退学おあずけ
朝の教室。
男子生徒二人。
「あれ?誰もいねぇ」
俺ら、一番乗りじゃん!」
「5分早く来ただけなのに」
「おいおい。
これ、なんだよ」
「いたずら書き?」
「いつ書いたんだこれ?
森川まだ来てなかったよな?
内履きあったし」
「なんで黒板に、
森川さんの名前…
こんな大きく書いてあるんだろ?」
「知らねえ。
それにしても、きったねえ字!
誰か、反抗期なんじゃね?
あっ、森川本人か?
あいつやりそうな雰囲気あるじゃん」
「いや、そんことする人じゃないよ」
「あれ?
お前、森川といい感じ?
これって…お前か?!」
「違うよ!
僕じゃないよ!
一緒に来たじゃん」
「そっか。
で、森川と?
その後どうなの?」
「いや別に何もないよ。
ただ一回だけ街で偶然会って、
ちょっと話ししただけだし…」
「でも何か話しやすいとか、
言ってなかった?」
「ああ。
思っていたより親しみやすいっていうか、
もっとツンツンしてると思ってたから。
ちょっと驚いたっていうか…
女の子なんだなって…」
「異性として意識したってか?
それからなんだろ?
あっちから、
よく話しかけてくるようになったの」
「ああ」
「脈アリじゃね?
お前付き合うの?…ぁん?
いつ告白すんの?」
「早いよ。
まだLINE交換もしてないのに」
「いいなあ。
もうそれ、匂わせリーチじゃん。
夏休みまであと2ヶ月。
彼女までとはいわなくても、
友達として気軽に遊んでくれる子。
俺も欲しいなあ」
「……」
「なんだよ。
もうあれだろ?
お前は夏休み一緒にデートして、
二学期からは堂々と、
カップル宣言ってやつだろ?」
「そんなことまでは…まだ…」
「あ~俺が毎日どんな思いで、
女子のこと見てるか、
お前わかんねえだろ?」
「どんな思い?」
「よこしまな思いだ!
あんなことやこんなこと…
ああ~」
「歪んでる」
「おっと!先生来た!」
扉を開けて担任が入ってくる。
「誰だこれ……
……
日直…これ消しなさい」
「は~い」
「では、ホームルーム始める前に、
みんなにお知らせがあります」
ザワザワザワザワ…。
「なんだなんだ」
「さあ?」
「クラスの仲間、
森川美穂が本日付けで退学しました。
理由はわかりませんが、
どうやら昨日のうちに、
家族と一緒に引っ越したそうです。
本人から特に伝言はありません。
以上です。
では…」
「おい!
どうなってんだよ!」
「僕も知らないよ!
初耳なんだから!」
「退学って何?!
ヤバい奴だったのかよ!」
「わかんない!
え?!何で?!
どうなってんの?」
「森川、何か言ってなかったか?」
「うんうん……全然……何にも…」
「なんだよそれ…
……
おい!
森川の机…
教科書残ってんぞ」
「ほんとだ。
もういらないから、
置いてったのかな?」
「そう~っと…そう~っと…
ほれっ!
見てみろよ」
「…いいのかなぁ…」
「だってもう学校来ないんだろ?
どこ行ったかもわからないんじゃ、
届けようないじゃん」
「そうだけど…」
「さっさと見ろよ。
お前宛のメッセージ、
書いてあるかもしれねえぞ」
「…そう?
じゃあ…」
直ぐ開いたページには、
何か挟まっていた。
「なんだそれ?」
「これは…森川さんの写真?」
「そう…だな?裏は?」
「裏には…
……
……
好き…
でし…た…って」
「おい!
やったな!
……
…って待て待て待て~。
これって……
別にお前宛じゃなくね?
俺が気付いたんだから、
これ俺宛でしょ?」
「いやいや待って!
これは僕でしょ!
手も…繋いだんだから」
「お前!いつ繋いだの?
何で俺に報告しないの?」
「いや~、
申し訳ないかな~って」
「何でお前、上から目線?
この状況ではお前も俺も、
同じ条件だからな。
手を繋いだってのは、あれだ…
その偶然的な…手助け的な…
かもしんねえだろ?」
「よくわかんない………」
「…おい、お前大丈夫か?」
「…………」
「…ぉぃ…」
「……なんで…」
「?……」
「…なんで…
何で連絡先ないんだよ!!」
「?!」
「僕だって……
僕だって…夏休みになったら…
あんなことやこんなこと…
想像してたのに!
こんなの生殺しじゃん!!」
「お前も相当…、
歪んでんな!!」
「はい!そこ静かに!」
「は…ぃ」 「は…ぃ」
【あとがき】
最近、見つけた衝撃楽曲。
森川美穂さんの【教室】
アンサーエピソードというより、
男性からはどう見えるのだろう?と、
勝手に状況を今の時期に合わせて、
妄想話として書きました。
試聴する際は、
完全に私の記事を記憶から消去してから、
お聴き下さい。
曲も歌詞も歌声も素晴らしいので。