できない仕掛けになっている。いろんな意味で読ませる本。


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